三上喜孝

本と映画と音楽についての過去・現在・未来。書ける範囲のことを書いていきます。

三上喜孝

本と映画と音楽についての過去・現在・未来。書ける範囲のことを書いていきます。

マガジン

  • オトジェニック

    音楽をめぐるあれこれ。

  • 忘れ得ぬ人々

    「ふとしたとき、どうしているのかな?と気になってしまう。自分の中に爪跡を残している。でも、連絡をとったり会おうとは思わない。そんな、あなたの「忘れ得ぬ人」を送ってもらっています」 という、TBSラジオ「東京ポッド許可局」のコーナー「忘れ得ぬ人々」にヒントを得て書いています。

  • 回想

    本から連想した思い出話。

  • いつか観た映画

    映画をめぐる回想。

  • 妄想

    1冊の本から広がる妄想

記事一覧

読書メモ・pha『パーティーが終わって、中年が始まる』(幻冬舎、2024年)

東北地方のある都市の、駅前にあるミスタードーナツで、たまたま隣の席で話していた若者が紹介していた本。 理想の読書会(その2)・pha『パーティーが終わって、中年が始…

三上喜孝
20時間前
2

読書メモ・村井邦彦『音楽を信じる We believe in music!』(日本経済新聞出版、2024年)

この本は、水道橋博士さんの『本業2024』を買うために立ち寄った八重洲ブックセンター阿佐ヶ谷店で見つけて、合わせて入手した。 村井邦彦という名前を最初に認識したのは…

三上喜孝
1日前
1

オトジェニック・THE ALFEE『夢幻の果てに』(1995年)

4年くらい前(2020年)だったか、インターネットに掲載されていた武田砂鉄さんの「ワダアキ考」という連載に、 「THE ALFEEの話をすると場が和む」 というタイトルのエッセ…

三上喜孝
2日前
4

忘れ得ぬ人々・第14回「懐かしい名前」

Facebookに「知り合いかも」という表示が出てくることがあるでしょう?そこに懐かしい名前を見つけた。その名前を見たとたん、思い出がよみがえってきた。 東日本大震災の…

三上喜孝
3日前
1

回想・手塚治虫『ゴッドファーザーの息子』(初出1973年)

手塚治虫の短編漫画「ゴッドファーザーの息子」を読んでいたら、自分の中学時代のことを思い出した。 私の中学時代は、「校内暴力」などという言葉が流行っていた時代で、…

三上喜孝
4日前
2

回想・中村雅俊「ふれあい」

中学時代の思い出を語ろうか。 中学校1年のときに、クラス対抗の合唱コンクールがあった。 A組からF組までの6クラスが、それぞれ合唱曲を選んで、それを体育館で全校生…

三上喜孝
5日前
1

展示瞥見・『川瀬巴水 旅と郷愁の風景』(山形美術館、2024年)

川瀬巴水(1883~1957)という人物のことをまったく知らなかったのだが、若い友人がこの美術館の学芸員をしているという縁もあり、山形に訪れた折に川瀬巴水についての企画…

三上喜孝
6日前
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忘れ得ぬ人々・第13回「ここはひまわり通り」再会編

忘れ得ぬ人々・第13回「ここはひまわり通り」 以前勤めていた職場の裏通りに、こぢんまりとした洋食屋さんがあった。おじさんシェフがひとりで切り盛りしていて、料理の腕…

三上喜孝
7日前
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理想の読書会(その2)・pha『パーティーが終わって、中年が始まる』(幻冬舎、2024年)

その日は午前11時から会合があったのだが、出張先のホテルを少し早めに出て、近くのミスタードーナツでコーヒーを飲みながら原稿の校正をしていると、隣のテーブル席に若い…

三上喜孝
8日前
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妄想・1960年代前半の黒澤映画

1950年代の黒澤映画には、「七人の侍」「隠し砦の三悪人」などの娯楽活劇の大作があるが、1960年代前半の黒澤映画は、それまでとは趣を異にする。小粒だが、極上の娯楽映画を作…

三上喜孝
9日前
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いつか観た映画・沖田修一監督『さかなのこ』(2022年)

2年ほど前の2022年、当時4歳6か月の娘と二人で、沖田修一監督の『さかなのこ』を観に行った。あとで気づいたのだが、『南極料理人』と同じ監督だったのね。 あらかじめ得た…

三上喜孝
10日前
1

倉敷・千秋座

このnoteで水道橋博士さんの『藝人春秋Diary』と『本業2024』のことを書いたら、ご本人が読んでくださり、X(旧Twitter)で取りあげてくださった。もともと自分の興味の赴く…

三上喜孝
11日前
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いつか観た映画・『セデック・バレ』(ウェイ・ダーション監督、台湾、2011年、日本公開2013年)

映画『セデック・バレ』は、日本統治下の台湾で1930年に起こった、先住民族の抗日武装蜂起である「霧社事件」をテーマに、台湾の原住民(台湾では「先住民」ではなく「原住…

三上喜孝
12日前
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忘れ得ぬ人々・第13回「ここはひまわり通り」

以前勤めていた職場の裏通りに、こぢんまりとした洋食屋さんがあった。おじさんシェフがひとりで切り盛りしていて、料理の腕はたしかだし、値段も手頃だった。同僚たちは誘…

三上喜孝
13日前
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お疲れさま、と声をかけたかった

2024年7月7日(日)は、七夕であると同時に、東京都知事選挙の投票日だった。 前日の7月6日(土)の夜、出張から帰ってきて地元の最寄りの駅の改札を出て駅ビルを抜けると、ひ…

三上喜孝
2週間前
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回想・笹山敬輔『笑いの正解 東京喜劇と伊東四朗』(文藝春秋、2024年)

正直に告白すると、…というほど大げさなことではないのだが、子どもの頃は、ドリフターズやひょうきん族よりも、伊東四朗さんと小松政夫さんのコンビが好きだった。土曜の…

三上喜孝
2週間前
4
読書メモ・pha『パーティーが終わって、中年が始まる』(幻冬舎、2024年)

読書メモ・pha『パーティーが終わって、中年が始まる』(幻冬舎、2024年)

東北地方のある都市の、駅前にあるミスタードーナツで、たまたま隣の席で話していた若者が紹介していた本。

理想の読書会(その2)・pha『パーティーが終わって、中年が始まる』(幻冬舎、2024年)|三上喜孝 (note.com)

「書店員」を称する30歳の若者が、読書体験のない若者に対してこの本のプレゼンをしているのを聞き、なぜか私の方が感化されてしまい、読んでみることにした。
こんな書き方は上か

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読書メモ・村井邦彦『音楽を信じる We believe in music!』(日本経済新聞出版、2024年)

読書メモ・村井邦彦『音楽を信じる We believe in music!』(日本経済新聞出版、2024年)

この本は、水道橋博士さんの『本業2024』を買うために立ち寄った八重洲ブックセンター阿佐ヶ谷店で見つけて、合わせて入手した。
村井邦彦という名前を最初に認識したのは、子どもの頃、市川崑監督の映画『悪魔の手毬唄』を観たときだったと思う。『犬神家の一族』では『ルパン三世』でおなじみの大野雄二さんが音楽を担当されていたのでなじみ深かったが、その次の『悪魔の手毬唄』の音楽を担当したのが村井邦彦さんだった。

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オトジェニック・THE ALFEE『夢幻の果てに』(1995年)

オトジェニック・THE ALFEE『夢幻の果てに』(1995年)

4年くらい前(2020年)だったか、インターネットに掲載されていた武田砂鉄さんの「ワダアキ考」という連載に、
「THE ALFEEの話をすると場が和む」
というタイトルのエッセイがあり、惹かれた。曰く、

「皆さん薄々勘付いているとは思うが、THE ALFEEの話をすると、その場が和み、にこやかになる。どんなアーティストでも、そのファン同士が語り合えばにこやかになるに決まっているが、THE ALF

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忘れ得ぬ人々・第14回「懐かしい名前」

Facebookに「知り合いかも」という表示が出てくることがあるでしょう?そこに懐かしい名前を見つけた。その名前を見たとたん、思い出がよみがえってきた。

東日本大震災の年(2011年)の8月のことである。
当時勤めていた職場の研究室にいると、お昼過ぎ、携帯電話が鳴った。
「2004年に卒業したSといいます。覚えていらっしゃいますでしょうか」
「おぅ!S君。覚えてるよ」
「実はいま、生徒たちを連れ

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回想・手塚治虫『ゴッドファーザーの息子』(初出1973年)

回想・手塚治虫『ゴッドファーザーの息子』(初出1973年)

手塚治虫の短編漫画「ゴッドファーザーの息子」を読んでいたら、自分の中学時代のことを思い出した。
私の中学時代は、「校内暴力」などという言葉が流行っていた時代で、私の通っていた中学も、ご多聞にもれず、というより、市内で1,2を争う「荒れた中学校」だった。
各学年に不良グループがいて、「総番」とか「裏番」などというリーダー的存在もいた。
そんな中学で、私は1年生のときから、生徒会役員をつとめることにな

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回想・中村雅俊「ふれあい」

回想・中村雅俊「ふれあい」

中学時代の思い出を語ろうか。

中学校1年のときに、クラス対抗の合唱コンクールがあった。
A組からF組までの6クラスが、それぞれ合唱曲を選んで、それを体育館で全校生徒の前で披露する。どのような審査方法だったかは忘れてしまったが、その中から、優勝を決めるのである。
私のクラスはC組だったが、オーソドックスな合唱曲を選んで、コンクールにのぞんだ。
なぜこんなことを覚えているかというと、このとき私は、ど

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展示瞥見・『川瀬巴水 旅と郷愁の風景』(山形美術館、2024年)

展示瞥見・『川瀬巴水 旅と郷愁の風景』(山形美術館、2024年)

川瀬巴水(1883~1957)という人物のことをまったく知らなかったのだが、若い友人がこの美術館の学芸員をしているという縁もあり、山形に訪れた折に川瀬巴水についての企画展を見に行くことにした。
川瀬巴水は、大正・昭和期に活躍した版画家である。江戸時代に浮世絵という版画が流行したことはよく知られているが、明治時代に入ると次第に衰退していった。だがその衰退を惜しんだ渡邊庄三郎は、みずから版元となり、木

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忘れ得ぬ人々・第13回「ここはひまわり通り」再会編

忘れ得ぬ人々・第13回「ここはひまわり通り」再会編

忘れ得ぬ人々・第13回「ここはひまわり通り」

以前勤めていた職場の裏通りに、こぢんまりとした洋食屋さんがあった。おじさんシェフがひとりで切り盛りしていて、料理の腕はたしかだし、値段も手頃だった。店名は、「ひまわり」の学名に由来した名前だった。この洋食屋さんの近くに「ひまわり」という定食屋さんもあって、私はこの裏通りを勝手に「ひまわり通り」と名づけていた。

今日(2024年7月14日)、以前勤め

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理想の読書会(その2)・pha『パーティーが終わって、中年が始まる』(幻冬舎、2024年)

理想の読書会(その2)・pha『パーティーが終わって、中年が始まる』(幻冬舎、2024年)

その日は午前11時から会合があったのだが、出張先のホテルを少し早めに出て、近くのミスタードーナツでコーヒーを飲みながら原稿の校正をしていると、隣のテーブル席に若い男性が座った。ほどなくしてもう一人の若い男性がその席に座り、二人の会話が始まった。
最初、二人は友人同士なのかなと思って、ふたりの話を聞くとはなしに聞いてみると、お互い敬語を使っている。どうやら初対面のようである。
ふとテーブルを見ると、

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妄想・1960年代前半の黒澤映画

妄想・1960年代前半の黒澤映画

1950年代の黒澤映画には、「七人の侍」「隠し砦の三悪人」などの娯楽活劇の大作があるが、1960年代前半の黒澤映画は、それまでとは趣を異にする。小粒だが、極上の娯楽映画を作り上げるのである。
とくに、黒澤映画で大ヒットしたのは、次の3作品である。
「用心棒」(1961年)
「椿三十郎」(1962年)
「天国と地獄」(1963年)
この3作品に共通する特徴は何か?すごい共通点を発見した。
それは、「

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いつか観た映画・沖田修一監督『さかなのこ』(2022年)

いつか観た映画・沖田修一監督『さかなのこ』(2022年)

2年ほど前の2022年、当時4歳6か月の娘と二人で、沖田修一監督の『さかなのこ』を観に行った。あとで気づいたのだが、『南極料理人』と同じ監督だったのね。
あらかじめ得た情報だと、上映時間が2時間19分もあるということで、4歳の娘は集中力が持つだろうかと心配だったが、娘も私も大好きな『南極料理人』と同じ監督だし、しかも「あまちゃん」がちょうど再放送していた時期で、娘と私は毎日欠かさず観ていたから、き

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倉敷・千秋座

倉敷・千秋座

このnoteで水道橋博士さんの『藝人春秋Diary』と『本業2024』のことを書いたら、ご本人が読んでくださり、X(旧Twitter)で取りあげてくださった。もともと自分の興味の赴くままに書いているだけで、だれに宣伝しているわけでもない文章がご本人に届くというのは、望外の喜びである。
Xのなかで水道橋博士さんが「これが文で交流する友達だ」と書いてくださり、文章を書くことにこだわっている私にとっては

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いつか観た映画・『セデック・バレ』(ウェイ・ダーション監督、台湾、2011年、日本公開2013年)

いつか観た映画・『セデック・バレ』(ウェイ・ダーション監督、台湾、2011年、日本公開2013年)

映画『セデック・バレ』は、日本統治下の台湾で1930年に起こった、先住民族の抗日武装蜂起である「霧社事件」をテーマに、台湾の原住民(台湾では「先住民」ではなく「原住民」という言い方をする)であるセデック族と日本軍との戦闘を描く、4時間半にわたる大長編劇映画である。これまで、霧社事件が映画で取りあげられたことはおそらくなく、私も恥ずかしながらこの映画ではじめて、霧社事件がどういうものかを、具体的に知

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忘れ得ぬ人々・第13回「ここはひまわり通り」

忘れ得ぬ人々・第13回「ここはひまわり通り」

以前勤めていた職場の裏通りに、こぢんまりとした洋食屋さんがあった。おじさんシェフがひとりで切り盛りしていて、料理の腕はたしかだし、値段も手頃だった。同僚たちは誘い合ってランチに通っていたようだったが、私は少し時間をずらしてもっぱらひとりでランチを食べに行った。店名は、「ひまわり」の学名に由来した名前だった。この洋食屋さんの近くに「ひまわり」という定食屋さんもあって、私はこの裏通りを勝手に「ひまわり

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お疲れさま、と声をかけたかった

お疲れさま、と声をかけたかった

2024年7月7日(日)は、七夕であると同時に、東京都知事選挙の投票日だった。
前日の7月6日(土)の夜、出張から帰ってきて地元の最寄りの駅の改札を出て駅ビルを抜けると、ひとりの若い女性がプラカードを持って立っていた。
「ひとり街宣」という言葉を最初に聞いたのは、杉並区長の岸本聡子さんがひとりで街頭に立ち、都知事選挙の投票に行くことへの呼びかけをしていた姿を何かの映像で見た時だったと思う。以前に見

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回想・笹山敬輔『笑いの正解 東京喜劇と伊東四朗』(文藝春秋、2024年)

回想・笹山敬輔『笑いの正解 東京喜劇と伊東四朗』(文藝春秋、2024年)

正直に告白すると、…というほど大げさなことではないのだが、子どもの頃は、ドリフターズやひょうきん族よりも、伊東四朗さんと小松政夫さんのコンビが好きだった。土曜のお昼に放送していたTBSテレビの『笑って!笑って!!60分』とか、月曜の夜に放送していたテレビ朝日の『みごろ!たべごろ!笑いごろ!』は毎週欠かさず見ていた。「電線音頭」も小学生の頃に繰り返し踊っていた。同時期にNHKテレビで日曜の夜に放送さ

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