マガジンのカバー画像

記事の収納

192
色々書いてこまめに入れていきたいです 書けた順番でそのまま入れてます
運営しているクリエイター

記事一覧

黒白の叫び 伊藤計劃『虐殺器官』『ハーモニー』再読感想

黒白の叫び 伊藤計劃『虐殺器官』『ハーモニー』再読感想

以前のnoteのお休み期間中に、伊藤計劃さんの『虐殺器官』と『ハーモニー』の再読をしてました

それぞれの再読感想を並べますが、作品についてのあらすじや作者の伊藤計劃氏についての解説はほとんど行っていません
また直接の表現はしてませんが、物語の結末に触れる内容になっているので、閲覧にはご注意ください

『虐殺器官』

12年ぶりくらいに再読
以前読んだ時は、主人公クラヴィスのナード感が物珍しいと思

もっとみる
『アニエスv.によるジェーンb.』と『カンフー・マスター』を上田映劇さんで鑑賞した感想記事

『アニエスv.によるジェーンb.』と『カンフー・マスター』を上田映劇さんで鑑賞した感想記事


昨年に急逝したジェーン・バーキンの追悼記念上演として、上田映劇さんで上演された2本の映画を鑑賞してきました

『アニエスv.によるジェーンb.』

ジェーン・バーキンについては、日本のドラマの主題歌になった曲がとても好きだったのと、エルメスのバッグの名前の元になった人、という情報だけを持って鑑賞しました
冒頭はティツィアーノの絵画(多分)の場面を模した扮装のジェーン・バーキンが40歳の誕生日を前

もっとみる
『源氏供養~草子地宇治十帖』 森谷明子 感想

『源氏供養~草子地宇治十帖』 森谷明子 感想

『千年の黙』『白の祝宴』『望月のあと』に続く、シリーズの最新刊にして完結編です
こちらのシリーズ作品を読むのは久しぶりでしたが、香子(紫式部)の万事控え目で悩みが多く、しかし周りの人への細やかな気遣いをし、己の書くものに情熱を密やかに燃やす姿が変わらずとても好ましいし、紫式部として想像する人柄にすごく馴染む造形が相変わらず好みでした
1019年頃の、すでに出家をし宇治の庵で暮らす彼女が“宇治十帖”

もっとみる
『渚にて』  ネヴィル・シュート 作 佐藤龍雄  訳 感想

『渚にて』 ネヴィル・シュート 作 佐藤龍雄 訳 感想

1960年代の、オーストラリアのメルボルンを主な舞台とした群像劇
些細な軍事的な小競り合いから始まってしまった、核保有国同士の止まらない報復行為の果てに、北半球の大半の都市も国家も高濃度の放射能に汚染された死の区域と化してしまい、またその汚染は刻一刻と南半球の地にも迫っている
メルボルンも北半球の都市と同じく、生命の生存が不可能になる、まさに“その日”までの出来事を、様々な人物の視点から克明に描い

もっとみる
久しぶりにドラクエⅡをプレイした話②

久しぶりにドラクエⅡをプレイした話②

1999年発売の、ゲームボーイカラー版『ドラゴンクエストⅡ』を久しぶりにプレイした感想記事の第2弾です
前回の記事には、ドラクエⅡをファミコンの頃からご存知であったり、ゲームに馴染みがなくても興味深く読んで下さったりというnote相互さんからたくさんコメントを頂けました 嬉しいです
今回はより、ドラクエⅡの独特な世界観や面白さが伝わるように書いてみたいと思います

前回はドラクエⅡの主人公にあたる

もっとみる
『アステリズムに花束を』 百合SFアンソロジー 感想文

『アステリズムに花束を』 百合SFアンソロジー 感想文

SFマガジンの百合SF特集号に掲載された作品に、書き下ろしも含まれた、百合への期待と思い入れが満ちみちた作品集です

百合SF特集のSFマガジンは三刷の増刷を果たしたことや、伊藤計劃氏の『ハーモニー』の十周年記念で開催された特集であったことなどを語る序文から熱い短編集でしたが…『ハーモニー』は百合認知されてるんですね
それはそれで嬉しいような、むずがゆいような、百合って枠組みに入れるのは適切なのか

もっとみる
短歌集 『死のやわらかい』  鳥さんの瞼 感想

短歌集 『死のやわらかい』 鳥さんの瞼 感想

以前読んだ『海のうた』という歌集に収録されていた作品で、この 鳥さんの瞼 さんの短歌にとても惹かれたために短歌集も拝見してみました
柔和で繊細な雰囲気の短歌で、母や祖母の記憶や希死念慮にも溢れていて、あまり人に勧めたり感想を書いたりするよりは、本棚の隅にしまっておきたい風合いの短歌集のように感じます
ですが、よくよく読んでみると
スーパーに並ぶパックの食材を眺めているであろう心情であったり、おそら

もっとみる
災害時の職場での判断に大失敗した話

災害時の職場での判断に大失敗した話

2024年の8月末から9月頭にかけて日本列島上を迷走した大型の台風は、被害がどうなることかと恐怖を感じる経緯を辿る出来事でした
しかしまだまだ、いつでも、どんな災害がいつ発生するかは分からないもんですから、この記事をご覧下さってる方もどうか、引き続き警戒と備えのほどをよろしくお願いいたします
さて、災害はどんな時も、忘れた頃にやってくるものですが、自分の職場が水害に遭ったのに避難判断に失敗してわり

もっとみる
映画『幻の光』を、上田映劇さんで鑑賞してきました

映画『幻の光』を、上田映劇さんで鑑賞してきました

是枝裕和監督の1995年の作品ですが、石川県を舞台としている縁から、能登半島地震 輪島支援特別上映として リバイバル公開されています

原作の小説では、失踪したままの祖母の記憶に苛まれ、自殺した夫のことも幾度も幾度も繰り返し思い続け、語りかけることを止められない女性の話…と読める物語なのですが
映画として再構築された彼女は終盤までその内心が推し量れず、厳しくも穏やかな能登半島の自然の中で、幸せに過

もっとみる
『青鬼の褌を洗う女』 坂口安吾 感想

『青鬼の褌を洗う女』 坂口安吾 感想

坂口安吾氏の作品は大半が青空文庫で読めるようになっており、この作品もネット上で閲覧が可能なのですが、何故だか独立した単行本になっているのを見つけたので、未読だったために読んでみました

タイトルからして、軽妙な昔話の翻案作品なのかと思ってたのですが、ぜんぜんそんなことはなく、自身をオメカケ(お妾)気質と呼ぶ享楽的な、しかし己の意志や感性に忠実な、あだっぽく逞しい女性の独白の物語です
作中でストーリ

もっとみる
久しぶりにドラクエⅡをプレイした話

久しぶりにドラクエⅡをプレイした話

世にある様々な家庭用ゲーム機、昔はファミリーコンピューターやスーパーファミコン、現在はNintendo Switchなどや、携帯ゲーム機のニンテンドー3DSやスマートフォンのアプリなど、ドラゴンクエストのシリーズは様々なプラットホームで発売され、過去作のリメイクもたびたび行われています

今回プレイする『ドラゴンクエストⅡ』は、かつてはファミリーコンピューターで1987年に発売された作品で、今でも

もっとみる
てぶ茶とマメ茶、いかがですか?

てぶ茶とマメ茶、いかがですか?

先日、相互のひろうすさんがうちの猫の白手袋に似ている、日東紅茶のティーバッグパッケージに
『てぶ茶』と素敵なネーミングを付けて下さったのですが…
なんと! それを実際に描いて下さったのです!

白手袋のもっちりむにむにした体型に、タキシードを着てるような柄、とぼけたのほほんとした表情
豆大福の不機嫌に細められた藪睨みの目付きに深い眉間のシワ、ほっそりした体型にお尻のハートのぶち!
何もかもが、うち

もっとみる
豪速球のSF短編集『なめらかな世界と、その敵』  伴名練  感想

豪速球のSF短編集『なめらかな世界と、その敵』 伴名練 感想

あまりにも面白い、すごい短編集だった
こういうSF好きだなあとか
情緒の揺さぶり方が容赦ねえなあとか
萌えこころを的確に満たしてくれるし、むしろこの作品きっかけで(何かに)覚醒する人もいるよなあとか! ムズムズバタバタしてしまう短編集でした
読んでいて興奮で動悸が上がったり、面白さが過ぎる場面で発情期のどうぶつのようにウロウロ歩き回ったりするくらい、身体に訴えかける剛力な面白さが凄い短編集でした

もっとみる