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アクセサリーや服のこと。

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アクセサリーをつくる。 お気に入りの服を着る。 好きに装う。  自分を彩ること。
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#アクセサリー

仄かな微笑みを映すもの。

仄かな微笑みを映すもの。

「お守り」をつくってほしい、という注文をいただいたのははじめてだった。

昔から、アクセサリーはお守りだと思っていた。
ところがいざ、お守りをと言われると、立ち止まってしまった。
ちいさなものなのに、すべてが詰まっていなければいけないような気がして。
それでいて、いつも側にあっても違和感のない。
あれもこれもと思いながら詰め込んでいるうち、ずいぶんと時間をいただいてしまったけれど。

アクセサリー

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たからさがし

たからさがし

昔から、古いものが好きだった。
アクセサリーにしろ、食器にしろ、たとえ多少のヒビや欠けがあったとしても、物なりの過ごしてきた時間を表情に映していて。
ぴかぴかの真新しい物にはない魅力がある。

この間、所用ついでに近所の古物市をぶらりとしてみた。
神社の境内で月に何度かおこなわれているけれど、規模もちいさく、ここ数年はめっきり足が遠のいていた。

並ぶ店を眺め歩くうち、足が止まる。
青いシートの上

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Fragments of rebirth

Fragments of rebirth

まっさらの無垢の木を削るのは楽しい。
けれど、アクセサリーを魅力的にするにはストーリーも大切で。
なぜこの素材がつかわれたのか、どうしてこの大きさなのか、意匠に込められた意味は。
すでにどこかで生きてきた素材に、別の生き方を重ねられたら素敵かもしれない。
そんな気持ちが顔を出すようになってきた。

子どもの頃使っていた椅子の足、もうすぐ取り壊されてしまう実家の柱、大切な人がつかっていた箸の片割れ。

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削ぎ落とされた布の行方

削ぎ落とされた布の行方

正直、ハイウエストは苦手だ。
最近はどこの店に行っても、パンツはヘソ上10センチが主流らしい。
どうかすると胸にまで迫る勢いのコルセットレベルの強者もいる。
ハイウエスト派の意見としては、安心感があるだとか、足が長く見えるだとか、お腹まわりがスッキリ見える、云々。

ものは試しと、一度試着してみたことがある。
なんともいえない圧迫感。
決してボリューミーなほうではないけれど、なんだか一日ゆったりと

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手が伸びる先。

手が伸びる先。

絵、楽器、アクセサリー、オブジェ、嗜好品をつくって売るのは難しい。
きっと、つくるだけならそれほど難しくはない。
問題は、自分ひとりの嗜好でつくり出したものを、自分ではない誰かに、いかにしてストンと収めることができるか。

自分と寸分たがわぬ好みの人間などどこにもいない。
そうなると、ことごとく人と好みの被らない人間がつくり出したものの行く末には、影が揺れるような気がしてくる。
まして、そんな独り

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消えた魔法

消えた魔法

長い巣篭り期も出口が見えはじめ、このところはすっかり活気づいた街も、そんなことあったっけ、といった様相だ。

それでも、もとに戻っていないものもある。

時折、自分に元気が足りなくなると、立ち寄る店があった。

ちいさなショーウィンドウのあるアクセサリーショップで、壁のようにピッタリ閉まった扉は通り過ぎただけでは開いているのか開いていないのかわからない。
行き交う若者は視線すら向けず、まるでその店

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