林林檎/林々檎(はやしりんご)

男性。日曜作家。個人文芸サークルFifth Dimension代表(基本1人サークル)…

林林檎/林々檎(はやしりんご)

男性。日曜作家。個人文芸サークルFifth Dimension代表(基本1人サークル)。詩を書くときの名前は林々檎。 写真などはインスタへ→https://www.instagram.com/hayashi_apple

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記事一覧

'24/5 観たい映画/観た映画リスト

あらすじ林檎はとある組織の手により、週に1本以上は映画を観ないと落ち着かない身体にされてしまった。 そこで、劇場公開される映画に当たりをつける必要が出てきたのだ…

赤裸々な旅日記・続

気が向いたので、 「赤裸々」 の話。 脚本を学びながら習作を書いていると、 誰かのためのフィクションのつもりでも、 深い内容は自分のために自分の話を書いていたりした…

赤裸々な旅日記

「ご自由にお書きください」 ってひさびさにnote書こうとしたら Twitterの「いま、何してる?」みたいに出てたのでびっくりした。 確かに言葉は、自由に投げて、自由に取っ…

9月第4週『LAMB』(ネタバレあり)

その日は友人とジンギスカンを食べに行く予定だった。 店で待ち合わせる前に、時間的にちょうどいい映画を見ようと探して、あった。 それが『LAMB』だった。 あとは、もと…

詩『今朝の夢』を投稿しました

最近、夢を見るようになった。 ここ数年は年に数回見れればいい方だった。 睡眠の質が少し良くなったのか、ほっとした。 とはいえ、変わらず寝不足な日々が続いている。 …

詩『今朝の夢』

3/22(火)

カンナちゃん近所の縁側で、三毛猫が爪を研いでいた。 そのまま、時々爪をぺろりと舐めていた。 そしてまた爪を研ぐ。 よく目を凝らすと、爪を研いでいるのは柱ではなく、…

3/21(月)

蕎麦屋の怪『私』は蕎麦がとても食べたかった。 午後二時半、遅めの昼食に蕎麦屋に入った。 ランチもひと段落した落ち着いた店内で、しめしめ、と思った。 呑気なワイドシ…

3/20(日)

そぼ濡れしけた雨が降っていた。 しかし傘がないので、そぼ濡れて街を歩いていた。 誰かの街に行くのではない。 ただの帰り道だから、濡れても平気だった。 長雨でがらく…

3/19(土)

犬のお巡りさん『私』が家を出たあたりで、警察犬が辺りを嗅ぎ回っていた。 後ろではお巡りさんが子猫を抱えていた。 お巡りさんは警察犬が臭いを追う後ろで、不安そうな…

3/18(金)

地団駄団 朝早くの公園に老若男女の集団がいた。 『私』はそれを遠巻きに眺めていた。 「みなさん! 右足からいきましょう」 先頭の男が声をかけると、集団は一斉に、だ…

3/17(木)

海水ぐらいで『私』は真っ暗な部屋にいた。 最初は何も見えなかったが、次第に目が慣れてくると、おぼろげに見えてきた。 『私』は目の前にあるボウルの中身をつぶさに見…

3/16(水)

ノーモア『私』が路地裏をくねくねと通っていると、逃げていた映画泥棒とぶつかった。 その勢いで映画泥棒は勝手に倒れて、動かなくなった。 残念なことにパトライトを回し…

3/15(火)

くさめ『私』は朝からくしゃみばかりしていた。 とうとう花粉症になってしまったかと思うと、なんだか悲しくなった。 ところが今日は、久しぶりに会う人や連絡をくれる人…

3/14(月)

スカスカの伊予柑『私』は伊予柑がまあまあ好きだ。 とはいえ、伊予柑の瑞々しいところは苦手だ。 その理由は簡単で、酸っぱいからだ。 しかし、水分の抜けたスカスカなと…

3/13(日)

坂道で智慧の実『私』が急な坂道を上っていると、頂点が見えたあたりで。上の方に紙袋いっぱいの林檎を抱えている女の人がいた。 気づいた刹那、紙袋の底が抜け、林檎が一…

'24/5 観たい映画/観た映画リスト

あらすじ林檎はとある組織の手により、週に1本以上は映画を観ないと落ち着かない身体にされてしまった。
そこで、劇場公開される映画に当たりをつける必要が出てきたのだった。

概要説明とりあえず、ざっくりメモするための記事です。
基本的に好み中心のチョイスです。
あと、見逃しても後で見そうなやつは優先順位が下がりがちです。
逆に、映画館以外で見るのが大変そうなやつは優先順位が上がります。

観たい映画リ

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赤裸々な旅日記・続

気が向いたので、
「赤裸々」
の話。

脚本を学びながら習作を書いていると、
誰かのためのフィクションのつもりでも、
深い内容は自分のために自分の話を書いていたりしたのだった。

そう思って浮かんだ「赤裸々」という言葉が、
面白いなあと思ったのだ。

赤に裸に裸を重ねて。

「赤」という漢字が、炎に照らされた人間の全身の象形文字なのだという。
そこから、包み隠さないことや、本当のことを意味するよう

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赤裸々な旅日記

「ご自由にお書きください」
ってひさびさにnote書こうとしたら
Twitterの「いま、何してる?」みたいに出てたのでびっくりした。
確かに言葉は、自由に投げて、自由に取ってもらう、そういうものかもしれない。

さてさて、ひさびさに。
今回は日記みたいに自分語りでやってみる。

このところ毎回出してた『文学フリマ東京』を今年は春と秋、共にお休みしていた。
事情は色々あったが、一番の理由は改めて物

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9月第4週『LAMB』(ネタバレあり)

その日は友人とジンギスカンを食べに行く予定だった。
店で待ち合わせる前に、時間的にちょうどいい映画を見ようと探して、あった。
それが『LAMB』だった。
あとは、もともと観たかった以外に他意はなかった。
冗談みたいな偶然の話。

公開2日目、宣伝の上手さもあり、都内某シネコンはかなり混んでいた。
そして、鑑賞後のざわつき……。
賛否両論な肌触り。
個人的には割と好きだったが、ズルいな、とも思った。

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詩『今朝の夢』を投稿しました

最近、夢を見るようになった。
ここ数年は年に数回見れればいい方だった。
睡眠の質が少し良くなったのか、ほっとした。

とはいえ、変わらず寝不足な日々が続いている。
朝の電車に乗っている頃には、夢の中身など忘れてしまって、ただ『今朝の夢』という言葉だけが残っていた。

その言葉から、するっと書いた詩です。
頭の中に滞留していたいくつもの言葉が、ひと掬いしたレードルの中でかたまりになったような詩ですが

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3/22(火)

カンナちゃん近所の縁側で、三毛猫が爪を研いでいた。
そのまま、時々爪をぺろりと舐めていた。
そしてまた爪を研ぐ。

よく目を凝らすと、爪を研いでいるのは柱ではなく、鰹節だった。
そりゃ美味しいわな、と『私』は感心した。
障子の奥からおばあさんの声がした。
「そろそろ削れたかい?」
みゃお、と三毛猫は応えた。

しかし、『私』の目に映っているのは、爪で削ったそばから鰹節をつまみ食いしている三毛猫の姿

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3/21(月)

蕎麦屋の怪『私』は蕎麦がとても食べたかった。

午後二時半、遅めの昼食に蕎麦屋に入った。
ランチもひと段落した落ち着いた店内で、しめしめ、と思った。
呑気なワイドショーが笑っていた。
メニューを開くと、天ぷら蕎麦が目に入った。
『私』はそれを頼んだ。

ほどなくして丼が来た。
一口啜る。
うまい!
鰹の出汁とサクサクの天ぷら、麺の喉越し。
どれも最高だった。

麺がうどんであったこと以外は。
まあ

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3/20(日)

そぼ濡れしけた雨が降っていた。
しかし傘がないので、そぼ濡れて街を歩いていた。
誰かの街に行くのではない。
ただの帰り道だから、濡れても平気だった。

長雨でがらくたが錆び付いてゆく。
時計台の軋む音がかすかに聴こえる。
外れかかった幌のはためく下で、空き瓶たちががらがらと擦れ合う。

しとどに濡れた外套の下で生い茂る苔の蕾に、飛び乗った蜘蛛。
午後の通りは仄明るい。
その先の虹を待たずに家路を歩

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3/19(土)

犬のお巡りさん『私』が家を出たあたりで、警察犬が辺りを嗅ぎ回っていた。
後ろではお巡りさんが子猫を抱えていた。

お巡りさんは警察犬が臭いを追う後ろで、不安そうな子猫をあやしていた。
しばらく進むと、一軒の家の前で警察犬が吠えた。
お巡りさんはその家を訪ねると、中から若い女性が出てきて、子猫を抱き抱えるとわんわん泣いていた。

無事に迷子が家に戻れて、無関係な『私』もホッとした。
そして、プロの警

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3/18(金)

地団駄団

朝早くの公園に老若男女の集団がいた。
『私』はそれを遠巻きに眺めていた。

「みなさん! 右足からいきましょう」
先頭の男が声をかけると、集団は一斉に、だん、だん、と右足を地面に叩きつけた。

「いい地団駄です!」
数分続いた地団駄を止めて、先頭の男が言った。
「この調子で地団駄団を盛り上げていきましょう!」
集団から鬨の声と、地割れのような地団駄が響いた。
怪しい反面、楽しそうで羨ま

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3/17(木)

海水ぐらいで『私』は真っ暗な部屋にいた。
最初は何も見えなかったが、次第に目が慣れてくると、おぼろげに見えてきた。

『私』は目の前にあるボウルの中身をつぶさに見ていた。
中には小さな楕円が並んでいる。
楕円がたまに震えて、小さな泡が浮き上がってくる。
楕円はたまに開いて、かたり、と音がする。

心が落ち着いてきた頃、『私』は手探りで部屋を出て、鍋にお湯を沸かし始めた。
そしてまた部屋に戻り、明か

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3/16(水)

ノーモア『私』が路地裏をくねくねと通っていると、逃げていた映画泥棒とぶつかった。
その勢いで映画泥棒は勝手に倒れて、動かなくなった。
残念なことにパトライトを回した警察官は、上手くまかれたのか全く来る気配がなかった。

『私』はそっと映画泥棒の頭のビデオカメラを触ってみた。
ほんの出来心だった。
再生ボタンを押してみると、週末に見ようと思っていた新作映画が始まった。
無性に腹が立った『私』は、カメ

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3/15(火)

くさめ『私』は朝からくしゃみばかりしていた。
とうとう花粉症になってしまったかと思うと、なんだか悲しくなった。

ところが今日は、久しぶりに会う人や連絡をくれる人が多かった。
再会は嬉しいものだが、こうもひっきりなしに続くと、さすがに訝しむ。
今日会ったうち、十三人目の友人に思い切って訊いてみた。
「ひょっとして噂してた?」
十三人目の友人はこう答えた。
「なんでわかった? みんなでどうしてるか噂

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3/14(月)

スカスカの伊予柑『私』は伊予柑がまあまあ好きだ。
とはいえ、伊予柑の瑞々しいところは苦手だ。
その理由は簡単で、酸っぱいからだ。
しかし、水分の抜けたスカスカなところが甘くて好きなのだ。

子供の頃はあのスカスカが贅沢だと思っていた。
房の端っこにちょっとだけしかないあれは、伊予柑の希少部位だと思っていたのだ。
マグロのトロや牛肉のサシみたいに。
家を出ればそんな人間こそが希少だったのだが。

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3/13(日)

坂道で智慧の実『私』が急な坂道を上っていると、頂点が見えたあたりで。上の方に紙袋いっぱいの林檎を抱えている女の人がいた。
気づいた刹那、紙袋の底が抜け、林檎が一斉に坂を下り始めた。

『私』の元に来た数個は難なくキャッチしたが、十個以上は坂を駆け下りていく。
女の人も必死に追いかけるが、靴が動きづらそうだったので、スニーカーを履いた『私』の方がが早かった。

『私』は坂を下りきって、全ての林檎をか

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