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ひあオリジナルものがたり

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記事一覧

繰り返し

繰り返しあなたの部屋をノックして

繰り返し違う女を確認する

繰り返し少し開かれたドアから

繰り返し「今日は帰れ」と声がする

繰り返し今日もメイクをし

繰り返しヘアスタイルもキメて

繰り返し痛めつけられるように抱かれ

繰り返し泣きたくなるのをグッと我慢

繰り返しこんな自分は嫌になるのに

繰り返し今日も彼に会いに行く

繰り返し自分の価値の低さを再認識し

繰り返しそんな自分に酔いし

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欠乏

人を心から信じられたのは
もう何年前のことだろう

いつしか大人になって
始まりと同時に終わりをいつも想う

着飾ったレディ
美しい唇から発する言葉はどこまでが本心?

狂ったように見せかけて
奥底に冷たい何かが常に這う

心を乱すような愛が欲しい
全てを投げ出してしまえるような愛が欲しい

見せかけだけはもうこりごりだよ
こんな自分にももううんざりだ

羞恥心に耐え難いこんな夜にも
お金だけが僕

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狂気

誰かを傷つけたいと思ったとき
それ以上に僕の心が傷ついている

それを知って欲しくて
彼女をわざと傷つける

傷つくと分かっている言葉を投げかけて
彼女を試す
彼女に僕の
僕だけが与えられる影響を与える

本当は彼女の全てを奪って
僕だけしか頼る人がいないという
世界にしてあげたい

今も彼女は
僕と同じくらい
僕のことを考えているはずだ

なぜなら彼女は
あのとき僕のことを好きだと言ったから

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愛されるとは。

愛されたいと思っていた。

愛されることが幸せだと信じていた。

ある日、
ああ、愛したかったのだと気づいた。

愛されるとは、
「愛する場所を与えられる」
ということなのかもしれない。

初恋

溶け出た雪がどこから来て
どこへ流れ出るのか
気にかけたことがなかった

降り積もる幻想が
いつまで続くのか
とても不安になった

誰かと同じが良かった
でも誰とも同じでは嫌だった

誰にも見られない景色が良かったのに
誰にも触れられない雪が綺麗だったのに

処女を失った時の女性の恋心を表現してみました。

プログラマーの彼

指先で世界を描くあなた。
初めから完璧を目指さないで。

作り上げたコードを
二人で最適化していきましょう。

スクリーンに星の光を散らばせて
PC一つでどこまでも飛んでいけるみたい。

今夜もまだ眠りにつけないのね。
あなたが
ひっそりと努力してること知ってる。

あなたの世界を知らなくて
寂しくてひっそりと泣きはらした朝。

もう我慢できないの。
合理性を追求するなら
その中に私を入れておいて

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研究者の彼

準備はいい?
この恋に再現性はないわよ?

あなたの手にあるエビデンスは
まるで役に立たないってことを
もうすぐ思い知ることになるわ。

論理は記憶力の問題でしょう?

あなたの手札にないこの難題に
最適解を求めることができるかしら?

恋は矛盾だらけ。
私の行動に意味なんてないもの。

さて、研究する側から
される側になる気分はどう?

あなたっていう検体は
なかなか珍しいから
ゆっくりと実験し

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指揮者の彼

あの、譜読みした日の夜のこと
憶えてる?

あなたは私を膝の上に乗せて
首にしがみつく私を少し鬱陶しそうに、
でも嬉しそうにメロディーを奏でた。

そうしてその曲にでたらめな歌詞をつけて歌う私の
頬にそっと口づけをして
「セクシーだ」って言いながら笑ったの。

私はオーケストラの一員でも
観客の一人でも嫌だった。

あなたの燕尾服をさりげなく
ハンガーにかける存在でいたかったのよ。

いつも背中し

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激しい愛の末路

岩を砕くような
激しい水の流れだけが
川だと思っていたの

流れが止まっているかのように見える
広大な緩やかな川も
それは確かに川だった

激しさに飲み込まれて
自分を見失ってしまう前に
連れ出してくれる人が
あなたで良かった

灯台の明かり

ある海岸沿いの町は
夜になると
とても暗く
危険な町となるので

そこに住む人々は
仕事や学校が終わると
皆、
決まって帰路を急ぐという
生活をしていました。

あるとき
一人の人が言いました。

「あの山のてっぺんに
 灯台を建てよう!
 そこからこの町を照らして、
 夜でも明るい町にするんだ!」

その意見に賛同した有権者は
早速、計画を進めます。

資本家から資金が集まり、
設計士が現れ、

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待ち続けた手紙

ある国に
とても綺麗なお姫様が住んでいました。

ある日、お姫様は
隣の国の王子に出会います。

二人は瞬く間に恋に落ち、
その一瞬が永遠となっても良いような
ひと時を過ごしました。

別れ際、王子は
「必ず手紙を書くよ」
と約束をして、去って行きました。

次の日からお姫様は
王子様の手紙を待ち続けました。

しかし、毎朝毎夕、
いつまで待っても
手紙は届きませんでした。

お姫様は
「王子様の

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