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Small world war

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大人の学園ドラマ、コロナ対策の対応への共通点を探る
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これから展開していく小説ですが。
流行らないかも知れませんが「学園もの」です。ただ、生徒が主人公ではなく、学校をめぐる「大人たち」のドラマです。
今の混沌とした社会状況。「コロナ」を「不良文化」に置きかえ、その感染に立ち向かい正常化への道筋の物語を綴ろうと考えてます

「小世界大戦」の【記録】 Season1-1

「小世界大戦」の【記録】 Season1-1

その日、酒巻吾郎はいつもにない高揚感で駅に向かっていた。

大学を卒業して以来、ろくな就職活動もせず、
日銭を稼ぐ毎日と、各地のユースホステルや
ゲストハウスに逗留して、放浪の旅に明け暮れていた吾郎も、
さすがにこれではいけないと、彼なりに考えていたのだ。

そして、吾郎は、中学校の教師になる道を選んだ。

 吾郎の地元は北海道だ。
しかし、石油危機以来の構造不況で、ろくな就職先がなかった。
まし

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「小世界大戦」の【記録】 Season1-2

「小世界大戦」の【記録】 Season1-2

*注)物語の設定時代背景が「昭和末期」の学校であるので、現在においては一部不適切(職員室の喫煙、体罰、上司のパワハラ、現在では差別用語ととられる表現)と感じられる表現が、演出上混じることを、ご容赦くださいますようお願いいたします。また、制度その他の呼称も当時の表現です。

「要注意って・・・?」

 吾郎は財前に聞き返した。
財前は声を潜めるように辺りを見回しつつ・・。
「ここだけの話ですけど

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うちの「助手」がざわついてます

うちの「助手」がざわついてます



ニーチェ哲子 ねぇ、はるかちゃん、最近センセー、変なもの書いてはるね

はるか  え?ああ、「時代劇」書いてるね、昭和の歴史モノ

 ニーチェ哲子 こんなん、絶滅危惧種やね。いまでもあるんかな?

はるか うわ、初めて見たよ、これ、なに?学生服?

ニーチェ哲子  まぁ、その「亜種」みたいやね。あ、そういえば、いとこんちのタンスにこれあったような・・。

はるか  あたしんとこの叔父さん、これ

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「小世界大戦」の【記録】 Season1-3

「小世界大戦」の【記録】 Season1-3

「時間が来ましたが、今、おひとかた遅れると連絡がありましたので、
あと10分後に説明会と辞令交付を始めます。少々お待ちください。」
 
 中年の小太りな教員がそう告げた。

校長に託された辞令を渡す関係があるからだろう。
こんな時に不届きなやつだなと吾郎は内心思っていた。

・・・そういえば、あいつがいないや、・・・

 あいつというのは、辞令交付式の時に席が隣だった、
満仲隼人という、数学が専門

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「小世界大戦」の【記録】 Season1-4

「小世界大戦」の【記録】 Season1-4

*注)物語の設定時代背景が「昭和末期」の学校であるので、現在においては一部不適切(職員室の喫煙、体罰、上司のパワハラ、現在では差別用語ととられる表現)と感じられる表現が、演出上混じることを、ご容赦くださいますようお願いいたします。また、制度その他の呼称も当時の表現です。

「ネクタイしていると、ツッパリに胸ぐらつかまれやすいからだよ。」
近くにいた、やせた貧相な風体の教師がそう言った。

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「小世界大戦」の【記録】 Season1-5

「小世界大戦」の【記録】 Season1-5

*注)物語の設定時代背景が「昭和末期」の学校であるので、現在においては一部不適切(職員室の喫煙、体罰、上司のパワハラ、現在では差別用語ととられる表現)と感じられる表現が、演出上混じることを、ご容赦くださいますようお願いいたします。

その学校の「ルーティン」ガラッと戸が開いて、イガクリ頭に黒縁めがねの、白衣の教員が、
戸から顔だけ出してこう叫んだ。

「2号館の渡り通路に車の移動をお願いします!」

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「小世界大戦」の【記録】 Season1-6

「小世界大戦」の【記録】 Season1-6

2号棟の校舎は、一旦屋外の渡り通路を抜けた先にあった。

「・・ほら、あったよ・・。」

そう言って財前が火ばさみで拾い上げたのは、たばこの吸い殻だった。
吾郎は、ぎょっとした顔でそれを見た。

「う~ん、今日は大漁かなぁ・・。」

財前は、手慣れた感じでそうつぶやいた。
「財前先生・・・、おそうじって・・。」
「・・そ、生徒の吸った吸い殻掃除です。」

吾郎は言葉を失った。

「これは、部活の生

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「小世界大戦」の【記録】 Season1-7

「小世界大戦」の【記録】 Season1-7

「・・で、まず取り組むことなんですが。
まずは、朝礼の停止、そして毎朝全職員が校門に立ちましょう。」

「・・・え?・・・」

全職員といったら、大変な数だ。、本気でやろうとしてるんだろうか・・。

「むろん、全員が校門に立つわけにはいきません、
ローテーションで通学路の要所も含めて、職員全員が立ちます。」

 ああ、そういうことか。と吾郎は納得した。
要するにパトロールだな・・・。と思ったとき、

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「小世界大戦」の【記録】 Season1-8

「小世界大戦」の【記録】 Season1-8

すべての会議や研修、そして準備作業が終わって、
退勤したときは、もうすでに7時をまわっていた。
それでも半数近い教師がまだ机に向かって、
何やら作業をしたり、打ち合わせを行っていた。

「さ、僕たちはそろそろ退勤しましょう。
酒巻先生、ちょっとやっていきましょう。満仲先生も一緒です。」

満仲の方を見ると、にやっと笑って、
手を口に持っていき、きゅっと上にひねった。

・・なあんだ、そういうことか

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「小世界大戦」の【記録】 Season1-9

「小世界大戦」の【記録】 Season1-9

「すべては、学校再建への戦略ですね。ぼくはそう分析しました。」

財前先生は、まるで評論家のような口調でそう話し始めた。
満仲は、途中参加した瀬野先生と息が合って
なんだか盛り上がっていた。
そのこともあってか財前先生は、
もっと核心的なことを話してきた。

「結論は、本間の仲間の親が、金を動かして、
さらには羽田校長が人事を動かしたって事です。」
「・・つまりは、なかったことに?」

財前先生

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「小世界大戦」の【記録】 Season1-10

「小世界大戦」の【記録】 Season1-10

吾郎の就職を境に、恋人である結城涼美は、
吾郎と同居することになっていた。

これは、かねてからの約束事であって、
「婚約」という既成事実を作ろうという、互いの意図があった。

 基本的に楽天家である吾郎は、
何かしら「尻を叩く」システムがないと、動かない気質だった。
涼美にはそれがよくわかっているのだろう。

もはや、夫婦モードである。

 連休明けには、涼美は都内のアパートを引き払い、
ちょう

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「小世界大戦」の【記録】 Season1-11

「小世界大戦」の【記録】 Season1-11

吾郎たちは体育館の裏側に集まっていた教員たちと合流した。

「あぁ・・・やられましたね・・。」
財前がそうつぶやいた。

見ると、体育館の裏側のガラス窓が数枚、
投石された感じで割られていた。
財前によれば、この場所は校舎からは死角になっていて、
もし、かなり派手に割られていたとしても、
なかなか気づかれにくい場所だった。

 ただ、この箇所は更衣室と倉庫なので、
体育館のアリーナからは壁一つ隔て

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