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【ザ・会社改造編17:ミスミ流 生き生きした組織をつくる】

本マガジンのこれまでの投稿は上記リンクに入っています。

本マガジンでは、本noteの最初に出てきた健が登場します。元々工場の課長だった健は本社に異動し、新規事業部長となり2年が経ちました。そして今回、既存事業の関連子会社に社長として出向するようになります。内示は本社副社長の哲也からです。 健の出向する子会社は、近年の中国競合企業による市場の価格破壊からシェアの激減・業績不振が続いているようです。健のミッションはその事業の立て直しと長期的な成長です。そのため出向前に哲也から三枝匡氏の「ザ・会社改造~340人からグローバル1万人企業へ~」解説してもらいます。今回は最終章第8章の「元気な組織をどう設計するか」の解説に入ります。

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🧒‍;おはようございます。

👨‍🦳;おはよう。今日は最終章の8章に入っていく。最後の章ということもあって、組織の在り方、つまりどうやって活発な組織を作っていくかをミスミの組織の歴史に沿って書かれている。

◆過去のミスミの「チーム制組織」

🧒‍;わかりました。ミスミの組織って三枝さんが社長になる前から目立っていたというか、ケーススタディに載っていた気がします。

👨‍🦳;そうそう。1990年代後半から創業者の田口さんは「チーム制」という組織体系を採用していたんだ。第一章で解説した多角化を事業を展開する時に同時に組織体系も変えたんだ。それは画期的な組織で日本企業では今まで行われていないものだった。実際社長になる前に雑誌でそれを読んだ三枝さんは、創業者の先見性に驚きを感じたとも言っている。原理的に三枝さんの考えと似ていたからだそうだ。

🧒‍;なるほど。じゃあミスミは三枝さんから見て良い(元気な)組織だったのでしょうか?

👨‍🦳;いや、そうではなかったそうだ。もちろん掲げたアイデアは良いと思っていたが、実際に社内を社長就任後歩いていると組織に深刻な問題があることに気づいたそうだ。ケースや記事で見た内容とは大きく違っていたんだな。

🧒‍;うーん。確かに実際どうかっていうのは、、難しいですよね・・。この本も同じかもしれませんけど、どうしてもケースや雑誌の内容はサクセスストーリになりがちですからね。でも、そもそも創業者の田口さんがいうチーム制組織はどんなものなのでしょうか?

👨‍🦳;そうだな。まずそこを理解するのは必要だ。ちょっと説明が長いが下記を抜粋する。

1,本社の人事部や営業部、購買部、販促課など、いわゆる機能別組織をすべて廃止し、その役割と責任を各「事業チーム」に付与した。

2,チームリーダーは、年 1回の「ビジョンプレゼン」で立候補した社員のなかから任命される。社員であれば誰でも自由に立候補でき、取締役会で選任される。任期は 1年だ。

3,同じチームリーダーに複数の立候補者が出てきたら「競合プレゼン」になる。上司と部下がポジションを争うこともある。社外役員だったとき三枝はその場面を見たが、まさに下剋上のシーンだった。

4,リーダーは複数のポジションに立候補することができるが、すべてに落選すると社内で行き場所がなくなる。降格か退職のどちらかだ。いずれの事例も現実に起きていた。弱肉強食の世界だと思った。

5,チームリーダーは、チームの社員任用や外部採用、給与決定、業績賞与配分などの人事権を持つ。つまり雇い主になる。

6,有能な社員は複数チームから声がかかる。人によっては交渉で給与が上がったり下がったりする。給与は 1円単位まで社内で公開される。社内で「雇用相場」を形成するのが目的だと聞いた。

7,社員は毎年、異なるチームへの異動を希望することができる。現チームへの再応募も可能だ。人気のあるチームは応募が定員を超え、人気がないと定員割れになる。毎年、約 3割の社員が異動していた。

8,定員割れになったチームは外部採用を行う。リーダーが採否や待遇を自由に決める。

9,一般企業でいう賞与は固定 4カ月分が年俸に含まれている。それに加えて、もしチームの業績が「過去最高利益額」を更新すると、その一部が「利益配分」として支払われる。その利益配分をチーム内でどう分けるかは、リーダーが自分の分け前も含めて決める。ある役員の表現を借りると、《山賊の親分による山分け》みたいな雰囲気もあるらしい。当時、業績の伸びがよければ、利益配分が自分の年俸額を超えることも起きた。

🧒‍;だいぶ厳しくないですか。。。年俸の公開とか社内の居場所がなくなるとか。。。心理的安全性なんて全くないのではないでしょうか?この状態でも心理的安全性確保できるのかな。。いや、それはないだろう・・。

👨‍🦳;ああ、それはさすがに難しいのではないかな。だから、三枝さんも深刻な問題があると感じたんじゃないか。このことが一部上場企業で10年近く続けられていたというのがすごいな。それに、社員に「自由と自己責任」、「市場原理の導入」、「会社はプラットフォームであり、どんな事業を行うかは社員の選択」という概念を日本企業に取り入れようとした理念は尊敬すべきだと思う。だが、それをどう実現していくかというところが大事なんだがな。

◆三枝さんの組織論

🧒‍;これを見て三枝さんはどのようにしようとしたのでしょうか?

👨‍🦳;ああ、組織論には2つの基本原理があると言っている。

1,創る、作る、売る
企業の競争力の原点は商品ごとの「創る、作る、売る」の回しのスピードである。

2,スモールイズビューティフル
肥大化した機能別組織の制約の中から社員を開放し社内調整に過度にエネルギーを浪費せずに意思決定を行える組織。

経営者の謎解き  
 スモール・イズ・ビューティフル  事業を、《創る、作る、売る》の機能をワンセット持つ小ぶりな組織に分割する。「一気通貫組織」とも呼ぶ。それにより、競合より早回しができる事業組織にする。その事業組織のトップに「気骨の人材」を抜擢し、その人に戦略リテラシーを取得させ、海外を含む市場競争に打ち勝つ戦略を自ら立案させ、実行させる

🧒‍;なるほど、組織は戦略に従う。常に創る、作る、売るのサイクルを回すためにどうするかから発想が始まるのですね。

👨‍🦳;ああ、そうだ。そして、これらの原理を組み込んだ組織論は人減らしのコンセプトではないんだ。いかに、そこにいる人の目を輝かせるかというところがポイントなんだ。熱い集団にどうやってしていくかということなんだ。

🧒‍;それは理想論としてわかりますが、感銘を受けたそのチーム組織の何を残し、何を切るか具体的に細かい見極めが必要ということですね。既存文化の良さを残しながら、変えていくには。

◆人材育成への姿勢

👨‍🦳;ああ、三枝さんはやがて、ミスミの従来制度と自分の考え方に2つの決定的な違いがあることに気づくんだ。一つは、失敗者に対する価値観。従来は、「失敗者は会社を去るのも結構」という文化であったが。「失敗こそが人を育てる」というのが三枝さんの考えだった。

🧒‍;なるほど、叱るときはしっかり叱らないといけないですが、その上で本人が反省している限り失敗の件は終わりにして、その人材を温存するというわけですね。アドラーの言う、“信用と信頼”に似ているのかもしれませんね。

👨‍🦳;時は三枝さんが就任したときに戻るんだけど、就任から4か月たった時に全社経営フォーラムを開催したんだ。(これはFA事業部改革の際に長尾さんがプレゼンしたのと同じ場面)そこで、組織制度の大変更をプレゼンした。

🧒‍;組織変更って、勿論経験あると思いますけどシビアっていうか。。良かれと思って新方針を打ち出しても弊害や反作用がありますよね。ここで失敗すると就任当初から信頼を得れない可能性がありますね。

👨‍🦳;ああ、その通りだ。それでも腹をくくってやったということだな。その内容は下記だ。(抜粋)

1 ,社内公開で下剋上を行う「競合プレゼン」を廃止する。

2 ,リーダーの立候補制は続ける。本人が自ら手を挙げ、自ら昇進を狙いに行く制度は素晴らしい。

3「[会社指定人事」と呼ぶ制度を導入する。動きの早い戦略事業では会社権限で人事を決める。普通の会社で人事といえばすべてこれだが、ミスミではわざわざ「会社指定人事」という言葉を作る必要があった。

4,毎年行ってきた社員の自由異動(「ガラガラポン」ないし「ガラポン」と命名)は、 2年に 1回の実施に減らす。できれば社員には少なくとも 2期( 4年間)は同じ事業にコミットすることを期待する。

5,業績評価や人事管理、給与や賞与の決定などはチームから会社管理に戻す。人事部機能を復活させるため、人材開発室を設置する。社員給与の公開は廃止する。

6,ビジネスプラン(事業戦略計画)の立案を「ミスミ組織モデル」の重要なシステムとして位置づける。そこでは、「競合に打ち勝つ戦略」の立案にこだわる。チームのリスク投資や赤字が大きくても、会社がビジネスプランを承認したということは、会社が「同じ船に乗った」と宣言したことになる。それによって事業リーダーはリスク感や事業責任を会社と共有し、チマチマ経営から脱却した思い切った経営行動を取りやすくなる

7,チームの業績が伸びて組織が大きくなったら、チームを分裂させる。それを「セル(細胞)分裂」と呼ぶ。セル分裂を実現した事業リーダーには、そこまで事業を成長させたことに対して「セル分裂の特別報償」を与える(セルとは、トヨタ生産方式の「セル生産」を事業組織に当てはめたミスミ用語だ。セル分裂は、経営者人材を目指す社員へのポジションを増やすことにも役立つ)。

🧒‍;なるほど、チャレンジする部分は残し、プレッシャーや恐怖を与えてしまう部分は切断しているようなイメージですね。まさに人材育成に重きを置いた案ですね。これを実践していくのですね。

👨‍🦳;ああそうだ。だが、これでも三枝さんはフレームワークが足りないと考えていた。次回そこを話していこう。

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今回は、1990年代に創業者の田口さんが考案した、「チーム制組織」の利点と弱点について解説し、三枝さんの次の組織改正について解説しました。正直従来の「チーム制組織」は、えぐいですよね・・。よくやっていけたと思います。さて次回、8章の後半を解説します。そこで解説としては終えて、その後本マガジンのまとめ投稿し会社改造編のマガジンを終了します。あと少しお付き合いいただければうれしいです。

 そして、次回のマガジンはトヨタ生産方式の自働化の肝となる「自工程完結」について解説していきます。これは現場だけでなくバックオフィス業務にも適応できる考え方ですのでお楽しみに💪

下記の固定記事に、このnoteのコンセプト、これまでのマガジンについて説明しています。ご興味あればスキ・フォローいただければ嬉しいです。

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