そっと優しく今のありのままの自分を肯定してくれる物語『お探し物は図書室まで』青山美智子


仕事、働く意味、生きがい。何の為に働いているのか、何の為に生きているのか、果たして自分は誰かの役に立っているのだろうか。ふと考え込んでしまうことってありますよね。社会人一年目のあのやる気や、好きなことを始めたばかりのあのドキドキ。歳を重ねていくほど、何かを忘れたままでいるような、何かを思い出せずにいるような。


働くことや生き方、そんな悩みに寄り添ってくれる物語に、立ち止まったままの足を一歩踏み出すような力や勇気をもらった気がします。読み終えた後、素直な気持ちで今日を、明日を、そして、仕事をもう少し頑張ってみようかなと思える物語でした。


僕にとって初の青山美智子さんの小説。全部で5つの連続短編集ということもあり、少しずつ読もうと思ったけど、一気に読み終えてしまいました。読み進めるにつれ、それぞれの物語が繋がっていく物語の構成も好きだったなぁ。そりゃそうなんですよね。同じ図書室が舞台なので(笑)そのカラクリを見つけるのも面白かったんですよね。


登場人物ひとりひとりが抱えるモヤモヤや悩みが他人事ではなかったんですよね。優しい物語の進行に少しずつ深く共感していき、気づけばホロリと涙することになるとは。


自分の仕事にやりがいを、見つけ出せない21歳女性。いつか叶えたい夢を持ち続け、現状を変えらずにいる35歳男性。育児も仕事も大事にしたいのに、やりたいことが思うようにできない40歳女性。好きなことをやり続ける勇気を持てずにいる30歳男性。積み上げてきたものに、意味を見出せなくなった65歳男性


年齢も性別も職業も全く違う登場人物に、なぜか自分を重ね合わせずにはいられない。胸が痛くなるシーンやホロッと涙がこぼれてしまうシーン。


図書室の小町さんとの出会いで、一人一人がどうやって前に進んでいくのか。謎解きのような、冒険のような、抱えた悩みから、どんな答えを見つけ、どんな道を進んでいくのか。登場人物と一緒に自分の忘れたままの探し物を見つけ出すきっかけになる小説かもしれません。


実は、図書室の司書小町さんは、青山さんの2作目『猫のお告げは樹の下で』の登場人物の一人みたいなんですよね。インタビュー記事で知ったんですけど、この本も気になるなぁ。


インタビュー記事読んで思ったけど、青山さんの優しさが滲み出てる作品です。とても読みやすく読書初心者にもオススメ。そして、心が穏やかになるような温かい物語が好きな人、働く人、これから社会に出る人、生きることって何だろうと考えたことがある人は、何か感じるものがあるんじゃないかな。本屋大賞2021ノミネート作品の一冊。読みながら、自分自身と向き合える一冊をいかがでしょうか。

最後までありがとうございました!


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