倒れた私は意識の中で自分が羽化する姿を見た。うつせ身の世の事なれば外に見しよすがと思うものは知らずも。私の周りには万の葉が繁っている。花は私から遠ざかった。事の端は花ではなく葉であった。夜のしじまに言の葉が生まれ触れ合い落ちていく。森は変わらずしんとしている。(了)
【ご馳走様のその後に】 実家にいた時から今も変わらない。 食事が終わり、ご馳走様でしたの後に必ず母が言う。 「お粗末様でした。」 これは料理を作った人が、取り立てて大したことはない という謙遜の気持ちを込めて使う言葉。 料理好きな母のこの気持ちだけは、娘も無事に受け継いだよ。