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僕らの金メダル 5話

目覚まし時計が鳴っている。短い方の針が4を指している。当たり前だが、外は真っ暗だ。そう、今日は待ちに待った県大会予選の日だ。
小学校の駐車場に4時半に集合。この日は、みんなの親たちも勢揃いして応援に来てくれた。バスを貸し切って、片道3時間かけて試合会場へ向かう。
なんだか親たちの方が興奮しているみたいだった。バスの中では、大きな話し声や笑い声が飛び交っていた。そういう僕たちも朝早く起こされた割には目が冴えていて、どうでもいい話で盛り上がっていたりしていたんだけども…。
途中のサービスエリアで、うどんを食べて、バスに揺られてウトウトしかけた頃に、ようやく目的地の試合会場に到着した。バスから降りると、急いで場所を確保して荷物を置いたら、キャプテンを筆頭に軽くランニングを始める。アップをしながら身体を温める。スパイクに履き替えてキャッチボール。トスバッティング…守備練習…いつも通りの練習メニューをしながら、いつもとは違う景色の中で、ふと思う。本当に僕らは、ここまで来たんだな…と。去年、1つ上の先輩たちの応援で来た時とは、やっぱり違う気がする。この9人で、このメンバーで、ここまで来たんだもんな。
県内の各ブロックから勝ち上がってきたチームが顔を合わせる。この時点で、ベスト16という訳だ。トーナメントだから、負けたらそこで終わりだ。
僕たちは第1試合に試合をすることになった。相手は、隣町のチームだった。市内では、1位2位を争う速球派のピッチャーだ。今期、初対戦となる。周りの大人たちに言わせると、仕組まれてる…らしいけど、僕たちには関係ない。目の前の相手に勝つだけなんだから。
試合が始まった。思った以上に、相手のピッチャーの球は速かった。まるで打てない。バットに当たらない。完敗だった。この日ヒットを打ったのは、1つ下の後輩ただ1人だけだった。1度しか打席が廻って来ない奴もいた。悔し涙を流した奴がいた。本気で勝ちたかったから…。でも、これが今の僕たちの実力なのだから…精一杯やった結果なんだから。気持ちを切り替えて、また次なる目標に向かって突き進むだけだから。
僕たちは大きな橋の下で、ちょっと不貞腐れた顔の記念写真を撮り、その後みんなで、弁当を笑って食べた。

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