転職先で頭角を現す人の特徴
中途入社でわずか数か月で一目置かれる存在になる人がいます。年齢、職歴関係なく、皆さんの周囲にもそうした人がいるかと思います。
「自分の方が在籍期間が長く、実務の知識や経験も豊富なのになぜ中途入社の人があれよあれよという間にポジションを上げていくのか。」そのことについてなぜだろうと不思議に思ったことはないでしょうか。
結論から言ってしまうと、短期間で頭角を現す人とは組織運営のツボを押さえているのです。
では、組織運営のツボとはなんでしょうか。それは売上作り、人材育成の仕組み、無駄のない業務オペレーション、経営理念の浸透具合の4点においてどれだけ精度が高いかどうかです。
この会社は具体的に何ができていて、できていないのかを短期間で見抜き、その課題に対して複数の打ち手を提案できる人はあっという間に一目置かれる存在になります。
頭角を現す人が観察していること
では頭角を現す人は転職した先の会社をどのように観察し、どんな行動を取っているのでしょうか。
先ずは郷に行っては郷に従えですから同僚、上司からその会社で行っている業務、やり方、ルールを全体的に把握することから始めます。
聞かれてもないのに、「前にいた会社ではこうやっていた」といったことは言わないことが大事です。周囲の人たちは他者と比較されたうえ、自分たちが劣っていると言われてるように感じるからです。
余計なことを言うとそれだけで周囲に敵を作りますから素直にあるがままを一旦は受け止めるのが賢明です。
次に、人間関係の観察です。誰が実質的に権限を握っているのかを知り、その人の周囲には活気があるのかどうか、会社に対する不平不満を口にしていないかどうか、そして社内全体の雰囲気、これらを入社数日で把握します。
面接官が社長や人事担当、もしくは部門責任者のいずれであっても表面的な耳障りのいいことや仕事内容を事務的に話すだけでしょうから改めて自分の目と耳で確認をします。乖離が大きければ、それがその会社の課題である訳です。
売上を作っているプロセスはどうか。例えば、売上の大半を一社の取引先に依存しているような会社はリスクが大きいです。何かの拍子に取引中止になればあっという間に立ち行かなくなります。またその状況にあるのは裏を返せばマーケティング機能もなく営業ができないことでもあるので重大な課題です。逆にマーケティングができていてもノルマが厳し過ぎて営業担当が疲弊しているのも大きな課題です。
新入社員としてさまざまなことを教わる際にマニュアル類、ルール集が全くなく、質問する相手によって微妙に回答が異なるようなら、業務の標準化がなされてなく、属人的に仕事をし、効率も悪く、ミスも多いことが予想されます。業務ですら教える環境が整備されてないなら人材育成の機会などあるはずもありません。もちろんそのような会社には機能している評価制度もないでしょう。
会社のホームページや会社案内には立派な経営理念が謳われていても具体的な行動規範も指針もなく、社長が抽象的な精神論で自己満足で終わっているのであれば社員が一体感を持って仕事に向き合っているとは言えない状況でしょう。
ここまで読まれて、なんだアラ探しかと思われるかもしれませんがこれは立派な観察です。アラ探しなら誰でもできますが、頭角を現す人かどうかの違いはここから先です。
頭角を現す人は何に注意しているのか
課題を感じ取ってもいきなり社長に直談判などはもちろんしません。社内に蔓延る課題は社長含めてその会社にいる人たちがすでに感じ取っていることです。入社して日が浅い者が正論を吐いたところで誰も耳を傾けてくれません。
先ずは自分に与えられた業務、役割を期待以上にこなすこと。これに尽きます。日々の仕事を十分にこなすことなく周囲から信頼を得ることはできません。新しい職場の環境やルールに慣れず、すぐさま圧倒的な成果を出すことはできない場合にはしばらくは辛抱の期間が必要となりますが、頭角を現す人はそんな時間すら楽しむことが出来ます。
そして、期待以上の仕事ができるようになってはじめて適切な上長に相談という形で提案します。この段階であらかた人間関係も把握できているでしょうから癖の強い「俺は聞いていない」と臍を曲げる人物にも根回しができていると思います。
例えば、社員教育に課題を感じていて、マニュアル類が全くないようなら自分に作らせてもらえないかといった提案。マニュアル作りなど誰もやりたがらない業務ですし、新人だからこそ最新のルールに基づいて作れますから比較的すんなりその提案は通るかもしれません。
営業マンなら営業プロセスで潜在的失注をしている、機会損失をしている仮説を立てて検証対策をアイデアとして提案してみる、などです。
要は今まで誰も手をつけず放置されてきた課題を上長、同僚のメンツも潰さずに自ら引き受けてしまう訳ですが、ここではあくまで皆のためになることを積極的に引き受けたいというスタンスが大切です。
入社してすぐに社内の味方や理解者もいない状況で会社の大改革のようなことを一人で始めたら総スカンを受けます。
そうならないように周囲に気を配りながら、小さな取り組みを少しずつ積み上げていくことで、困りごとが起きるたびに彼なら気持ちよく引き受けてくれるだろうという周囲の期待や信頼、評価に繋がっていきます。
もちろん、安請け合いはよくありませんし、自分の本来の役割を放棄してやるのではなく、自分の仕事をしっかりやり切ったうえでのプラスアルファなので本人には相応の負荷はかかります。
ただ頭角を現す人はそんな一時的な負荷など苦にはしません。
逆に、社歴が長く、自らの専門性に自負があっても一段階上のステージで仕事ができない人はその状況をあえて選択しているか、目線が低いか、一段階上に行く方法を知らないだけです。
頭角を現す人はどんなマインドの持ち主なのか
誤解がないよう申し添えると、必ずしも頭角を現す人=野心家ではありません。誰もやらないなら自分が手を挙げる。何かの縁で働くことになった職場なら陰で不満を漏らすより、今よりずっと良い職場になって欲しいと誰よりも強く願い、行動する人。それが頭角を現す人の資質とも言えるでしょう。違う言い方をすれば調和、利他の人です。
ただ、もちろん全てが上手くいくとは限りません。正しいと思われる取り組みであっても抵抗する人、足を引っ張る人、社内のリソースが足りなさ過ぎて頓挫することもあるでしょう。それゆえ、メンタル的には楽観的でタフである傾向が強いと思います。
前職で培った圧倒的な知識、経験を披露することで目立つタイプの人も世の中にはいますが、妬まれやすく敵を作りがちな傾向にあります。短期的には上長の覚えが良くても、案外こういうタイプの人は我が強く、気遣いができずに他人と衝突したりするものですから、能力が多少高くても自己顕示欲が強いタイプだといずれ社内で浮いた存在になるでしょう。
頭角を現す人は別の角度から考えればしたたかな一面もあるかもしれませんが、正論を述べるだけでは人は動かないことも熟知しているのでいわば静かな戦略を用いることに長けているとも言えます。
人間は感情の生き物ですから、直線的な行動ばかりでは求めたい成果は出しづらいものです。迂遠なように見えて、最短の道を歩む人、それが頭角を現す人の最大の特徴と言えるかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございます。