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短編小説

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記事一覧

Christmas Call (短編3/3)

Christmas Call (短編3/3)

3.凛

 サンタクロースなんていない。
 本当は知っている。
 でも周囲にはサンタは実在すると話している。
 私のお父さんが、私のサンタだと言うことは恵子ちゃんと悟くんは知っている。
 だから、私がサンタはいないなんて言うと、お父さんがいないことを肯定してしまうことになる。
 それを拒絶する私はサンタは実在すると言う。
 お父さんが死んだ事実を信じたくないから。

 
 恵子ちゃんと悟くんが教室

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Christmas Call (短編2/3)

Christmas Call (短編2/3)

2.悟

 サンタクロースは本当にいる。
 俺の幼馴染みは、高校生のいまでもそれを本気で信じている。
 海上保安官のおじさんが、毎年彼女の枕元へプレゼントを用意していたからだ。
 それが理由でいまでも幼馴染みはサンタがいると信じ続けている。一般的な常識のサンタ=家族という図式は、幼馴染みの中にはない。
 でも、今年はとうとう幼馴染みの中のサンタ像も壊れるかもしれない。
 おじさんが海の事故に巻き込

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Christmas Call (短編1/3)

Christmas Call (短編1/3)

1.恵子

 サンタクロースは実在する。
 あたしの恋のライバルは、高校生にもなっていまだにそんなことを本っ気で信じている。
 海上保安官のお父さんが、毎年すやすや寝息を立てる彼女の枕元へプレゼントをそっと忍ばせていたからだ。
 女の子から見ても純だと思う彼女は、それが理由でいまでも信じ続けている。一般的な常識であるサンタ=お父さんorお母さんという図式は、彼女の中には存在しない。
 でも、今年は

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聖夜のご褒美 (短編)

聖夜のご褒美 (短編)

 美智はCITIZENの時計に目を落とす。
 今日という日へのイメージカラーと、服のコーデに合わせた透明感溢れる白いベルトの腕時計は美智のお気に入りの一品だ。
 規則正しく動く秒針に目を合わせる。
 10、9、8、7、6、5、4、3、2、1……
 長針と短針が12の刻字で重なる。
 ふう、と白い靄を纏う息を吐き、静かに瞼を閉じる。
 雪が微かに舞う空を仰ぎ、目を開く。
 涙は出なかった。美智は心の

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ガードレール (短編小説)

ガードレール (短編小説)

私は私のことが好きではない。
嫌いではない好きではないのだ。
いっそ蛇蝎の如く憎悪の対象だったならばどれほどよかったろうと思うことがある。
愛情を抱けばなお素晴らしいだろう。
ある人に対して嫌悪感を抱くとする。
そうするとその人を忌避しようとするかもしれない、悪態もつくかもしれない。
好意を抱いていれば、その人から好感を得ようと努力をするだろう。
何かしらのプレゼントをする行動に出るかもしれない。

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