3/20(日)

そぼ濡れ

しけた雨が降っていた。
しかし傘がないので、そぼ濡れて街を歩いていた。
誰かの街に行くのではない。
ただの帰り道だから、濡れても平気だった。

長雨でがらくたが錆び付いてゆく。
時計台の軋む音がかすかに聴こえる。
外れかかった幌のはためく下で、空き瓶たちががらがらと擦れ合う。

しとどに濡れた外套の下で生い茂る苔の蕾に、飛び乗った蜘蛛。
午後の通りは仄明るい。
その先の虹を待たずに家路を歩む。

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