記事一覧
山野辺ゆきみと篠井研
学校帰り。
校門前でわたしを呼び止めたべゆみと、がんセンターの真ん前にあるデイリーヤマザキで買ったアイスを食いながら、川沿いの遊歩道をだらだら歩いている。やすらぎ堤とかいうのんきな名前だけど、わたしとべゆみがここを歩くのは、あんまり楽しいことがない時だ。
「あー、姉ちゃんの車どっかで壊れねーかな」
べゆみは学校指定の鞄を振り回す。わたしはそれを足を止めて避ける。べゆみの担任は置き勉禁止
おいしいカレーのつくりかた
玉ねぎを切るときの正しさがどこにあるのか、いまだにわからない。
まず半分に切る。次に平らな面を下にして薄切りに、……この「薄切り」がくせ者だ。「繊維に沿って切る」がわからない。芯に向かって斜め下に包丁を入れていくとやがて土台を失った玉ねぎはシーソーみたいにがたつき始める。上から下へまっすぐ切り下ろせばよいのだろうか。すると切り口が美しくない。
いざカレーを作る段になってぼくはいつも途方に暮れ
絵画的プールゲーム #風景画杯
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壁に二枚の絵画が掛かっている。
どちらも摩天楼の中にある部屋の調度品と合わせるように直線的で幾何学的なアールデコ調の紺地に金で縁取りされた額に納まっているが、その内容はまるで正反対であった。
一つは画布《カンヴァス》に敢えて荒々しく、しかし滑らかな油彩で描かれた二人の美しい紳士が座って何事か会話する絵である。
二人とも高い丸襟の上等なシャツを着てリラックスした姿勢でそれぞれのソファ
いまだあせぬ、神威の痕 #風景画杯
暑い、じゃなくて熱い。死だ、今ここには死が大気に充満してる。
赤茶けた死の土地の、起伏に富んだ地形を見るにつけて、私は自分が言い出したレポートのお題に後悔してる。
今私がいるのはカルフォルニアの、デスバレー。デスバレーですよ奥さん?名前に死ってついているし、由来もホントに死人が出たせいだし、私なんでこんなトコに来たんだろう?次に見に行くところは、おじさんにお願いしてせめてもっと涼しいところに