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#映画感想

その関係に名前はいらない〜映画 カラオケ行こ! 感想

その関係に名前はいらない〜映画 カラオケ行こ! 感想

聡実君と狂児が一緒にいる姿を見るだけで得られる何かがある。あの尊さは何なのですか?

あちこちに散らばっている「愛」らしきもの

原作には出てきていない言葉が、映画では引っ掛かるように出てきた。「愛」だ。

ももちゃん先生の「歌にこもっていた愛がほんの少し足りなかったからかな」、映画見る部の友人との会話でも愛にまつわる言葉が出てきた。

その言葉に引っ掛かったりながら、物語を追っていたら、色々な場

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映画「花束みたいな恋をした」感想 もうひとりの私達のはなし

映画「花束みたいな恋をした」感想 もうひとりの私達のはなし

同じものが好きな人と出逢いたいとずっと思っていた。ある単語を言っただけで「あれ最高だよね」って好きな作品が伝わるような。もうひとりの私がいたら、どんなに楽しいだろうって。

でも、もうひとりの私は、やっぱり私ではない別の人間。出会った時から、いつか必ず別れがくることは決まっている。鑑賞しながらヘドウィグ・アンド・アングリーインチの「The Origin Of Love〜愛の起源〜」の歌詞を思い出し

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映画「ヤクザと家族The Family」感想

映画「ヤクザと家族The Family」感想

描かれるのは1999、2005、2019の3つの時代。時代が産み出す良い流れもあるけれど、一方で不要と判断されたものは排除されていく。

共通しているのは、その時に見過ごされてしまう人達なのではないかと思う。経済的問題などから家庭環境が壊れた子供達は行き場を失い、そこからグレーな世界で生きていくしかなくなることもある。

映画では「ヤクザ」という存在に置き換えているけれど、この物語は一般社会から何

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ミッドナイトスワン 持つ者と持たざる者が出会う時

ミッドナイトスワン 持つ者と持たざる者が出会う時

「どうして私ばかりがこんな思いをしなければいけないの」

きっと誰もが感じたことがある感情。身体と性別に心を痛めて生きてきた凪沙と、愛情を感じることが難しい養育環境で育った一果は、どれだけこの言葉を心の中で吐いてきたことだろう。

人は生まれた時から色々なものを持たされている。性別、生まれた地域、親、養育環境、裕福や貧困。その持たされたものや環境の中で生きていかなければならない。この作品では、持つ

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映画・ドラマ 感想「37セカンズ」

映画・ドラマ 感想「37セカンズ」

「どこに行けばいいですかね?」「そんなのあなた次第よ」

心の自由を表出すること脳性麻痺の夢馬(ユマ)は、友人の漫画のゴーストライターをしながら母と暮らしている。穏やかで愛らしい表情を持つユマ。特にクシャッと笑った時の表情と声の可愛いさといったら!でも、観ている内にこの愛らしさや穏やかで丁寧な口調は、ユマが誰かの力を頻繁に借りる必要があるからこそ無意識に身についたものかもしれないと感じた。「可愛く

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映画感想 「風の電話」帰る場所を失った人たちの旅

映画感想 「風の電話」帰る場所を失った人たちの旅

諏訪敦彦監督作品は「2/デュオ」「M/OTHER 」を20年位前に観た。特に「2/デュオ」は即興芝居のヒリヒリしたやり取りが忘れられない作品だった。「2/デュオ」の西島秀俊、「M/OTHER」の 三浦友和、渡辺真起子も参加しているこの作品を観ないという選択肢はなかった。

岩手県大槌町から広島にやってきたハル。冒頭はハルと叔母・広子の朝食ルーティンを固定カメラが映し出す。ハルは話しかけられてもワン

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映画感想 「ジョジョ・ラビット」 生涯ベスト級に出会う

映画感想 「ジョジョ・ラビット」 生涯ベスト級に出会う

「生涯ベスト級」という言葉をよく耳にするけれど、私は映画観賞後「うぅ~良かった!今年観た中では5本の指に入るなぁ」など年間レベルで判断することが常だった。でも、この作品は観賞中から「あぁ、これが生涯ベスト級っていうんだな」ということがストンと胸に落ちてきた。

10歳のジョジョと母のロージーは二人暮らし。ジョジョの前にはアドルフがいつも現れる。アドルフはナチスの教えをジョジョに叩き込む空想上の人物

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映画感想「パラサイト 半地下の家族」 水は地下へ流れ込む

映画感想「パラサイト 半地下の家族」 水は地下へ流れ込む

水に流す、我田引水、覆水盆に返らず…など水に関する言葉が頭の中にとめどなく浮かんでは消える作品でした。

階級と生活レベル「仕事があり、スーパーで深く悩まずに買い物ができる生活レベルが当たり前」と思い込むのは危険だ。普通という線引きが曖昧となり、見えない格差がボーダーライン上に広がりいくつもの階級が生まれているのは、現在の日本も韓国でも同じように思える。

スマホもあり、住む家もあると外見上は何と

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映画 「殺さない彼と死なない彼女」 逆光みたいに射し込むもの

映画 「殺さない彼と死なない彼女」 逆光みたいに射し込むもの

完全に“舐めてた案件”でした。「高校生の胸キュンラブストーリーね」とスルーしていましたが、評判が尋常ではないため調べてみたら埼玉で2カ所しか上映していない…車で1時間かけて観てきましたが、この作品を上映していないってどうかしてるよ?

何だか妙に白っぽくて、現実味が薄い逆光気味の不思議な画面。小坂と鹿野、きゃぴ子と地味子、撫子と八千代君の3組の場面が交互に入れ替わりつつ物語が進みます。

撫子さん

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まなざしの行方~万引き家族感想

まなざしの行方~万引き家族感想

「盗んだのは、絆でした」というキャッチコピーのとおり、単に物を盗むだけではなく、人のつながりを盗みながら作り上げた家族の姿は、いびつで儚く、でもどこの家族よりも温かさに溢れている瞬間が切り取られていたと思います。

誰もが目を見張るであろう子役の二人、祥太とゆりの存在は、親の存在、子供が成長するということ、そして“生きていくうえで必要な存在“を静かに目で語っていた。

ちなみに、鑑賞後の息子の最初

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太陽なのは誰? ワンダー君は太陽

太陽なのは誰? ワンダー君は太陽

派手な展開はないけれど、静かに淡々と進む中で登場人物達それぞれの誠実さや思いが浮き彫りになっていく作品。

正直なところ、鑑賞前は「障がいを持つ子が学校へ行き、色々なことをクリアしていくお涙頂戴もの」という先入観を持っていましたよ。

確かにベースはそうなのだけど、オギーの周囲の人に順番に焦点を当てていく構成が、主観と客観の視点交換となり「誰もが主役の人生を歩んでいる」という当たり前のことを、ゆっ

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凪待ち 感想〜再生は簡単じゃない〜

凪待ち 感想〜再生は簡単じゃない〜

凪待ち、アトロクのムービーウォッチメンに決まったので観てきました。テレビで大きく宣伝していないおかげで、事前情報はポスター情報のみ。想像を遥かに超えて打ちのめされました。

冒頭、ギャンブル依存症である郁男が川崎の競輪場に近づくと同時に、カメラがゆっくり斜めになるのを見て「競輪場のバンク(競争路)を表しているのかな?」と思いました。

時空が歪む様な画面の動きは、その後何度も現れ、ギャンブル行為へ

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メランコリック感想&川越スカラ座舞台挨拶レポ

メランコリック感想&川越スカラ座舞台挨拶レポ

事前情報を出来るだけ入れずに見たかったので、ムービーウォッチメンの評論もスルーし、ツイッターも上映情報だけを仕入れるようにして準備万端で観賞できました。(それでも「松本最高!」という沢山の言葉はスルー出来なかった…)

あらすじ
東大卒だけど働いた経験はバイトだけという鍋岡和彦と金髪の松本は、同日に銭湯の面接を受けて採用になる。「世の中には知らない奴が知ってはいけない世界があるんだよ」という助言を

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映画「惡の華」感想

映画「惡の華」感想

あらすじ(公式ホームページより)
中学2年の春日高男は、ボードレールの詩集「惡の華」を心の拠り所に、息苦しい毎日をなんとかやり過ごしていた。ある放課後、春日は教室で憧れのクラスメイト・佐伯奈々子の体操着を見つける。衝動のままに春日は体操着を掴み、その場から逃げ出してしまう。その一部始終を目撃したクラスの問題児・仲村佐和は、そのことを秘密にする代わりに、春日にある“契約”を持ちかける。こうして仲村と

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