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聖夜のご褒美 (短編)
美智はCITIZENの時計に目を落とす。
今日という日へのイメージカラーと、服のコーデに合わせた透明感溢れる白いベルトの腕時計は美智のお気に入りの一品だ。
規則正しく動く秒針に目を合わせる。
10、9、8、7、6、5、4、3、2、1……
長針と短針が12の刻字で重なる。
ふう、と白い靄を纏う息を吐き、静かに瞼を閉じる。
雪が微かに舞う空を仰ぎ、目を開く。
涙は出なかった。美智は心の
ガードレール (短編小説)
私は私のことが好きではない。
嫌いではない好きではないのだ。
いっそ蛇蝎の如く憎悪の対象だったならばどれほどよかったろうと思うことがある。
愛情を抱けばなお素晴らしいだろう。
ある人に対して嫌悪感を抱くとする。
そうするとその人を忌避しようとするかもしれない、悪態もつくかもしれない。
好意を抱いていれば、その人から好感を得ようと努力をするだろう。
何かしらのプレゼントをする行動に出るかもしれない。