3/17(木)

海水ぐらいで

『私』は真っ暗な部屋にいた。
最初は何も見えなかったが、次第に目が慣れてくると、おぼろげに見えてきた。

『私』は目の前にあるボウルの中身をつぶさに見ていた。
中には小さな楕円が並んでいる。
楕円がたまに震えて、小さな泡が浮き上がってくる。
楕円はたまに開いて、かたり、と音がする。

心が落ち着いてきた頃、『私』は手探りで部屋を出て、鍋にお湯を沸かし始めた。
そしてまた部屋に戻り、明かりをつけて、砂出ししたアサリをボウルごと台所へと持っていく。
鍋の中にアサリを全て入れ、夕餉の支度を始めるのだった。

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