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追憶

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自分の記憶を頼りに書いたものです。
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久しぶりの近況

ここ最近は、周りにキレ散らかすこともなく穏やかな日々を過ごしています。
思いつきで実家から出て、ひとり暮らしをすることもあり、バタバタとしていて、週末は山に登ることが出来ずにもやもやとしています。
思えば実家には僕がいない時は弟、妹、弟や妹がいない時は僕がいて、なんだかんだ誰かしら、3きょうだいの誰かがいました。
今回、僕がいなくなることで、3きょうだいが完全にいなくなります。
両親の心情を聞いた

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感情は死んでいなかった

感情は死んでいなかった

急な斜面を登っていた。ぼんやりとした頭ですれ違う人にあいさつをする。「ああ、こんなに朝早いのに同じように登っている人がいるんだ」と心の中の誰かと話をする。

前日は雨だった。どろどろの道を靴が汚れないように気をつけて登る。暑いのか汗がとめどなく流れる。山に登るのは久しぶりのことだったということに気付いた。呼吸が荒い。

ベンチがあった。ザックを下ろし、登ってきた方向を見ると、曇り空の中に、晴れ間が

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飲んだくれ

飲んだくれ

月曜日の夜から、飲んだくれている。いつもは適量と言われている量を律義に守っていたが、今日は3~4倍は飲んでいる。飲んでもちょっとやそっとのことでは、悪酔いはしない。

家にいるときほどあまり酔わない気がする。外で飲むときは、よく限界突破してしまう。特に職場の飲み会がそうだった。職場の人達とは、話したいことはあまりないし、あまりないからこそ、それを紛らわすために、頻繁にグラスを口に近づけてしまう。そ

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第八十六景

第八十六景

新聞を読むわけでもなく、パラパラとめくっていると、なにかの問題と答えのページがあった。題に目を向けるとそこには、大学入学共通テストと書いてあって、センター試験の名前が変わったんだっけと頭に浮かんだ。

その日は雪が降っていた。しきたりなのか、この地域の特徴なのか分からないが、例年試験の前日に近くのホテルに前泊するのが恒例になっていた。会場は大学のある隣の市だった。車で1時間あれば、行くことが出来る

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第二十七景 仰向けで天井を見つめる話

第二十七景 仰向けで天井を見つめる話

どこで間違ったんだろう?小学生の時なのか、中学生の時なのか、働き始めてからなのか。最初からなのか。どこで間違ったんだろう?

自分の弱さを認められなくて、自分を偽りながら生きていた時から少しは変われたんだろうか?

変わった気もするし、変わっていない気もする。まだ自分を騙しているような気もする。

むしろ騙し騙ししていかないと生きていける気がしない。本当は何もしたくない。もう生きたくないのかもしれ

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第六十三景

第六十三景

化粧水を手に取って、それを塗ろうと顔に近づけた。指の先から石鹸の匂いに混じって懐かしい匂いが、鼻の中を通っていき、頭の中にある情景が浮かんできた。

忘れていたことを思い出し、冷蔵庫から、にんにくの欠片を手に取り、薄皮を剥いている。つるんと白い表面が見えたところで、それをまな板の上に置き、薄くスライスして、更に長細く切って、みじん切りにした。

熱したフライパンの隣では、沸騰したお湯が鍋の中でぶく

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第六十五景

第六十五景

鉛色の空に飽きた僕達は、隣の県に向かうための車の中にいた。相変わらずぼこぼこの道は、ハンドルを取られ運転することが難儀だ。無事にたどり着けるのか不安な気持ちになりながら、トロトロ走るトラックの後ろを30分は、追走している。途中で買ったブラックコーヒーを飲みながら、暖房で暑くなった車内の空気を入れ替えるため、ウインドウを下げた。外からは、湿った冷たい空気が入り込んできて、気持ちをしゃきっとさせる。ト

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第六十六景

第六十六景

世界が一変した夜から数日後の夜、包丁を持ち、街灯が照らす道と、その明かりから外れた真っ暗な道を交互に歩いていた。存在する全てのものから身を隠したかったし、この世界にまだ留まりたいとも思っていた。梅雨が明けたのか明けていないのかも、よく分からなかったが、じめじめとした空気が漂っている。あてもなくふらふらと歩いていると、他人の住宅の前に差し掛かり、この中にはどんな世界があるのだろうと通り過ぎる。前方に

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第七十四景

第七十四景

大きな駐車場に車を停めようとすると、混雑した通路で誰かとぶつかるかもしれないし、帰りに駐車場から道路に出るときに、手間取ってしまうかもしれない。

そんなことを頭の中で考えながら、車を左折させようと、ハンドルを左に切った。結局、少し歩くことにはなるが、大きな駐車場の近くにある小さな駐車場に車を停めることにした。

隣に座っている薄い黄色のワンピースを着た彼女は、手に持っていた麦わら帽子を頭に乗せ、

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第七十九景

第七十九景

しゃぶしゃぶに行きたい。高いところには行かなくていいから、お腹いっぱい食べたい。大体チェーンだけど、温野菜より、しゃぶ葉よりも、ゆず庵が個人的には好きだ。

肉の質なんてよく分からないけど、柔らかくて一番食べやすい気がする。高いところに行けば、量を食べなくても満たされるのかもしれないが、しゃぶしゃぶはお腹いっぱい食べたいのだ。

ゆず庵はだしが選べるのが良い。どんなものがあったか忘れたけど、薄味の

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