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『虐待児の詩』 新潮文庫の一冊
「ケインとアベル(下)」上巻はその後に起こる波乱を予測させる形で終わっているが、下巻は現実の人生でもよくあるちょっとした行き違いや、必然としか言いようのない偶然が折り重なって人生模様を編み上げていく。
最後まで読み終えたときには、初めて読み終えたわけでもないのに、頬を熱い滴がつたっていた。
人は何のために産まれ、何のために生きているのだろうか。
人間にとって生きがいとはいったい何なのだろう。
あ
『虐待児の詩』 新潮文庫の一冊
「ケインとアベル(上)」「ケインとアベル」を初めて読んだのは、もう随分昔のこと、留学先のボストンで友人に読んでみろと手渡され、強引に勧められたからだ。
そして、この物語は、私個人にとって非常に感慨深いものがある。
ひとつは読んだ場所が小説の舞台であるボストンだったということ、もうひとつはこれを勧めてくれた友人が、この小説から多大な影響を受けたと見え、特に主人公のひとりであるアベルに自分自身を投影
『虐待児の詩』 新潮文庫の一冊
「深夜特急(6) 南ヨーロッパ・ロンドン」この旅は、どこで何が起こるか予測のつかない放浪とふれあいの旅であり、お膳立てされた観光などではない。つまり実際の目的はロンドンへ辿り着くことなどではなかったのだ。
自らの進むべき道を試行錯誤していた、当時26歳の著者にとってはきっと自分自身を見つける旅だったのではないだろうか。
なんとなくサグレスの岬に茶(CHA)を飲みに行ってみたくなった。
ただ、なん
『虐待児の詩』 新潮文庫の一冊
「深夜特急(1) 香港・マカオ」第一巻の冒頭には次のような解説が一ページを占有して、単独で記されている。
「ミッドナイト・エクスプレスとは、トルコの刑務所に入れられた外国人受刑者たちの間の隠語である。脱獄することを、ミッドナイト・エクスプレスに乗る、と言ったのだ。」
著者が丁度この旅をしていた頃、同時期の実話をもとにしたアメリカの小説に、この隠語と同じ「ミッドナイト・エクスプレス」というものが