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読書感想文

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#小説

そっと優しく今のありのままの自分を肯定してくれる物語『お探し物は図書室まで』青山美智子

仕事、働く意味、生きがい。何の為に働いているのか、何の為に生きているのか、果たして自分は誰かの役に立っているのだろうか。ふと考え込んでしまうことってありますよね。社会人一年目のあのやる気や、好きなことを始めたばかりのあのドキドキ。歳を重ねていくほど、何かを忘れたままでいるような、何かを思い出せずにいるような。

働くことや生き方、そんな悩みに寄り添ってくれる物語に、立ち止まったままの足を一歩踏み

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【書評】浅原ナオト「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」

【書評】浅原ナオト「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」

僕の読書会コミュニティで4月の課題図書となった浅原ナオト著「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」について書評していく。途中、大好きなバンドの楽曲も引用もするが、どうぞ、あしからず。

はじめに【混沌とした感情が羽化し、力強く羽ばたいていくような美しい世界観】

この作家の癖なのか、繊細に描かれる心理描写が素晴らしいだけでなく、鮮やかな対比と伏線、胸に刺さる本質を突くような深い問いが絶妙だった

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悲しみの先にある微かに見える希望の光『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ

今日も誰にも聴こえない悲鳴が鳴り響く。知ろうとするだけでは聴こえない。ともに歩む。それだけの思いがある人にしか聴こえないものなのかもしれない。死にたいわけではない。ただ、生きることが辛いなぁと感じる時があったりする。どんな希望の光も届かない心の影に届くのは、こういう物語なのかもしれない。

これだけたくさんの人がいるのに、誰とも繋がれないこと。言葉を使うだけでは伝わらないこと。むしろ、言葉にする

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