記事一覧
酔いを覚ますは琥珀色 【2000字のドラマ】
帰宅したかなみは、冷蔵庫から水を取り出した。ボトルのキャップを開け、一瞬だけ迷う。グラスに注いだ方が良いのは分かっている。けれど—
まあいいや。
疲れで頭も身体も働かない。投げやりな気持ちを身体の奥に押し流すように、口をつけて直接飲んだ。
金曜日。時刻は夜の11時を回っている。残業続きの1週間がやっと終わった。入社3年目の若手とはいえ、かなみの身体はさすがに悲鳴をあげている。
着替える気力
風が吹かなかったから
ホテルの部屋から望む夜景は、天体を散りばめた宇宙のように、遠く美しく滲んでいた。その夜景を背に、あなたは窓際の椅子に座っている。膝の上で肘をつき、手を組んで、祈るような姿勢で床を見つめるあなたは、ひどく疲れているように見えた。
少し伸びた前髪が、あなたの目の上に影を作っていた。その影のせいで、あなたの瞳はうかがい知れないけれど、そのまぶたが悩ましげに歪み、瞳がいつもより乾いていることは分かった。