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僕らの金メダル 8話

朝晩少し涼しく感じられるようになった9月半ばの日曜日、曇り空の中、ヘリコプターからボールを投下するといった派手な演出の開会式だった。市内にあるほとんどのチームが参加する大きな大会だ。この大会では、過去3連覇している。この年、僕たちは優勝すれば、4連覇になるといったプレッシャーのかかる大会だった。
1試合目…5対1 ピッチャーの好投、バッテリー間の息の合ったプレー、安定した守備、安心して見てもらえる試合内容だった。
2試合目…2対0 今まで2回対戦して、なかなか点が取れなかったチームとの対戦だ。いつも最終回に自滅し負けてしまっていた。いつも通り苦しい試合展開ではあったけど、最後まで諦めなかった。最終回、意地でもぎ取った2点だ。リベンジ完了だ。スゲーうれしい瞬間だった。
準決勝…2対0 今まで楽に勝てていたチームに苦戦し、なかなか点が入らなかったけど、それでもなんとか勝利した。
そして、決勝戦。ここ最近の大会では、予選敗退が続いていたので、ここまで来れたことに勿論のことながらチーム全体盛り上がっていた。今まで勝てなかったチームにもリベンジを果たして勝ち上がったのだから…。そして、決勝戦の相手は、あの県予選で奇しくも1回戦負けを強いられたチームだった。勿論、相手に不足はない。本日2度目のリベンジのチャンスだ。今の僕らは、あの時の僕らとは違う。決して負けない。先制点を取ったのは僕らだった。1対0…最終回まで踏ん張った。最終回裏の守り、このまま逃げ切ったら…待望のリベンジ、念願の初優勝…になるはずだった。ノーアウトからランナーを出してしまった。バッテリー間に少し焦りが出てしまった。ツーアウトまで取ったものの、ランナーをためてしまっていた。タイムを取り、冷静になる事に努めた。監督、コーチ陣も、この緊迫した状況にバタバタしてしまっていた。結局、経験不足から落ち着きを失い、パスボール…で相手に点を与えてしまった。バッテリーは泣いた。悔しさを抑えきれず泣いた。
春に味わった『準優勝』は、喜びに沸いた。この日味わった『準優勝』は、悔し涙の苦い味がした。でも、それは僕らが成長した証しなんだと…後から大人たちが言っていた。
僕らが味わった、この悔しさは無駄には終わらさない。この後に起こる奇跡のきっかけに他ならなかったからだ。

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