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僕らの金メダル 3話

3月某日
今日は、僕らのチーム主催の大会の日だ。3月に入ったというのに風が冷たく、時折、小雪がちらついていた。
朝…まだ暗いうちから起き出して、眠い目をこすりながらユニフォームに着替える。母が作ってくれた、おにぎりを少し無理をして、お腹に入れる。外に出ると朝の冷たい空気で目が覚める。これが、試合の日の朝の光景だ。
先日の大会で、予想外に良い成績を残した僕たちは、今日のこの大会で無様な試合をするわけにはいかなかった。まぐれだった…なんて言われたくない。それに主催の大会だから、どうせ最後までいなきゃいけない。負けて他のチームの見学なんてありえない。
こうして、僕らの緩やかな快進撃の第2ステージが始まった。
1試合目…15-対0で快勝。ヒットにホームラン、全員安打で順調な滑り出しだ

2試合目…5対1 初回にホームランを浴びて先制点を許してしまった。今までの僕たちだったら、そのまま相手チームの勢いに流されてしまっていたけど、今年の僕たちは違っていた。落ち着いてプレーし、逆転勝利をものにした。ピッチャーは、去年までの彼は、すぐに感情が顔に出てしまい、ピンチの時や味方のエラーに、不貞腐れた態度を取っていた。だから、彼の母の怒りの声が響き渡っていたのは仕方ないのかもしれなかったが…。それが今年の彼は、母に言われた『ピンチの時こそ笑顔を』を心掛けて試合に臨んでいたんだ。そんなことでと思うかもしれないが、不思議と彼が笑顔で投げた試合は負けなかった。負けたとしても、酷い負け方は無かったはずだ。打たれても、彼は少し笑って後ろを振り返る。彼のバックで守ってくれている仲間に声をかけるんだ。そして、気持ちを切り換えて投げる。だから、仲間も何とか反撃しようと頑張るんだ。ボールも後にそらさないように体で止める。こうして逆転し、2度目の決勝リーグ行きを果たした。
準決勝戦…3対3 引き分け。タイブレークの末、1対2で負けてしまった。結果は3位に終わってしまった。勝利を目の前にして逃してしまった。悔しかった。周りの親たちからは、『おもしろい試合が出来るようになった。点を取られても取り返せるようになって…強くなったよ』と言われた。嬉しかった。また、次の目標に向かって突き進むんだ。

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