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ヴァンヘイレンが残したもの 【追悼】エドワード・ヴァン・ヘイレン

「Back to The Future」

1985年公開の最初の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のとあるシーン。マイケル・J・フォックス扮するマーティが、過去にさかのぼって、眠っている若き日の実の父に轟音の音楽を聞かせる場面があります。ここで、聞かせたウォークマンのテープをよく見ると「EDWARD VAN HALEN」と書いてありました。

ヴァン・ヘイレンというバンドのギタリストの存在は、このようにすでに一般認知されていたといえますね。視座を変えてみると、この場面は、ロックを尖らせていった先にあったハードロックがすでに一般大衆化している事実としてみることもできるかと思います。

ヴァン・ヘイレンとの出会い

リアルタイムで聞いたのは、1991年の『F@U#C%K』 - For Unlawful Carnal Knowledge というアルバムから。ボーカルはすでにサミー・ヘイガー。

個人的には、このアルバムにこのバンドの本質が詰まっていると感じています。

1、ヘヴィなグルーヴの楽曲
2、ポップで明るい楽曲
3、スピードチューン
4、印象的なキーボードで始まる楽曲

そしてそれぞれが異常に質が高かった。

1、ヘヴィなグルーヴの楽曲

この当時、ハードロックアルバム、メタルアルバムの1曲目は大概、スピードチューンが多かったです。Mr.Bigの出世作『Lean into it』も1曲目はギターの早弾きが気持ちいい「Daddy, Brother, Lover and Little Boy」でしたし、Iron Maidenの『Fear of the Dark』は印象深い中東的な、かつ攻撃的なリフで始まる「Be Quick or Be Dead」でした。

しかしこのヴァン・ヘイレンのアルバムは、グルーヴ感満載の「Poundcake」で幕を開けます。電気ドリルを使ったオープニングからして印象的。最初は何の音か??と思ったものですが。。
ちなみに、Mr.Bigも前述の曲はサブタイトルが「(Electric Drill Song)」とあるように同じ電気ドリルをギターソロで使っていまして、Mr.Bigのポール・ギルバートが先か、エディ・ヴァン・ヘイレンが先か??という論争にもなったくらいです。(結果はよく知りませんが。。まあ、どちらでもいいかと)

そして、ギターが不協和音チックな騒音を鳴らすと同時に、重厚なドラムが入ってくるという。。。そこに、サミー・ヘイガーの高音シャウトがかぶさるという、、、ヘヴィーでグルーヴィーな曲なのに、この段階で、曲のかっこよさ、気持ちよさにしびれたのを覚えています。

この曲、中央部で、ギターが「ジャジャッジャジャッジャジャッジャッ」とややブレーク気味になったとことからドラムやベースが一気に入って盛り上がる部分が最高です。


そのほかにも「Pressure Dome」などはこの路線の楽曲です。


2、ポップで明るい楽曲

「Jump」や「Panama」、「Dreams」、「Can’t Stop Lovin’ You」などで顕著なように、ポップな楽曲がすべて歴史的名曲なのもこのバンドの特徴。

アルバムの最後を締めくくる「Top of the World」もまた歴史的傑作。この曲は、デイブ・リー・ロスでは、だめで、サビの部分でのサミーの伸びやかな高音がこの曲の全てです。これほど聞いていて気持ちのいい曲もないですね。


その他では「Runaround」はアメリカンロック!的なノリですし、「The Dream is Over」もポップな佳曲です。

3、スピードチューン

実は、このバンド、あまり速い曲はありません。「Ain’t Talkin’ Bout Love」とか、早いとは言えないが「Hot for Teacher」くらいでしょうか。でもこのアルバムでは、珍しく欧州やアメリカンメタルに影響を受けたと思わしき楽曲があります。

「Judgement Day」は、「Poundcake」に次いで2曲目で、あのヘヴィでグルーヴィーな曲の後にこれが来るわけです。最強の曲順ですね。この曲も肝は、サミーの高音。後半の叫ぶようなシャウトもサミーならでは。



4、印象的なキーボードで始まる楽曲

「Jump」という楽曲は、キーボードでリフを刻んだエポックメーキングな曲だと思っていまして、これ以降、このバンドはキーボードをきれいに伸びやかに使うことが得意技になります。「Dreams」,「When It’s Love」また、「Love Walks In」など素晴らしい曲が多いですね。

このアルバムには、もしかすると「Jump」に次ぐ、彼らを象徴する曲になった「Right Now」という楽曲が収められています。

この印象的なキーボードの前奏は、これだけでこの曲は傑作だという事がわかりますよね。プログレチックもあるし、ジャズチックでもある。

哀愁でもあるし、虚無感を感じなくもない。でも希望も隠れていて決して暗くはならない。そんなイメージです。


ちなみに、ジャズピアニスト、上原ひろみさんのアルバム『Voice』の1曲目の「Voice」という楽曲も同様のテーマ性を感じさせるイントロなんです。


この雰囲気を、アメリカンハードロックバンドが作り出したというのは驚きですね。この曲もボーカルのサミーの高音が核ですが、やはり彼がこのバンドに持ち込んだものは想像以上に大きかったのではないかと思います。


リアルタイムということもありますが、それを差し引いても、このアルバムがこのバンドのベストではないかと、、、想います。


その他


デイブ時代ですと、初期の傑作『1984』くらいかなと。。他はアルバム全体としては散漫で楽曲のクオリティもサミー時代と比べるべくもなく低いかと。。おそらく初期の時期は、デイブのパフォーマンスが最高だったんでしょうね。ライブではそれでも良いかとは思います。


サミー時代は『5150』は、個人的にはヴァン・ヘイレンでは2番目の傑作。『OU812』や『Balance』は残念ながら楽曲の質にばらつきが非常に多く。。

エクストリームのボーカルが加入してのアルバムや、デイブが復帰して作ったアルバムは特筆すべき点はありません。

そういう意味では、このバンド、個人的には、
1位、『F@U#C%K』 - For Unlawful Carnal Knowledge
2位、『5150』
3位、『1984』
あとは、しいて言えば『ファースト』『Balance』かなと。。

エディ

僕はギターを弾きませんので、ギターの論理的なテクニックなどはわかりません。彼の功績を言うならば、以下の2点かもしれません。

1、 「音」:はっきりと彼だとわかる音。誰でも聞き分けられる音。つまり個性のある音を魅力的な楽曲の背後で奏でていたことでしょう。これがベースとなって、ギターキッズを増殖させる結果になったのではないかと思います。


2、 その結果としての「ハードロック」の一般大衆化。彼らの後に、ボンジョヴィやMr.Big、Skid Rowやガンズアンドローゼスが出てくるわけですが、こういう風貌の若者が演奏するややハードな楽曲が受け入れられる素地を、エディがリーダーのこのバンドが作ったことは歴史的な事実ですね。明るい楽曲、明るいきらびやかな80年代を盛り上げる結果になったと思います。

音楽とは、音を楽しむと書きますから基本的に楽しいものであるはずです。のちのグランジはあまりにも怒りにシフトしすぎていた(時代の要請という部分もありますが)。そういう意味で、あの時代に、音の楽しさ、音楽の楽しさを体現して、明るい時代にしていった、結果的に80年代がファッションも含めてきらびやかなイメージなのは、その影響のそれなりの部分はヴァン・ヘイレンあってのことだと思うわけです。

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