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「小世界大戦」の【記録】 Season1-11

吾郎たちは体育館の裏側に集まっていた教員たちと合流した。

「あぁ・・・やられましたね・・。」
財前がそうつぶやいた。

見ると、体育館の裏側のガラス窓が数枚、
投石された感じで割られていた。
財前によれば、この場所は校舎からは死角になっていて、
もし、かなり派手に割られていたとしても、
なかなか気づかれにくい場所だった。

 ただ、この箇所は更衣室と倉庫なので、
体育館のアリーナからは壁一つ隔てられており、
さいわいにも入学式の会場には大きな影響はなかった。

「ちょいと知能犯だな・・。奴らに参謀がついたな、
たぶん岡村かも知れないな。」
生徒指導主事の永山先生がそうつぶやいた。

「岡村って?」
吾郎は訊いてみた。永山先生は、丁寧に答えてくれた。

「一昨年の卒業生です。成績優秀な子でしたが、
第一志望のC高校を失敗して、第2志望の私立に行ったのですが、
自分の失敗を棚に上げて、周りに恨みを持っているようなんです。
進学先でも問題行動山積みみたいで、
毎月のように問い合わせが来ますよ。」

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思い通りいかなかかった腹いせというか、いらだちか・・・。

解らないわけではなかった。
現に吾郎も大学受験に失敗したとき同様の思いを持ったからだった。

かといって、これが許されるという理由にはならない。
しかも、「黒幕」になるということは、卑怯きわまりない・・。

まだ未確認な情報ではあったが、吾郎は勝手にそう推測して憤慨していた。

「でもねぇ・・・。」

永山先生は、壊れたガラスを片付けながらつぶやいた。

「こいつは、男の子の荒れで、こういうたぐいはね、
【こんにゃく】なんですよ。」
「・・・こんにゃく?」
「世間に叩かれても、まだ反発するエネルギーがある。
単純な動機ですからね。」
「ああ、復元力ってやつですか。」

永山先生は、強面の顔をほころばせ、ほう、よく理解してますね。
というような顔をした。
しかし、そのあとは、また厳しい表情になって一言だけ言った。

「女子の荒れには、本当に気をつけることです。【豆腐】だからですよ。」

・・一旦崩れると修復がきかない・・・っていうことか・・。

吾郎がそういう心持ちで永山先生を見上げると、
永山先生は「諾」という面持ちで静かにうなずいた。

「だから、女子の荒れには細心の注意が必要ですよ。特に若い先生は。」

と、また意味深な言葉を言った。


 To be CONTINUE

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