腰部脊柱管狭窄症
脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。
ほとんどが腰部に発生し、50歳代から徐々に増え始め、60~70歳代に多くみられる疾患です。
推定患者数は約580万人といわれており、おおよそ高齢者の10人に1人は腰部脊柱管狭窄症と計算されます。
当院も腰部脊柱管狭窄症と診断された高齢の患者様が多く来院されますが、よく耳にするのが「手術はしたくない!」ということです。
整形外科医から手術を勧められるケースがあるのですが、果たして本当に手術が必要なのでしょうか❓
そういった観点などを今回は、腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021(改訂第2版)を参考にわかりやすく解説させて頂きます。
1.腰部脊柱管狭窄症とは
特 徴
画像所見と症状が必ずしも一致するとは限らない。
画像所見と症状が一致すれば、腰部脊柱管狭窄症と診断される。
症状と所見の程度は、軽度・中程度・重度がある。
腰部脊柱管狭窄症の自然経過でどうなるのかに関しては、研究報告がないので不明である。
大量喫煙者では、手術率の増加のリスクが高いという報告がある。
軽度、中程度の腰部脊柱管狭窄症の場合、自然に良くなっていくことがある
2.症 状
お尻~足に痛みやしびれ
歩行や立っている時に痛みやしびれが増悪(動いている時に症状が増悪)
座っている時や腰の前かがみで痛みやしびれが軽減(安静にしていると症状軽減)
自転車を乗っている時は、痛みやしびれが出ないことが多い
間欠性跛行
3.評価・診断
腰部脊柱管狭窄症の診断は、日本脊椎脊髄病学会の「腰部脊柱管狭窄症診断サポートツール」をガイドラインで推奨されています。
※ ちなみに鍼灸整骨院では、診断行為は法律的にできません。
合計点が7点以上の場合、腰部脊柱管狭窄症である可能性が高く、感度92.8%、特異度72.0%といわれています。
そして、MRI検査で脊柱管の狭窄が認められれば、確定診断となっていきます。
4.治 療
腰部脊柱管狭窄症は、保存療法と手術の2つがあります。
MRI検査で脊柱管の狭窄がみられた場合、脊柱管の狭窄自体は放置しても元の状態に戻ることはありませんので、手術を検討すること多いです。
しかしながら、一般的には脊柱管の狭窄と症状は必ずしも一致することがないため、手術を第1選択することはなく、まずは保存療法を行っていくことが多いです。
何事もそうですが、手術するかは最終的にはご本人の意思になります。
保存療法
腰部脊柱管狭窄症の薬は、どの薬も科学的根拠に乏しいとされている。
運動療法は、症状に応じて推奨されているが、どのような運動が良いのかについては結論にいたっていない。
手技、鍼、運動療法、腰痛教育の組み合わせが有用とされているが、科学的根拠に乏しいこともあり症状の状態による。
物理療法(電気、超音波など)やコルセットの装具は科学的根拠に乏しいとされている。
神経ブロックも科学的根拠に乏しいとされている。
どの保存療法も効果が出ているもの、出ていないものがあるが、患者さんの経過を観察しながらが行っていくことが多い。
保存療法が一定期間に効果の変化がない場合、患者さんが手術を希望する場合は、手術を検討する。
手 術
手術には、大きく分けて除圧法・固定法・制動法がある。
症状で安静時に足のしびれがある場合、手術後も変わらないことがある。
腰部脊柱管狭窄症において、足のこむら返り(足がつる)の頻度が高い症状であるが、手術による改善は一定の見解が得られていない。
糖尿病がある人の場合、手術後の足の痛み・しびれが残りやすい。
長期にわたって症状がある人の場合、手術後にも症状が残るケースがある。
私は、腰部脊柱管狭窄症と整形外科で診断された人を当院で多くみてきました。
その中で、数ヶ月施術をして少しずつ効果があった人も多くいます。
経験的には、鍼、整体でのストレッチをよく行っていますが、すぐに効果が出るものではありません。
参考にして頂ければと思います。
まとめとポイント
腰部脊柱管狭窄症の定義は完全なものではない
画像所見と症状が必ずしも一致するとは限らない
代表的な症状は、間欠性跛行である
腰部脊柱管狭窄症診断サポートツールは参考になる
確定診断は、症状とMRI検査である
第1選択は保存療法が多い
保存療法は効果が出ているもの、出ていないものがあり、患者さんの経過を観察しながら治療をすすめていく
保存療法が全く効果がない場合、患者さんが手術を希望している場合は、手術を検討する
手術をしても症状が残ることがある
参考文献
腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021 改訂第2版(南江堂)
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