プロでも間違える、絶対にやってはいけないダイエット法
地域によっては2度目の緊急事態宣言中かと思いますが、皆さんどのように過ごされていますでしょうか。
自粛が続くと、やっぱり食べすぎが気になりますよね。
「そろそろまたダイエットしなきゃ…」
と思っている人も多いのではないでしょうか。
筆者のnoteでは、ダイエットの方法や食事に関する考え方などを発信してきましたが、世の中にまだまだ正しいダイエットのやり方が浸透していないと感じています。
これだけ誰でも情報が取れる時代になったにも関わらず、いや誰でも情報を発信できるようになったからこそかもしれませんが…
プロフェッショナルなパーソナルトレーナーでさえ間違ったダイエットを平気で教えていたりします。
今回は、具体的な事例を混じえて【絶対にやってはいけないダイエット法とその理由】についてお話します。
●清原氏、ダイエット始めたってよ。
突然ですが、清原和博氏を知っていますか?
PL学園から西武ライオンズに入団し、新人シーズン最多本塁打記録を持ち、読売ジャイアンツ、オリックスバファローズと渡り歩いた元プロ野球選手です。
筆者が小さい頃はジャイアンツで活躍しており、まさにスターでした。
引用元:https://column.sp.baseball.findfriends.jp/?pid=column_detail&id=097-20190810-12
この話についてはあまり掘り下げませんが、覚醒剤取締法違反で逮捕されたことで、世間を騒がせていました。
現在の清原氏というと、執行猶予期間が終わり、仕事にも復帰しているようですが、最近始めたYouTubeによると、薬物をやめる際のストレスや暴飲暴食で体重が激増したとのこと。
引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/dfd559a83ee71c6858420285d5814e5d147090d6
現役時代も105-110kg前後と相当大きいほうでしたが、
現在では体重138kg、体脂肪率41.2%という驚愕の数字。
さすがにまずいとのことで、現役時代にお世話になったトレーナーをつけてダイエットを始めるとのこと。
野球好きかつ現在はフィットネスに携わる身として、これを見逃すわけにはいきません。
●疑問だらけのダイエット法
ところが、YouTubeで公開されているダイエットが、筆者から見るとあまりに疑問だらけ。
清原氏とトレーナーはどのようなダイエットをしようとしているのか?
そしてその方法が科学的視点からするとどうなのか?
見ていければと思います。
清原氏に食事指導を行うのは、現役時代から清原氏を知るトータルワークアウトさん。
公式HPによると、ソフトバンクホークスやAKB48とも契約し、指導をしているそうです。
1.クライアントの現状ヒアリング
動画の最初は、どこのパーソナルトレーナーでもそうだと思いますが、
クライアントである清原氏の現在の体重、食生活をヒアリングしてます。
<清原氏の現状→トレーナーのコメント>
・体重140kg
→増えとるやないかい!
・基本的に暴飲暴食。
→なんでそんなことするんですか!
・寝るのが遅く、食べる時間も深夜になったりする。
→22-2時に成長ホルモンが分泌されるので、寝る時間が遅いのは良くない。
・目標体重は114kg
→そこそこ頑張らないとダメ。
一気に落とすと一気にリバウンドするので、筋肉も落ちてしまう。
・一日の食事回数は2回
→基本的には少なければ少ないほど太りやすい。力士は一食で一気に食べて体重を増やしている。
・HbA1c(糖化したヘモグロビンの割合)が9.0%
→糖尿病。
1ブロック80kcalをいくつ食べるか?で食事を構成していく。
清原氏の場合、一食300kcalを5回が目標(≒1,500kcal)。
・間食や夜食が多い
→カウントしない間食が多すぎるため、自分で思っている以上に食べてしまっている可能性がある。
<筆者の感想>
前半部分は基本的に正しいと思います。ここまでは特に問題ありません。
後半部分ついて。
筆者は医者ではないですし、糖尿病のクライアントを指導した経験はないので確かなことは言えませんが、、、
140kgという清原氏の体重で一日1,500kcalは明らかに足りないです。
体重140kg、体脂肪率42%の成人男性の基礎代謝は2,314kcal。
基本的に、基礎代謝を下回るカロリーでの減量は筋肉が残らないどころか健康を損ないます。
1,500kcalって、仕上がり体重70kgくらいのフィジーカーの減量の最後の追い込みでやるかやらないかってレベルですよ…
基礎代謝計算式:140kg*(100-42%)*28.5=2,314kcal
2.食事指導
さて、動画では、クライアントの現状を把握したところで食事の理論について教えていきます。
これも実際のパーソナルトレーニングの流れとして違和感はありません。
<食事指導 理論編>
脂質を落とすためには、糖質のタンクと脂質のタンクを空っぽにする必要がある。
糖質のタンクから溢れたものは脂質になってしまう。
糖尿病の人の場合、糖質のタンクの機能が正常化されていないため、糖質のタンクが溢れやすく、脂質になりやすい状態になっている。
つまり、糖質のタンクを空にしつつ、脂質をこれ以上増やさないようにしなければいけない。
ということで、糖質を減らし、脂質も減らす。
摂るのはタンパク質だけ。
<筆者の感想>
おいおいおいおいおいおい。
正気か?????????????????????
さっきと言ってること矛盾してませんかね。。。
「一気に落とすと一気にリバウンドするので、筋肉も落ちてしまう。」
「糖質を減らし、脂質も減らす。摂るのはタンパク質だけ。」
これらは両立しません。
糖質と脂質を一緒に減らしたら、筋肉は落ちるからです。
健康的なダイエットには2種類しかありません。
・糖質を減らすローカーボダイエット
・脂質を減らすローファットダイエット
なぜかというと、タンパク質・脂質・糖質はまとめて三大栄養素と呼ばれており、生命活動に必須のエネルギー源となり、これらのうちどれも欠けてはいけません。
三大栄養素の過剰摂取が長く続くと糖尿病、肥満、心疾患、肝疾患などになるのと同じで、三大栄養素が欠けた状態が長期的に続くと、糖耐能の低下、肝疾患、免疫機能の低下などの疾患の原因にもなります。
だからこそ、健康のために、ダイエットをするときには三大栄養素のうち制限するものは一つに留めておく必要があるのです。
健康を目的に始めたダイエットによって体調を崩してしまっては元も子もないですからね。
ではどうすればいいかというと、「糖質を減らすローカーボダイエット」「脂質を減らすローファットダイエット」を数週間~数ヶ月単位で交互に行うこと。
A、B、Cと3つの工場があったときに、BとCを止めてAだけずっと稼働させていたらどこかでガタがきたときに対応できませんよね。
始めはAとBを動かしてCを休憩させ、少し経ったらAとCを動かしてBを休憩させることで、リスクヘッジをすることができます。
このように。ローファットダイエットとローカーボダイエットを交互に行うことで減量時のデメリットを軽減することができます。
逆に言うと、脂質と糖質を同時に制限することはこれらがデメリットになってしまうことを意味します。
・カタボリック(≒筋肉の減少)を防ぐ
・各種疾患のリスクを減らす
・身体のホメオスタシス(恒常性)を避けることでダイエットの停滞を防ぐ
もう一度言います。
糖質と脂質を一緒に減らしては「絶対に」いけません。
(参考)糖尿病について
糖尿病とは、血糖値を下げられなくなる病気です。
血糖糖質をエネルギーにして身体に運ぶ際に、血液中にある糖の濃度が上がったり下がったりするのですが、それを血糖値と呼びます。
血糖値はインスリンによって下げられるのですが、糖尿病の人はインスリンが上手く働かないため、血糖値を下げることができません。
インスリンが働かないことによって、栄養が身体に行き渡らず、血液中にとどまったままになってしまいます。
つまり、糖尿病の人は、糖質を上手く身体に運ぶことができず、せっかく食事から摂ったエネルギーを活用できない状態になります。
結果として行き場を失ったエネルギーが尿と一緒に排出されるので、「糖尿病」と呼ばれることになったのです。
糖尿病を治すためには、
・インスリンの質を上げる
・インスリンの量を増やす
しかありません。
このうち、インスリンの量を増やす方法がいわゆるインスリン注射になります。
ではインスリンの質を上げるためにはどうしたらいいのでしょうか。
これは一朝一夕に上がるものではなく、
GI値が低い食べ物や抗炎症作用がある食べ物を食べたり…
食べる量を少量ずつにしたり…
インスリン感受性が高い(≒インスリンが活発な)朝に食べたり…
こういった細かい努力を長期間行って、徐々に治していく必要があると言われています。
ここで糖質を全く摂らなかったらどうなるのでしょうか。
糖質が身体に入ってこないということは、インスリンが働くこともなくなります。
糖尿病の人はインスリンが働きすぎて疲れている状態ですから、インスリンを休ませてあげることも重要でしょう。
しかしこれは間違いで、特に長期の糖質制限は逆に耐糖能(≒インスリンの働き)を下げることが様々な研究によって示唆されています。
https://nutritionfacts.org/video/does-a-ketogenic-diet-help-diabetes-or-make-it-worse/
生物には、使わない機能は低下する性質があります。
運動をしなかったら身体が弱っていくように、糖質を摂らなかったらインスリンの働きも弱っていくのです。
例えるなら、筋力の低下が原因で膝が痛くなってしまったのに、膝が痛いからといって運動をしないままでいるとどんどん悪化してしまうみたいなイメージですね。
糖尿病の治癒においては、糖質が代謝出来るようになるのが目標ですが、糖質摂取を完全に放棄してしまうと、回復は望めないとする説が有力です。
それどころか、問題を先延ばしにすることで悪化する可能性すらあります。
3.具体的な食事内容
さて、動画に戻ります。
理論だけ教えてもクライアントはどうすればいいかわからないので、具体的な食事内容の指導に入っていきます。
<具体的なダイエット計画>
・順調に落ちていれば10日に一回チートデイを入れる。
・一日の食事を5-6回にする。
・満腹にしない。胃を小さくする
・急いで食べない。
・アルコールを控える。
<筆者の感想>
一ヶ月で-6kgは、普通の人だったら減らしすぎですが、元が140kgであれば問題ない範囲かなと思います。
だいたい月に-5%くらいであれば増減しても大丈夫といわれています。
胃を小さくしたいというのは些か非科学的ですが、満腹にしないというのは間違っていないため、まあいいでしょう。。。
<食事指導 実践編>
朝食サンプル
プロテイン、サラダ、チキンチゲ、チキン。
<筆者の感想>
プロテインを飲んだ清原氏のリアクションが本当に不味そうだったのですが、今どきそんな不味いプロテインってありますかね…?
メディア向けにそういうリアクションをしたのか、プロテインって聞くだけで不味いイメージがあるのか、本当に不味かったのかわかりませんが。。。
あと、サラダであれば葉っぱじゃなくて抗炎症作用のある野菜や果物のほうが糖尿病の方にはいいはず。
トマト、ほうれん草、アボカド、さつまいも、わかめ、ナッツ、ブルーベリー、さくらんぼ等…
そもそも、野菜から摂れるビタミンとは、各種栄養素を代謝するためのもの。
代謝する対象である炭水化物・タンパク質・脂質が足りていないのにビタミンを摂っても、効果は半減してしまいます。
引用元:https://www.totalworkout.jp/t_support/food/
動画で出されていた食事とこちらのHPを見ると、
タンパク質>野菜>脂質=糖質
というように読み取れますが、実際は
タンパク質>糖質>野菜>脂質(ローファットダイエット)
タンパク質>脂質>野菜>糖質(ローカーボダイエット)
のどちらかであるべきです。
栄養素の優先順位は下記のようなヒエラルキーになっており、ビタミン・ミネラルが三大栄養素より優先されることは基本的にありません。
栄養的なことや精神的な続けやすさを考えると、やっぱり玄米や根菜、果物あたりから糖質摂ったほうがいいと思うんだけどなあ。
引用元:http://happy.woman.excite.co.jp/life/happy/phyto/anan01/
●なぜこのようなことが起きるのか
別に筆者はこの記事で
「このトレーナーが言ってることは全部間違っている!」とか
「金持ちを騙して搾り取っている詐欺だ!」
とか主張するつもりは全くありません。
ですが、なぜこのように科学的にも統計的にも正しいといえない主張に説得力が生まれてしまうのでしょうか。
これには、人間が持つ2つの本能が関わってきます。
・単純化本能
世の中のさまざまな問題に対し、1つの原因と1つの解答を当てはめてしまう傾向のこと。
1つの視点だけでは世界を正しく理解し、問題に対して現実的な解を見つけることはできない。
自分の考え方が正しいことを示す例ばかりを集めたり、問題解決の一部に役立ちそうな専門知識を強引に振りかざすのではなく、専門や立場が異なる人々の意見にも謙虚に耳を傾ける。
このようにケースバイケースで問題に取り組むことで、単純化本能を抑えることができる。
・犯人捜し本能
何か悪いことが起きたとき、単純明快な理由を見つけたくなる傾向のこと。
誰かを責めたいという本能に囚われると、複雑な真実に目を向けることができなくなってしまい、将来同じ間違いをしてしまう可能性が高まる。
物事がうまくいかないときには犯人捜しをするのではなく、複数の原因やシステムを見直す。
反対にうまくいったときにはヒーローではなく、社会基盤とテクノロジーに目を向けるよう努めることで、この本能を抑え込むことができる。
引用元:今「ファクトフルネス」が注目される理由
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56635?page=3
つまり、
「ダイエットするには一日の消費カロリーを明らかにし、一日の摂取カロリー配分を算出し、PFCバランスを設定し、それに合った食事を摂る」
という”本質”を
「ダイエットするには糖質と脂質を抑える」
と”単純化”してしまっているといえます。
前提知識がないクライアントの場合、前者を理解して実践することは難しいので、単純化して伝える必要があるのでしょう。
どこまで本質を伝えて、どこまでわかりやすいように単純化するのか?がプロとしての腕の見せどころだと思います。
「このトレーナーは間違っていて自分が正しい!」という主張自体も単純化本能に過ぎません。
この記事ではあくまで、上記のトレーナーよりも少しだけ本質寄りの姿勢でダイエットを解説しているだけに過ぎません。
●筆者の主張の結論
・糖質と脂質を同時に抜いてはいけない
・ダイエットも糖尿病の治療も、一朝一夕にはいかない
・ダイエットとは一時的なものではなく、生活習慣の改善
・極端なダイエットは信用するな
・清原さん頑張ってください。応援しています。
#フィットネス #筋トレ #ワークアウト #ダイエット #フィジーク #ボディメイク #カロリー #プロテイン #体重 #減量 #オタク #ライフスタイル #タンパク質 #鶏むね肉 #ローカーボダイエット #ローファットダイエット #ケトジェニックダイエット #清原和博 #野球 #ファクトフルネス #パーソナルトレーニング #パーソナルトレーニング #パーソナルトレーナー