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きのう、なに読んだ?

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日々読んだ本や長文記事などの、読んだ部分について紹介と感想をメモします。
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2019年7月の記事一覧

学び続けることについて(Ex Libris/ニューヨーク公共図書館) | きのう、なに読んだ?

学び続けることについて(Ex Libris/ニューヨーク公共図書館) | きのう、なに読んだ?

「ニューヨーク公共図書館」を見た。先に上映していた岩波ホールは混んでいたので諦め、その後上映が決まった渋谷アップリンクで。

誰にとっても、生涯学び続けることは素敵だ。必要でもある。本を読むことだけが学びではない。絵や図案から学ぶ。音楽の生演奏と解説をきいて学ぶ。お年寄りのダンス教室も、学びだ。もちろん、小学生の補習も。学びの場は、地元に溶け込んで日常の一部になっているのが望ましい。ネット上の情報

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課題の定義のしかた | きのう、なに読んだ?

課題の定義のしかた | きのう、なに読んだ?

「資本主義はどこに向かうのかーー資本主義と人間の未来」という本を編著者である堀内勉さんに頂戴した。まだ読んでる途中なんだけど、まずは堀内さんによる前書きが良かった。なんでかって、11ページある前書きすべてを「課題を定義する道のり」の説明に投入しているから。

堀内さんは1998年の金融危機の際は大手銀行の経営企画部門で、そして2008年のリーマンショックの際は大手不動産会社のCFOとして、難局に対

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「82年生まれ、キム・ジヨン」--親しいひとに異を唱える難しさ

「82年生まれ、キム・ジヨン」--親しいひとに異を唱える難しさ

友人のお勧めで「82年生まれ、キム・ジヨン」を読んだ。韓国で100万部のベストセラーになり社会現象化した小説で、日本でもヒット中らしい。私も都心の大型書店の目立つところに本書が陳列されているのを見た。

私が実際に読んだきっかけは、友人の推薦。はじめはちょっとピンと来てなくて、読み始めるまでしばらく積ん読だったけど、読み始めたら止まらず、最後まで一気に読んじゃった。思ったこと、考えたこと、たくさん

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分解と統合(「ニュータイプの時代」/山口周) | きのう、なに読んだ?

分解と統合(「ニュータイプの時代」/山口周) | きのう、なに読んだ?

山口周さんの新著「ニュータイプの時代 新時代を生き抜く24の思考・行動様式」を、ダイヤモンド社市川さんからお送りいただき、読んでいた。ベストセラーになっているそうだ。

本書の内容はAmazonのページに詳しく書いてあるので、ここでは触れない。山口周さんは私の好きなタイプのインテリで、文体、論の運び、根拠となる古典や最新の研究の出し方など、山口周スタイルを楽しみながら読み進めた。一方、読みながら気

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男女平等のほんとうの意味 ("The Moment of Lift" by Melinda Gates)| きのう、なに読んだ?

男女平等のほんとうの意味 ("The Moment of Lift" by Melinda Gates)| きのう、なに読んだ?

私は、女性が働くことにまつわるあれやこれやには自分ごととして関心があり、私より若い世代の皆さんがより良い働き方や暮らし方になったらいいなと願っている。そんな文脈でいろんな方の話をきくと、例えば

「男女分け隔てなくしてほしいけど、じゃあ体格差のある男女が同じように重い荷物を運ぶのか。」だとか、

「フェミって怖いから、いや。」

などという声が入ってくる。なんだかなあ、と釈然としない気持ちになりつ

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「GDPに気をつけろ」開発した本人が鳴らした警鐘 | きのう、なに読んだ?

「GDPに気をつけろ」開発した本人が鳴らした警鐘 | きのう、なに読んだ?

サイモン・クズネッツという経済学者がいる。1971年にノーベル経済学賞を受賞した。1930年代にアメリカで、はじめてGDPを把握する手法を開発した人だ。

クズネッツはGDPがシンプルであるが故に限界があり、また誤用されるリスクが高いことを懸念していた。当時のアメリカ政府はGDPを指標として採用するを検討していたが、クズネッツは1934年の上院への報告書のなかで、このように警告した。先に原文を、あ

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「言ったのに、なんでできないの?」の幻想 | きのう、なに読んだ?

「言ったのに、なんでできないの?」の幻想 | きのう、なに読んだ?

「ちゃんと言ったのに、なんでできないの?」

よく大人が子どもを叱るときに聞くセリフ。

耳にするたび、「言ったからって出来るわけ、ないじゃん」と悪態をつく「リトルしのだ」が心の中に立ち上がる。人に何か伝えたら、その人が理解をするとか、言った通りの行動ができるようになるなんて、フィクションもいいところだ。機械じゃあるまいし。

「伝えれば、言うことをきくはず」という前提は、例えば交通標語とか、電車

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「女に生まれてモヤッてる!」 : システムの内側からバグを見つける

「女に生まれてモヤッてる!」 : システムの内側からバグを見つける

「女に生まれてモヤってる!」(ジェーン・スー、中野信子)読了。凄く共感したというのとはちょっと違うし、「モヤモヤする」「モヤる」という言い回しも好まないのだけれど、自分の自分に対する無意識バイアスにどうやって気がつき、修正していくか、という考え方が参考になった。

まず前書きで、社会規範を「システム」、女性であるが故にかかえる課題を「バグ」に例えたのが面白い。バグなんだから直せそうな感じがする。感

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