鱒 花藻 (ます はなも)

「ももはな もはな」改め、「鱒 花藻(ます はなも)」です。都内在住の大学院生です。心…

鱒 花藻 (ます はなも)

「ももはな もはな」改め、「鱒 花藻(ます はなも)」です。都内在住の大学院生です。心に収められない思い出と、生活を文にして著します。不定期更新です。

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あの頃私たちは無敵だった

10代も終わりが見えてくる高校時代、私たちはいつだって無敵で、理由もない「無敵感」に包まれていた。 私は、東京西部にあった中高一貫の女子校に高校から進学した。「あった」というのは現在では共学化され学校名も変わってしまったためである。校則が厳しくて、膝下のスカート丈はもちろん染髪やメイクは禁止、髪の長さまで決められており、生徒はだいたい東京西部や埼玉県から通っていた。 中高一貫ということもあり、そこではすでにコミュニティが出来上がっており、そんな環境に飛び込んでいくのはなか

    • マドンナの結婚

      「入籍しました」年が明けてすぐ、そう記されたインスタグラムのストーリーが更新された。投稿主は私の高校時代からのマドンナだった。 彼女は中高一貫の女子校に中学から通っているお嬢様だった。高校から入学した私には当初、気が強くて少し怖い存在だった。しかし、同じクラスになってみると白く透き通る肌に細くてまっすぐな脚、決して絡むことのない薄茶色の髪の毛、華奢な体。そして端正に整った目鼻立ち。この見た目にお茶目で可愛らしくて面白くて、気取らない、何より運動も勉強もできる。そんな彼女に一

      • あふれる想いこぼれる言葉

        「一文が長い」「同じことの繰り返し」 これまで文章を書いて、添削を受けるたびに必ず言われた言葉である。自分の思っていること、伝えたいこと、全てを込めるのにこの言葉では足りない、あの言葉で伝えたい、でもこれだけじゃなくてこっちにも… 私の頭はきっと人よりも騒がしい。「ぼーっとしていて何も考えていなかった」という経験を生まれてから24年、したことがない。常に自分の中で言葉が渦巻いていて、矢印が自分にも外にも向いていて、アンテナは常に電波を受信していて、その割心は繊細かつ貧弱なので

        • 遺書を書くはずが愛を綴っていた

          突然ですが、私は強迫性障害を抱えています。 大学院に入り、コロナ禍でオンライン授業を強いられる中、慣れない学会運営を行い、その中で人間関係の悩みを抱えていくうちに元々もろかった私の心は壊れてしまいました。 ずっと通っていたカウンセラーの先生から「このままじゃ鬱になるよ?」と心配されつつもその環境から逃げようもなく、ただただ黙って耐えていたのですが、日常に支障が出るほどの強迫行動が出ました。メールを送るのに確認を何回も押して、怯えながら送信ボタンを押し、「〜してしまったけど、大

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        • エッセイ集
          4本

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          ファンレターという名の初めてのラブレター

          24年生きてきて、初めて「推し」という存在にファンレターを出した。 もともと幼い頃から手紙を頻繁に出す習慣は身に付いており、手紙を書いたり、レターセットやシール、切手を集めるのも眺めるのも好きだった。 しかし、手紙に自らの文字で相手への好意を表し渡すという行為をしたことはなかった。持ち前の度胸で告白は自らの口で伝える、なぜかそれを貫いてきた。推しという存在は今までもいたが、ファンレターを出す気にはならなかった。どうせ読まれないだろう、出すまでの手順がわからない、などと理由を

          ファンレターという名の初めてのラブレター

          目を醒すとそこは田園であった。

          埼玉県北部、行田市へ花手水を見に行った時のことだった。 長い間電車に揺られ、ふと目を醒すと車窓から見える風景は先ほどまで見ていたものと全く異なるものになっていた。 その日、水を張った鉢に花を浮かべる花手水が街の至る所に置かれるイベントが行われているから見に行こう、と友人に誘われ行田市に向かっていた。私は東京の端の方に住んでおり、そこから電車で埼玉県北部へ向かうのにはなかなかの時間と労力がかかる。しかし、せっかく春が来たのだから、滅多に自分からは誘ってこない彼女が誘ってくれた

          目を醒すとそこは田園であった。

          髪を20cm切ったら人生変わったかも。(後編)

          そうこう言っている間に、髪を切る日がやってきました。 自分で決めたこととはいえ、ここまで伸ばした髪との別れは妙に寂しく、最後に写真を撮って美容院に行きました。 オーダーをすればそこそこ長い付き合いにもなった美容師さんは驚きつつもすぐに快諾してくださり、施術が始まりました。シャンプー、カラー、カットと時間として2時間ほど。全ての工程が終わり鏡を見ると、なんとそこには小学3年生の頃の私がいました。 私の祖母はもともと美容師で、小学生の頃はずっと祖母に髪を切ってもらっていました。

          髪を20cm切ったら人生変わったかも。(後編)

          髪を20cm切ったら人生変わったかも。(前編)

          現在23歳、人生の大半をロングヘアで過ごしてきました。 特にここ数年は胸に少しかかるくらい、もしくは背中の真ん中より下ほど、とにかく髪の毛を長いまま保っていたのです。理由は別にこれと言ってないのですが、強いていうのなら、中1の夏に髪の毛を短くして前髪を作ったら大失敗したことでしょうか。そこから「私はショートヘア、ボブヘアは似合わない。」そんな呪いを自分にかけてしまったのかもしれません。 しかし、これはあくまできっかけに過ぎず、そこから10年もロングヘアを維持してきたのには単

          髪を20cm切ったら人生変わったかも。(前編)

          『今こそラジオをもっと楽しもう』

          ここ近年、ラジオを聴く人が増えているようだ。 リモートワークなどで日頃の生活習慣が変わり、BGM代わりに聴くようになった人や、星野源さんやcreepy nutsさんのようなアーティスト、菅田将暉さんのような俳優さんがパーソナリティを務めるようになり聴くようになった人など、様々な人がラジオを聴くようになったと思う。 かくいう私もラジオが好きだ。それも、ヘビーリスナーとして自負している。両親の影響で生まれた時からラジオを聴いて育ってきた。自分が子どもの頃に聞いていた番組として、

          『今こそラジオをもっと楽しもう』

          夏の色素

          今日、ドラッグストアからの帰り道に、タチアオイが踏切脇に咲いているのを見つけた。踏切の向かいには電車を撮るためにカメラを抱えている人が数人いたものの、タチアオイにカメラ(といっても私のはスマートフォンについているものだが)を向けているのは私だけだった。 タチアオイとは、夏に咲く花らしく、ちょうど今のような汗ばむようになってきた頃にちらほらと咲き始めるようだ。真っ直ぐに伸びた茎から赤やピンクの薄い花びらをつけた花が茎から直接生えたような姿をしている。川辺やちょっとした空き地に

          ノートを綺麗に書く習慣

          ノートをとるのが好きだ。 授業中に書くノート以外にも、会議の議事録やレポートの概要なども我ながらうまくまとめられる方だと思う。いつからノートをとるのが好きになり、自分なりの見易いまとめ方ができるようになったのかを思い巡らせたところ、それは小学校にさかのぼる。 小学校3年生か4年生だった頃、校長先生が変わったことで校内は一変した。ノートの取り方から音読の仕方、声のボリュームまで全て校内単位で同じ方法で細かく指導されるようになった。一見すると、子どもを徹底管理しているようで悪く

          ノートを綺麗に書く習慣

          あの頃の「私だけの秘密」

          小学校の頃から、国語の授業中に隠れて巻末の小説を読むのが好きだった。 国語の教科書には実に多くの読み物が収録されている。さらに、それらはすべてその年の児童・生徒に向けた本の1番良い部分を抜粋しているため、どれも読み応えがある。しかし、収録されているすべての小説や評論を授業で取り扱うわけにはいかない。1年間の授業スケジュールには限界があるため、「ごんぎつね」や「少年の日の思い出」のような有名な作品のみを取り扱うようになってしまう。今思うと非常に勿体無い話なのだが、これは仕方が

          あの頃の「私だけの秘密」

          欲張りとクリームソーダ

          クリームソーダは魔法の飲み物なのかもしれない。 クリームソーダとはメロンソーダの上にバニラアイスを乗せた飲み物である。よくファミレスのお子様ランチなどにセットで付いてきたのを覚えている人もいるのではないだろうか。近年、これが妙にブームらしく、インスタグラムやツイッターではレトロな喫茶店の綺麗なメロンソーダの写真をよく見かける。 クリームソーダの姿やここでの簡単な説明を見て「自宅でも簡単に作れそう」と思った方もおられるのではないだろうか。実際その通りで、グラスにメロンソーダ

          欲張りとクリームソーダ

          ぺこぱが売れると確信した瞬間

          2019年のM-1グランプリは歴代最高といっても過言ではないくらい、素晴らしいものだった。この大会がテレビ番組やお笑いに与えた影響はとても大きいだろう。 ぺこぱ、という漫才コンビを知っているだろうか。彼らは2019年のM-1グランプリで3位という輝かしい結果を残して以来、2020年に大ブレイクを果たした。「ノリツッコまない、優しい笑い」を代名詞に多くの人の支持を受けている。ツッコミ担当の松陰寺太勇は全てのツッコミを否定しない「肯定ワード」を武器に、ボケ担当のしゅうぺいは何と

          ぺこぱが売れると確信した瞬間

          結論は必要なのか

          noteへの投稿を始めて1ヶ月近くが経った。 最初の方は自分の生活についてや経験についてなど、スラスラと何の問題もなく毎日書き綴っていた。 だがしかし、だんだんと書き続けるうちに自分の中で一つの疑問、というよりも悩みが湧き出てきた。 それが、タイトルにもあるように「noteに結論は必要か」ということである。noteという場で、素人ながらにも他人に自分の書いた文章を見てもらうのなら何か結論、つまり主張が必要なのではないかと思うようになった。 主張を見つける、または自分で抱

          トキメキの粉をふりかけて

          ここ最近、メイクをする日が続いた。 美容院へ行ったり、卒業袴の前撮りをしたり、人とテレビ電話をしたりとで毎日ヘアセットからメイクからファッションまでと、自分を着飾っていた。 これだけ見れば「毎日って大変そう」「どうせマスクするのに面倒じゃない?」などと思われる方もいるだろうが、これがまた楽しいのである。 3ヶ月ぶりに行った美容院では髪の毛を染めなおし、伸ばしきってパサパサな毛先を3センチほど切り揃えてもらい、新しく前髪を作ってもらった。前撮りの際にはきらびやかな袴とキュ

          トキメキの粉をふりかけて