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風景画杯 全部載せマガジン

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第一回風景画杯 応募作品です。 #風景画杯
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記事一覧

風景画杯 優勝作品発表

こんばんは。
講評を書いただけなのにほうぼうから偉い偉いと言われてニマニマしているハクゾースです。こんばんは(二度目)。

講評の公開から優勝作品発表まで間をあけたのは、単純に一度冷却期間を置きたいなと思ったのが理由です。甲乙つけがたいものがたくさん。具体的に数えてみても10作以上、メチャクチャいいなと思っているものが並んでいます。どうしても読んだ順とかに影響されてしまうのと「好み」というのを排除

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風景画杯 全作レビュー

皆様、ご応募ありがとうございます。
ほんの思い付きで始めたこちらの風景画杯、存外いろんな方に見ていただいたようで反響が多く、審査員一同驚いております。50作ですよ。正気ですか。審査員一同、こんなに多くなったなら手分けしましょうねって、即座に分業制に切り替えました。10人で手分けすれば一人10作ですよね。でも審査員って言ってもわたくし、一人しかいないんです。頑張りました。

もともと「事件」が起きな

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#風景画杯 応募受付終了

みなさまハッピーバースデー!て、自分か。
あらためましてこんにちは。風景画杯主宰です。
気軽にハクゾースチャンとお呼びください。

というわけで8:22現時点をもって、締め切り!!(ガバ)

思い付きで始めた文芸賞ですが、思ったよりもたくさんの方に興味を持っていただき、応募作も…数えたら50作近く!思ったよりもたくさん、た、たくさん…!たくさんあるなあ!!(軽率に全作講評を謳ったのですごい顔をして

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ゴールデントライアングルへようこそ

「見てください。地元住民の生首です」
 ガイドはにこやかに語りかける。
「ああして仕事を拒否した人を、晒し首にするわけですね」
 腐りかけの生首を小鳥が啄んでいる。そのそばで農作業に従事するのは、生首と同じ村の者たちだ。
「彼らは日が昇ってから沈むまで、こうして芥子の栽培を行っています。暴力で脅すことで、安い労働力を得られるわけです。労働基準法? そんなものはありませんよ。なんたってここは」
「黄

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父親の墓

父親の墓

「……お前の計画はなんでいつも、俺が手伝うこと前提なんだ?」
「えー、いいじゃん。兄ちゃん、ずっと家に居るんだし」
「在宅勤務って言葉の意味わかってんのかお前」

 とかなんとか言いながら、兄ちゃんはしっかり運転席に座っている。この分だと有給取ってくれたみたいだ。助かる。

 今日は水曜日、現在時刻は午前7時すぎ。後部座席には、でっかいスコップとバケツ。あとはレジャーシートとか、日除けのパラソルと

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山野辺ゆきみと篠井研

山野辺ゆきみと篠井研

 学校帰り。

 校門前でわたしを呼び止めたべゆみと、がんセンターの真ん前にあるデイリーヤマザキで買ったアイスを食いながら、川沿いの遊歩道をだらだら歩いている。やすらぎ堤とかいうのんきな名前だけど、わたしとべゆみがここを歩くのは、あんまり楽しいことがない時だ。

「あー、姉ちゃんの車どっかで壊れねーかな」

 べゆみは学校指定の鞄を振り回す。わたしはそれを足を止めて避ける。べゆみの担任は置き勉禁止

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おいしいカレーのつくりかた

おいしいカレーのつくりかた

 玉ねぎを切るときの正しさがどこにあるのか、いまだにわからない。
 まず半分に切る。次に平らな面を下にして薄切りに、……この「薄切り」がくせ者だ。「繊維に沿って切る」がわからない。芯に向かって斜め下に包丁を入れていくとやがて土台を失った玉ねぎはシーソーみたいにがたつき始める。上から下へまっすぐ切り下ろせばよいのだろうか。すると切り口が美しくない。
 いざカレーを作る段になってぼくはいつも途方に暮れ

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stella noir #風景画杯

Ⅰ 今から語られる全て事柄は定められた命運で、それを覆すことは何人にも叶わない。例えば、僕たちはコンマ1秒後、跡形もなくなって死ぬ未来だって、決して避けようがなかった。

 そんな時に僕は、トイレの紙を切らして立ち往生していた。

「園亞ーーーっ、おーーーいっ」

 僕は同乗者の名前を大声で呼びつける。僕たちの乗る宇宙船は決して狭いもでのはなく、このSOSが届くか不安だったが、彼女……園亞はすぐさ

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大巨獣エビオナンテのいる街

大巨獣エビオナンテのいる街

 東州連合の奉戴するタイラント、エビオナンテが通算300体目の巨獣襲来を退けた。決まり手はギロチン・ハサミ・カーニバルだった。

「うちの国のタイラントってチョー強いんだねえ」
 テーブルに頬杖を突きながらビデオスクリーンを眺めていた僕のパートナー、薫子さんがそう呟く。彼女は朝食の片付けを終えて、寛いでいたところだった。画面には件のエビオナンテがマンモス型巨獣を縦横奥行き4*4*4で64分割にした

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竜華透夢

竜華透夢

 見渡す限りの草原に、塔が林立している。あれら一本毎に、竜が棲まう。
 近づいてみると、塔は意外な程に高い。白く、滑らかで継ぎ目は無く、いつの時代にどうやって建てられたのか、誰も知らない。一説によればそれは竜が魔法で創りあげたのだと云う。
 朝方と、夕暮れ。明暗の境空を、竜が舞う。竜の飛び方は独特で、その強大な翼を殆ど搏せず、ヒューン、ヒューン、と風切り音だけを響かせる。竜の鈍色の鱗が赤い陽に輝き

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絵画的プールゲーム #風景画杯


 壁に二枚の絵画が掛かっている。

 どちらも摩天楼の中にある部屋の調度品と合わせるように直線的で幾何学的なアールデコ調の紺地に金で縁取りされた額に納まっているが、その内容はまるで正反対であった。

 一つは画布《カンヴァス》に敢えて荒々しく、しかし滑らかな油彩で描かれた二人の美しい紳士が座って何事か会話する絵である。
 二人とも高い丸襟の上等なシャツを着てリラックスした姿勢でそれぞれのソファ

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帰り道、ひとり

 23時過ぎ、地下鉄東西線三条駅改札 。

「そんじゃあな」

「うん、また」

「また」

 高山の姿を改札から見送る。奴は振り返らず階段に消えていく。滋賀への終電が近いとは言え、振り返って手を振るくらいしたってええんちゃうんかな……そう思わないでもないけど、まぁ、日が暮れる前に集まって今まで駄弁ってきた訳だし、まぁ、いいんだろう。 それぐらいで。

 改札からゆっくり向き直って京阪の

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某県某所の中華料理屋:★4.5

「免許更新のハガキが来たぞ」

久しぶりの田舎の父からの電話に、5年毎の一大イベントを思い出す。
「もう5年か」
「今回はそっちで更新するだろ?」
「ああ、時世も時世だしね」

疫病が蔓延し帰省もままならない現状では、そうするよりほかなかった。もっとも、本来であれば引っ越した時点で住所変更をしなければならないのだが、次の更新が近いからとサボっていたわけで。

「それじゃあハガキはそっちに送るから、

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いまだあせぬ、神威の痕 #風景画杯

いまだあせぬ、神威の痕 #風景画杯

 暑い、じゃなくて熱い。死だ、今ここには死が大気に充満してる。
赤茶けた死の土地の、起伏に富んだ地形を見るにつけて、私は自分が言い出したレポートのお題に後悔してる。

 今私がいるのはカルフォルニアの、デスバレー。デスバレーですよ奥さん?名前に死ってついているし、由来もホントに死人が出たせいだし、私なんでこんなトコに来たんだろう?次に見に行くところは、おじさんにお願いしてせめてもっと涼しいところに

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