マガジンのカバー画像

エッセイ集

4
自分のお気に入り、たくさんの方に見てもらったもの、詰め込んでいます。
運営しているクリエイター

記事一覧

あの頃私たちは無敵だった

あの頃私たちは無敵だった

10代も終わりが見えてくる高校時代、私たちはいつだって無敵で、理由もない「無敵感」に包まれていた。

私は、東京西部にあった中高一貫の女子校に高校から進学した。「あった」というのは現在では共学化され学校名も変わってしまったためである。校則が厳しくて、膝下のスカート丈はもちろん染髪やメイクは禁止、髪の長さまで決められており、生徒はだいたい東京西部や埼玉県から通っていた。

中高一貫ということもあり、

もっとみる
夏の色素

夏の色素

今日、ドラッグストアからの帰り道に、タチアオイが踏切脇に咲いているのを見つけた。踏切の向かいには電車を撮るためにカメラを抱えている人が数人いたものの、タチアオイにカメラ(といっても私のはスマートフォンについているものだが)を向けているのは私だけだった。

タチアオイとは、夏に咲く花らしく、ちょうど今のような汗ばむようになってきた頃にちらほらと咲き始めるようだ。真っ直ぐに伸びた茎から赤やピンクの薄い

もっとみる
あの頃の「私だけの秘密」

あの頃の「私だけの秘密」

小学校の頃から、国語の授業中に隠れて巻末の小説を読むのが好きだった。

国語の教科書には実に多くの読み物が収録されている。さらに、それらはすべてその年の児童・生徒に向けた本の1番良い部分を抜粋しているため、どれも読み応えがある。しかし、収録されているすべての小説や評論を授業で取り扱うわけにはいかない。1年間の授業スケジュールには限界があるため、「ごんぎつね」や「少年の日の思い出」のような有名な作品

もっとみる
井の頭公園、スワンボート

井の頭公園、スワンボート

ある土曜の午後、大学の友人と吉祥寺にある井の頭公園に行った。
彼女とは大学に入ってから知り合い、今年で3年目の付き合いになるが、今年度は8月に一度会ったきり半年ほど会えていなかった。

今年の4月、彼女は社会人となり私は大学院生になる。
今まで通り頻繁に会うことは難しくなるだろう。
お互い口には出さないが、それをわかった上でこの感染症が蔓延する中、どうにか安全に会える場所として井の頭公園を選んだの

もっとみる