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髪を20cm切ったら人生変わったかも。(後編)

そうこう言っている間に、髪を切る日がやってきました。
自分で決めたこととはいえ、ここまで伸ばした髪との別れは妙に寂しく、最後に写真を撮って美容院に行きました。
オーダーをすればそこそこ長い付き合いにもなった美容師さんは驚きつつもすぐに快諾してくださり、施術が始まりました。シャンプー、カラー、カットと時間として2時間ほど。全ての工程が終わり鏡を見ると、なんとそこには小学3年生の頃の私がいました。

私の祖母はもともと美容師で、小学生の頃はずっと祖母に髪を切ってもらっていました。その頃によく切ってもらっていたおかっぱに近い、そんな懐かしさをはらむ髪型になった自分を垣間見、思わず懐かしさが込み上げ、感慨深さに浸りました。そして、今まで拒んでいた時間が無駄に思えるほどしっくり来る髪型に驚きました。改めて、美容師さんは魔法使いのような仕事だと実感しました。

新しい髪型は色んな人から好評でした。でも1番気に入っていたのは間違い無く私自身です。今まで、「女の子らしくいなきゃ」「男ウケする格好が良いよね?」と自分への視線を他人軸で考えていたのが「私は何が好き?」「私は何を考えている?」と、自分軸で考えることができるようになっていったのです。小花柄のフリルがついたワンピースも、フレアのふわりと広がるスカートも、カツカツと軽やかな音を立てるハイヒールも、そして何よりふわふわの長く茶色い髪の毛も、全部、全部、好きでした。しかし、その一方で髪の毛、という「女」を無意識にでも社会的に主張するパーツが無くなると、今までが嘘のように頭も心も軽くなったのです。

今まであんなに欲しいと思っていた彼氏が欲しいと思うこともなくなり、友人の惚気話も遠い御伽話のように聞けるようになり、そこで「自分」という人間の確立を実感しました。あんなに「男性から異性として好かれない自分」をコンプレックスに思っていた私が、今や自分を好きになって今度はどう着飾ってあげようかと今までとはまた違った方向でおしゃれを楽しめるようになりました。

髪の毛を切って、社会的な地位を得た、巨額の富を得た、そんな大きな変化はありません。でも、祖母との大切な思い出を心に包み込むことができ、自分を愛することができるようになりました。いつしか不安も少しずつ薄れた気がします。何を言われようと、どう思われようと、私は私なのだと、短くなった襟足をさわれば強くいられます。

髪の毛を切って、そして同時に過去を切る事で、私の人生は変わりました。
新しくシンプルに、実直に、煩悩を捨て、目の前のものに集中して、新しい自分と向き合いこれからの道を生きていきたいと思います。

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