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詩の箱

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好き勝手に書いた詩を放りこむ箱
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かげろう

かげろう

夜を眺めていたらそのうち朝になり
今度は胎児のように丸まって
うとうとしたまま夜を待つ

熱が引かない夕方に少し外に出たら
薄い綿あめみたいな雲が広がってて
もう一日が終わるよと告げられた

誰とも足並みが揃わない影は
誰かの光を生む送電線をたどりながら
涼しく寝られる場所へゆっくり帰る

茫漠

茫漠

何かが終わるのは突然で。
見えない力が少しずつ少しずつ集まって、抑えきれなくなって、支えきれなくなって、爆ぜ、崩れる。
望んでいなくても、求めていなくても。
消えるべくして消えたのか。
流れ着く先は決まっていたのか。
わからないまま、漂う。

小雨散歩

小雨散歩

雨に濡れた草木が醸し出す青臭くも何度も嗅ぎたくなる独特の匂い

ゆっくりと近づいてくるベッドライトに目を細め、まつ毛についた雨粒が作り出す半透明な丸い光を通して世界を見る

湿ったTシャツをそっと掴んで、指先に感じる心地良い冷たさを何度も確かめた

いつかふたりで分かち合えたら

詩_1211

詩_1211

真っ青にひろがる空に
群れからはぐれた
真っ黒なカラスが一羽
なんだか優雅に飛んでた

灰色のコンクリートの路面に
ねじれたまま溶け込んだ
銀色に輝くプルトップが
窮屈そうに固まってた

白とも黄色とも言える太陽に
季節が変わり落っこちた
茶色に染まった枯れ葉が
照らされ光って揺れてた

透明になりたい僕は一人
ただゆっくり歩き続けてる

詩_1204

詩_1204

自分を自分として
認めてあげられたらきっと
世界ともう少し
仲良くできる気がする

無視してきた分だけ
自分が許してくれるなら
都合が良すぎるのは
分かってるけど

誰かに 何かになりたいとか
その前に自分になること
なんで選べなかったの

まだ間に合いますか
向き合ってくれてますか
今更 ですか?

詩_1203

詩_1203

何をやっても
うまくいかない
そんな時は
決まって眠れない
不安の種をばら撒いて
養分を与えて
発芽を待ってる
望んでないのに

呼吸は浅くて
鼓動は不規則で
眠気はあるのに
やっぱり眠れない
不安の芽を刈り取らず
養分を与えて
開花を待ってる
望んでないのに

そうやって少しずつ
不安は循環しながら
どんどん育ちつづけて
やがて大きな森になる
眠れぬ森に
戻る道も分からない
迷いの森に
望んでた

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詩_1202_「雲」

詩_1202_「雲」

風上にいるつもりなのに
いつの間にか流されて
きみの街から離れてく

ぼくがいなくなったら
あたたかい光が降り注ぐ
きっとこれでいいんだね

ぼくがいたら大粒の雨で
きみを濡らしてしまうから
きっとこれでいいんだね

だけど

涙を隠したい日だってある
青いだけじゃ味気ない
そんな日だってきっとある

海を見たら思い出して
そしたらすぐに会いに行く
きみがいるならどこへでも

呼んでくれたらいつだ

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詩_1201

詩_1201

うつろな目にも
涙はたまり
太陽の光を
反射してきらめく
そうだ
世界の絶景の
ひとつにしよう
誰も見ることが
できない
絶景に

言葉にできない
悲しみが
星のない夜に
飲まれて消える
もっと
世界の美しさを
言葉で伝えたい
誰が聞いても
想像できる
美しさを

詩_1130_「微細」

詩_1130_「微細」

さっきからノートパソコンに手を置いて
伝わるあたたかさと微かな振動を感じている
今日は何も書かないってのもいいかも
外はまだ雨降ってるし眠たくもなってきたし

美しい言葉を見つけて並べるのは楽しい
なんだか花屋さんの前にいるような気になる
でも道端のたんぽぽや河川敷のススキに
わけもなく心が動かされたりするのも好き

ノートパソコンから離れてタバコに火をつける
口に咥えて息を吸うと先っぽは小さな太

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詩_1129_「心臓」

詩_1129_「心臓」

心臓が軽快にドラムを叩いてる
たまに組み立てのバンドみたいに
ちぐはぐなリズムになったり
客席にダイブするように
力強くはじけたり忙しい

そんな心臓のことを静かに
見つからないように隠れて見てる
たまに飽きて眠っちゃうけど
起きてもずっとドラムを叩いてる
朝はけっこうスローペース

観客は僕ひとりなのに
しかもバレないように見てるのに
ほとんど聞いてないときもあるのに
拍手もしてあげたことないの

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詩_1128_「門+开」

詩_1128_「門+开」

スイッチひとつで
朝と夜を変えられるなら
ぼくはきっと毎日
一瞬だけ光が射し込む
極夜に住む

おまえ病んでるな
って言われたら
まぶしすぎて
咳が止まらない
って言う

数十兆個の
生きたい細胞たちが
たった一個の
見えない心に
どうして勝てないの

大の字に寝れる
切り株で
大の字に寝たら
背中が濡れたから
人魚を呼ぼう

蛍光グリーンのパッケージに
ギターの弦が
入っているらしいけど
開けて

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詩_1126_「不可視」

詩_1126_「不可視」

望遠鏡を覗いたら
月の表面はっきり見えた

隣で空を見上げてる
君の横顔は笑顔だった

望遠鏡を覗いても
月の裏側は見えなかった

隣で空を見上げてる
君の心は見えなかった

熱いカップから湯気が立ち
まるで雲のように広がる

注いだばかりのコーヒーは
夜空のように真っ黒い

輝く月の表面と
君の笑顔はよく見えて

遠い月の裏側と
君の心は謎を残したまま

口に含んだコーヒーは
いつもより少し苦か

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詩_1124_「仮面」

詩_1124_「仮面」

仮面が多いと
言われたけど
それが武器と
言われたけど

生きるために
必要なだけで
仮面を重ねた
息がしにくい

生きづらいと
言えないから
仮面をかぶせ
そっと隠した

詩_1123_「殻」

詩_1123_「殻」

年を重ねてたいそう頑丈に作られた殻
そのなかに閉じこもった自分がいる

何を思っているのか、何を考えているのか
何を望んでいるのか、何を欲しているのか

分からない

どう声をかけたらいいのかも

分からない

何を怖いと思うのか、何を不安に思うのか
何を辛いと思うのか、何を壁だと思うのか

分からない

どう理解すればいいのかも

分からない

ただ自分を知りたいだけなのに

周りのことを知ろう

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