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時代の上に鳴り響いた音Vol.5 / 1989年の歴史的クラシックコンサート / ベルリンの壁崩壊記念 / ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱」 / レナード・バーンスタイン

たしかに、これに勝る第九の演奏はたくさんあるんだと思います。

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たとえば有名なフルトヴェングラーのバイロイト音楽祭でのライブ録音による第九とか、カラヤンの第九とかのほうが、演奏の完成度としては高いと思います。

ただ、音楽をその音だけではなくて、音が奏でられた時代の背景までを鑑みて考えるとするならば、このバーンスタインの第九は、ものすごく大きな意味を持ってくると思うんですよね。

80年代後半という時期、というよりも共産主義がはびこっていた時代の各国では芸術活動自体が非常に大きな妨げを受けていたのは周知の事実。

キューバであれ、東ドイツであれ、ソ連であれ。
ブエナビスタ•ソシアル•クラブの面々も、ショスタコービッチもソルジェニーツィンも、映画「善き人のためのソナタ」や「夜になる前に」で描かれていたような明確な妨げを受けていたんですよね。

そういう時代がやっと現実のものとして終を迎えた最初の一歩。

それがこのベルリンの壁の崩壊。 

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ひとつの都市を壁で分断するという時代が何十年も続いていた事実には今考えても驚きを隠せません。

その壁が取り払われた時。奏でられるは歓喜の歌だったんでしょう。この第九がこのタイミングで選ばれたのは、まさに全世界がそれを求めたということなんだと思います。

この演奏のために、西側、東側のオーケストラから団員が集められました。

その指揮を誰が行うべきなのか。
バーンスタインしかいなかったんでしょうし、アメリカ人である彼がタクトを振る意義は非常に大きいものがあったんだろうとおもいます。

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このような大きな動きを背景に演奏された第九。
どうあっても、時代という付加価値で聴かれていくべき演奏だと思います。

歌詞を変えて、フロイデ(歓び)をフライハイト(自由)に変えて歌わせたということも大きな付加価値です。

大きな時代の境目の第九。歴史的背景を考えて聞くと、その響きも大きな時代の叫びのように聞こえます。

じっくりと、そういう時代があったことを噛み締めながら味わいたい演奏です。


過去を振り返っても仕方ないですが、歴史のうねりの上に鳴り響いた音を、振り返って聞いてみることは、それなりに意味のあることだと思うわけです。

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