ウクライナのゼレンスキー大統領に国会演説で言ってほしいこと

ウクライナのゼレンスキー大統領が、米国議会で行った演説の中で、真珠湾攻撃とアメリカ同時多発テロ9.11を引き合いに出したことが、少々物議を醸した。

ゼレンスキー大統領は、自国が戦時下で、気持ちが高揚しているので、さまざまなところに配慮する余裕がないという側面はあったもしれない。

ゼレンスキー氏の演説の文脈を捉えると、空から攻撃される恐ろしさを語るのに、アメリカで過去に起きた空爆の例として、リメンバーパールハーバーと9.11を取り上げたのだと推測される。
だが、彼が無差別テロの9.11と軍事基地をねらった真珠湾攻撃と同列に語ったとして、それが気に食わないと考える日本人もいるらしい。

ジャーナリストの鳥越俊太郎氏も、なぜか、ゼレンスキー大統領の国会演説に猛反対している。真珠湾攻撃発言に対していきり立ったわけではなく、彼は紛争当事国に関わるなという立場らしい。
しかし、ゼレンスキー大統領の受け入れるかどうかは、国民の代表である国会議員が決めることだろう。
立憲民主党は当初、難色を示したように見えたが、結局は自民党と協議し、ゼレンスキー大統領の国会演説の打診を受け入れたようで、3月23日に開催されるという報道があった。

そこで、日本国民は、ゼレンスキー大統領に何を言ってほしいと願っているかが少し気になる。

無論、ゼレンスキー大統領は、国会演説を通し、日本国民に対してもウクライナへの援助を求めようとしているのだろう。

ゼレンスキー大統領がウクライナ人を代表して日本の国会議員や日本人に対して支援を呼びかける場であり、日本人がゼレンスキー大統領に何らかの発言を期待するのもおかしな話かもしれない。

しかし、日本は鎖国を何百年と続けてきた国であり、島国ということもあり、外部からの何らかの強い影響がないと、内部からだけでは、なかなか変わりにくい側面があるように思う。

国力を考えれば、ウクライナより日本のほうが優位に立っているので、平時であればウクライナの首脳の声はそれほど響かない可能性はあるが、今は有事である。
ゼレンスキー大統領は、アメリカなどから国外脱出を勧められながらも、ウクライナの首都キエフにとどまり、ロシア軍と戦う強い意思を示した。
命を賭けて国を守り抜こうとするトップが発する言葉は重い。

ゼレンスキー大統領は、ドイツの議会でも、ドイツが経済を優先し、ロシアから天然ガスを輸入するなど、ドイツがウクライナの安全よりも経済を優先させたことを批判した。

国内の事情もあるのでドイツだけを責めるわけにもいかないかもしれないが、ロシアは事実上プーチン大統領の独裁国家である。
独裁国家は戦争を起こしやすい。そのような国家が戦争に突入し、他国に制裁を加えるとなった場合、資源を断ち切ろうとするのは容易に想像できる。

地理的に近いヨーロッパと比べると、日本とウクライナは、これまでさほど強い結びつきはなかった。ドイツ議会に向けたような不満は日本にはないかもしれない。
が、核兵器を保有したり、NATO等と核共有をしていないという点において、ウクライナと日本は共通点がある。
かつてウクライナは核保有国であったが、ある条件を前提に核を放棄した。

>ウクライナに対し、核不拡散条約(NPT)への加盟と、核兵器の撤去が求められた。
その条件として、「領土保全、政治的独立」に対する安全保障を3か国(米、英、ロ)が提供することで合意された。
これが「ブタペスト覚書」(1994.12.5)である。

核があれば、ウクライナは「絶対」と言っていいほど、ロシアに武力侵攻を受けることはなかっただろう。
ロシアは核保有国なので、アメリカもNATO加盟国も、うかつに手を出せない。
それがわかっているからこそ、プーチンはウクライナ侵攻を決めたのだろう。
北京五輪が終わったタイミングでウクライナに侵攻することは、彼の頭の中にシナリオとして描かれていたはずだ。

そこで、同じ核を持たない国同士として、

「日本は核を保有するか、核共有(核シェアリング)をしましょう」

とゼレンスキー大統領に言っていただきたい。

もしかすると、ゼレンスキー大統領は、事前に政府や岸田首相と擦り合せを行い、そこで言ってほしくないリストを、岸田首相から渡され、言いたいことも言えない状態になるのかもしれない。

岸田首相は、非核三原則があるから、核共有の議論すら認めないと、目下、言論封殺に近いことをしているところなので、核については触れさせないかもしれない。

また、真珠湾攻撃については、太平洋戦争開始前の日本の立場を先方に伝えている可能性はあるが、国会演説ではそのことには一切触れないように、と釘を刺しているかもしれない。

「真珠湾攻撃については私の誤解がありまして…」とひとことあれば、わだかまりがあった日本人の心も少しはなだめられるかもしれないが、このような形でパールハーバーに触れれば、アメリカの心証が悪くなるとも考えられる。

ウクライナも最大の援助国の気持ちは忖度せざるを得ない。

一方で、ゼレンスキー氏に実際に演説をしてもらわないと、何が出てくるかはわからない。

核保有各共有の他は、これだ。

「日本もドイツのように防衛費2%超の増強や、タブーとなっている武器供与に取り組んでほしい」

「日本には、ロシアに対してもっと強力な経済制裁をしてほしい。あなたたちは、日露戦争でロシアに勝ったではないか!当時のアジアの国力と軍事力で列強であるロシアを打ち負かしたのは素晴らしい。バルチック艦隊を打ち破った東郷平八郎は素晴らしい」

ゼレンスキー大統領には、これぐらいガツンと日本の国会議員や政府に向けて言ってほしい。

前述したように、真珠湾攻撃に触れれば、アメリカ人の気持ちを逆撫でしかねないので、真珠湾攻撃云々については言及しない可能性がある。
しかし、先の戦争が日本が受けた空爆については触れていただきたい。

最も強烈なのが、広島・長崎への原爆投下だが、他にも東京大空襲など、日本は酷い空襲をたびたび受けた。

日本が、二度とこのような甚大な戦争被害を受けないようにするために、やらなければならないことは明々白々だ。

「非核三原則で自分で自分の首を締めず今こそ核を持ちましょう」

他国の大統領に言われるのは情けないところもあるだろうが、ゼレンスキー大統領には、今の日本に必要な危機感を喚起する熱いメッセージを送っていただくことを期待する。

核の威力の前で人間は無力であるが、彼の言葉は今、世界中で最も強いパワーを放つものとなっている。


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