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僕らの金メダル

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息子の小6最後の1年を、少年野球を通して、その仲間との絆や 泣き笑いを…子供目線で綴った作品です。…練習、試合にと…共に過ごした日々を…親子の思い出としての記録です。
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僕らの金メダル 1話

僕らの金メダル 1話

僕らは大人になって、それぞれの道を歩き始める。それぞれの道で、その場所で、躓いたり立ち止まったりするだろう。
そんな時、振り返ってみればいい。そして、思い出す。僕らのいたあの場所と、僕ら9人の仲間のことを…。弱小チームの、少しずつだけど成長できた…あの日々のことを…。
僕らは弱かった。とは言っても、全く勝てないわけじゃない。ほんとに野球の好きな奴らの集まりだった。しかし、はたから見れば、のほほんと

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僕らの金メダル 2話

僕らの金メダル 2話

年が明けて、新チームとしてのスタートをきった。最上級生となった僕らは試合に出られる喜びに沸き立っていた。『この9人で試合が出来る』という事が単純に嬉しかったんだ。周りの大人たちは期待というより、『この子達をこの一年どうやって盛り上げていこうか…何とか勝たせてやりたい。決勝リーグに上げれるくらいにはしてやりたい…』などと思っていてくれたらしいけど。
案外、僕らに不安はなかった。笑うかもしれないけど、

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僕らの金メダル 3話

僕らの金メダル 3話

3月某日
今日は、僕らのチーム主催の大会の日だ。3月に入ったというのに風が冷たく、時折、小雪がちらついていた。
朝…まだ暗いうちから起き出して、眠い目をこすりながらユニフォームに着替える。母が作ってくれた、おにぎりを少し無理をして、お腹に入れる。外に出ると朝の冷たい空気で目が覚める。これが、試合の日の朝の光景だ。
先日の大会で、予想外に良い成績を残した僕たちは、今日のこの大会で無様な試合をするわけ

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僕らの金メダル 4話

僕らの金メダル 4話

僕らの次なる目標は、全国大会出場することだ。その為には、まずは第1段階の地区予選1位通過して、県予選に駒を進めることだった。
地区予選は、見事1位通過して先輩チーム同様に県予選に出場出来ることになった。僕らは1ヶ月後に迫った県大会予選に胸を躍らせていた。
5月某日
調子に乗っていき、、僕らは、この日も予選を難無く2勝して決勝リーグに上がった。さすがに、ベスト8にまでになると他のチームも楽に勝たせて

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僕らの金メダル 5話

僕らの金メダル 5話

目覚まし時計が鳴っている。短い方の針が4を指している。当たり前だが、外は真っ暗だ。そう、今日は待ちに待った県大会予選の日だ。
小学校の駐車場に4時半に集合。この日は、みんなの親たちも勢揃いして応援に来てくれた。バスを貸し切って、片道3時間かけて試合会場へ向かう。
なんだか親たちの方が興奮しているみたいだった。バスの中では、大きな話し声や笑い声が飛び交っていた。そういう僕たちも朝早く起こされた割には

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僕らの金メダル 6話

僕らの金メダル 6話

夏を目の前にして、僕らは立ち止まっていた。掲げていた目標を見失い、残された半年の日々をどう過ごし、残された試合をどう戦っていくか考えさせられた。
チームとしての目標
一回以上…優勝する!
勝てなかったチームに勝つ!
個人としての目標
キャプテン…盗塁30本、打率5割!
ピッチャー…ワイルドピッチをしない。ピンチの時こそ笑顔!
キャッチャー…パスボールをしない!
ファースト…チームの為になる守備、バ

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僕らの金メダル 7話

僕らの金メダル 7話

僕らがひたすら練習していたこの夏、僕らが勝手にライバル視していたあのチームは、県予選で優勝し、全国大会でも見事3位という好成績を残していた。元々あった僕らチームとの差が一段と突き放されてしまったけれど、共に戦ったチームの活躍が、僕らにとっても良い刺激になっていたのも事実だった。
久しぶりの試合は、夏休み最後の残暑の厳しい日曜日だった。車5台が連なって少し遠出のドライブ気分だった。1勝1敗で予選敗退

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僕らの金メダル 8話

僕らの金メダル 8話

朝晩少し涼しく感じられるようになった9月半ばの日曜日、曇り空の中、ヘリコプターからボールを投下するといった派手な演出の開会式だった。市内にあるほとんどのチームが参加する大きな大会だ。この大会では、過去3連覇している。この年、僕たちは優勝すれば、4連覇になるといったプレッシャーのかかる大会だった。
1試合目…5対1 ピッチャーの好投、バッテリー間の息の合ったプレー、安定した守備、安心して見てもらえる

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僕らの金メダル 9話

僕らの金メダル 9話

10月最初の日曜日。秋の気配を少しばかりのぞかせる、そんな朝だった。そんなに大きくない大会だったので、『優勝』するなら、この日しか無いと…親たちは息巻いていた。
この日の大会はトーナメント戦だった。負ければそこまでだ。優勝する…というより目の前の相手と一戦一戦を大事に戦って勝つ…という事が、僕らにとっての目標だった気がする。負けたら終わりだと思うと、なんだか開き直れたし、いい緊張感があって試合に臨

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僕らの金メダル 10話

僕らの金メダル 10話

試合と試合の合間に、おにぎりやバナナを頬張って決勝戦に備えた。
準々決勝から苦しい展開を何とかものにして勝ち上がってきた僕たちは、最高潮に達していると言ってもよかった。そんな僕らと決勝戦で戦う相手は…そう、あの全国大会3位、中国大会優勝を成し得たチームだ。僕らが、ずっと目標としライバル視してきたチームだ。今期、4度目の対戦となる。まだ1度も勝てていない。
こんなチャンスは2度と無いかも知れない。僕

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僕らの金メダル 11話

僕らの金メダル 11話

僕らのピッチャーの速球と緩急をつけたチェンジアップに、相手チームは翻弄されていた。1番ショートのキャプテンは、選球眼を活かして四球を選んで塁に出る。そんな積極的なプレーが、後に続くバッターを奮起させる。塁に出れば、すかさず盗塁。この頃の彼はノーサインで抜群のセンスで試合を掻き回す。キャプテンとして、グイグイと仲間を引っ張って行くというタイプでは無いが、こうしたプレーで仲間からの信頼を得ているキャプ

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僕らの金メダル 12話

僕らの金メダル 12話

表彰式…優勝チームの名が呼ばれる。僕らのチームだ。優勝慣れしていないから、そわそわしてイマイチ様にならなくて…相手チームの方が場慣れしているから、どっちが優勝チームだかわからない風だった。それでも、僕らが掴み取った初優勝。念願の初優勝。ほんとにやっちゃいました僕たち。
優勝旗と賞状を掲げ、この日のMVPとなったピッチャーを真ん中にして、記念写真撮った。みんな笑ってた。僕らも、父さんも、母さんも…み

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僕らの金メダル 13話

僕らの金メダル 13話

11月も半ばの日曜日。もうすっかり秋で、早朝の空気は冷たかった。いつも通りに小学校に集合して、何台かの車に乗り合わせて試合会場に向かった。左手に広がる海を横目に見ながら、海岸線をひた走る。もう少しして朝日が昇ってきたら最高に綺麗だろうな…なんて思いながら車に揺られた。
ちょうど1年前にも、同じように試合会場に向かっていた。ワクワクしながら、久々の試合に、9人でやれる試合に胸を躍らせて。結局…1試合

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僕らの金メダル 14話

僕らの金メダル 14話

12月に入り、すっかり秋から冬へと木々の表情も変わり始めていた。
僕らの参加できる大会も残り数試合となっていた。
この日の大会は、参加チーム数32という割と大きな大会だった。優勝を2回体験した僕たちは、この日も勿論、決勝リーグに上がりたいと考えていた。ところが、予選メンバーを見て目を疑った。対戦相手は、あの全国3位のチーム、1度は勝てたけど…楽には勝てないだろう。もう1チームは、夏に善戦したものの

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