トキメキの粉をふりかけて

ここ最近、メイクをする日が続いた。

美容院へ行ったり、卒業袴の前撮りをしたり、人とテレビ電話をしたりとで毎日ヘアセットからメイクからファッションまでと、自分を着飾っていた。

これだけ見れば「毎日って大変そう」「どうせマスクするのに面倒じゃない?」などと思われる方もいるだろうが、これがまた楽しいのである。

3ヶ月ぶりに行った美容院では髪の毛を染めなおし、伸ばしきってパサパサな毛先を3センチほど切り揃えてもらい、新しく前髪を作ってもらった。前撮りの際にはきらびやかな袴とキュッとまとめられた髪にくるくるの後れ毛、そして色とりどりのヘアパーツをさしてもらった。化粧に至ってはその日の自分に合うように毎日肌を整え、目の周りや頬、唇にお気に位入りの色をのせ、テンションを上げるおまじないとしてビューラーとマスカラでまつげを目一杯持ち上げた。

こんなことを連日していて実感したが、おしゃれはいつだって自分にトキメキの粉をふりかけてくれるのである。

いつもよりまつげが上に持ち上がっている目元、グロスを塗ってぷるぷると光る唇、新しく揃えた前髪を指で整えた姿、それらが鏡に映った時、自分がキラキラとした粉を浴びたかのように輝いて見えるのだ。そしてそんな時には決まって、口角をキュッと上げ、鏡に微笑んでみたくなる。

今まで私のおしゃれは、他人からの目や評価といった外野から出される攻撃から自分を守るためになされるものだった。

だが、ここ最近は自分が好きな自分に、鏡を介して出会いたくておしゃれをするようになった。言わば、自分で自分を奮い立たせる、自分にトキメキの粉をふりかける、そんな心地でおしゃれをするようになった。

別に女優のように美人じゃなくたって、モデルのように細くなくたって私はいつだって自分を愛することができる。私にはおしゃれという「トキメキの粉」をふりかける手段があるからだ。

この先どんなに傷つこうが、落ち込もうが、私はきっと大丈夫。

そんな時には肌を整えて、目や唇、頬をいろどり、まつげをあげてみよう。

そうすれば、鏡を見た時そこには私の好きな私がいるから。

おしゃれがこの世にある限り、着飾る自由がこの世に存在する限り、私はきっと大丈夫。



ぼんやりとした不安を抱きがちな自分に向けて

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