薄楽句集 - 季語｜薄楽俊

白球に割れ散る空や夏は来ぬ

夕立や中島敦を読んでいる

ビールてふ苦きものあり反抗期

思いのみ雲のごとく湧き字余りの夏

蜜豆やちょっぴり好きだったかも君のこと
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中年を紫陽花坂と名付けたり

文来たる逢瀬の帯は夏あざみ

葛餅は鯨の脳のごとく蒼やぎて

置き去りは前世からなのと白日傘

口触るるそれから花はたちばなに
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あたたかやゆっくりとあゆむによき道

ひかりはじかれて三月がながれをり

春雷のしてあるひとのそばにいて

シュレッダーに書類そそぐやわが早春賦

悔い改めもせずに終点春津和野
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　　ふたりして揺れてコスモス陽のなかに

　　うつくしき夜となり囓りかけの林檎

　　壜に投げ挿す一輪夜の曼珠沙華

　　秋風に独りを拾うふたりかな

　　胸の蛍を放つ四畳半冬隣
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白妙の君が咲く新緑無人駅

激辛の恋の薄暑となりにけり

危うき五月赤き口紅赤き旗

アイスコーヒー明日なき恋を議論して

うそをつきにゆく男　ひるがおのみち
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妻孕む二階のまどを春の雲

湾みゆるほどの高さや花城址

君がいて庭ひと坪の菫かな

海凪にして城下は花の雲

ちょっと幸せ朝摘みのレタスみたいな
#俳句連作

うすらひがうすわらひしてきえてゆく

三月や別れたてのふたりに雨

この花も君も見納めそれでいい

春風駘蕩妻は臨月京みやげ

西向きに乳房のたりと春の海

行く春や妻が突然笑い出す
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マリリンやシャネルの広告春霞

さらさらと韻踏む君の舌の春

愛憎は円周率のごとし四月のばか

レコードのほこりはらいて三鬼の忌

参考書にさよならをいう鳥雲に
#俳句連作