悲しみの先にある微かに見える希望の光『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ

今日も誰にも聴こえない悲鳴が鳴り響く。知ろうとするだけでは聴こえない。ともに歩む。それだけの思いがある人にしか聴こえないものなのかもしれない。死にたいわけではない。ただ、生きることが辛いなぁと感じる時があったりする。どんな希望の光も届かない心の影に届くのは、こういう物語なのかもしれない。


これだけたくさんの人がいるのに、誰とも繋がれないこと。言葉を使うだけでは伝わらないこと。むしろ、言葉にするから伝わらないことも。それでいて、言葉にしなくても伝わるものもあったりする。声なき声は、聴こえてくるほど単純なものではない。聴こうとしても聴こえないもの。言葉にされたとしても、理解という言葉が釣り合わない。僕らの人生は、言葉一つでやすやすと表せる程、簡単でも、単純でも、そんなに安いものではない。そんな形のないものに形を与えるかのような物語だったな。


不幸のどん底が、どこか他人事ではなくて、痛々しくて読むのが辛いと感じた人も少なくないはず。人のために生きることは素晴らしいことだけど、思いやりや親切、恩で身を削り、心を無くし、死ぬくらいに追い詰められるのは違うこと。アンさんが言ってましたね。これにすら気づけない程、私達の住む世界は優しくないんだよね


『52ヘルツの声』とは、誰にも届かない悲鳴みたいなもの。語られないこと、話せないこと、話したくないこと。どうすることが正しいのかも、間違いなのかも、助けを求めるべきか、自分で解決すべきことなのか。悩んでも苦しくても辛くても、これが普通だと思ってしまうほど、人って悲しくて優しい生き物なのかもしれない。


胸を痛めたり、切なくなったり、許せなかったり、それでも最後は救ってもらえた気がする。悲しいことを悲しいと感じられること、嬉しいことを嬉しいと表現できること。悲しくて笑うことしかできなかったり、嬉しいはずなのに涙が止まらなかったり。


ムシと呼ばれた少年(あえて名前は伏せますが)の泣くあの描写の描き方が、苦しくて、切なくて、でも綺麗な涙だったと思う。そんな気持ちが優しく伝わってきたな。


いつかきっとと希望を持つことは、時に残酷で難しいことなのかもしれない。それでも、もしかしたら、いつかきっとと信じても良いのかな。そう思える小さな希望の光をココに届けてくれた物語になりました。


最後までありがとうございました!是非、あなたの感想も一言でも良いので、気軽に教えてくださいね♫

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