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鎌倉・江の島日帰り旅、そして自分の創作について

こんにちは。ゲンキです。

今回は単発記事ということで、数日前に行ってきた鎌倉・江の島日帰り旅および旅を通して創作について考えた事の記録をお届けします。それでは本編へどうぞ。


・2023年4月某日 鎌倉駅

灰色の空が強風と雨粒を吹き散らす日曜日の朝9時前。ゴールデンウィークだというのにあいにくの悪天候だが、今日は5時台に起きて鎌倉駅までやってきた。

こんな日にわざわざ出かけようと思ったのには理由がある。


美大生である僕は現在大学の授業で「任意のテーマでドローイングを多数制作し、それを用いて平面構成をする」という課題をやっている。要するに「好きなものを好きなように沢山描いて何か作ろう」という感じだ。

せっかくだから描いてて楽しいものを作りたいと思い、僕は「列車」をテーマに選んだ。自分にとって鉄道とは何かを改めて表現する良い機会だ。

1週目は自分でもビックリするほど調子が良く、まるで幼稚園時代の無邪気で恐れのない心を取り戻したかのように気持ちよく描くことができた。しかし2週目に入ると早速壁にぶち当たった。

先週はあんなに楽しく描けていたのに、今週はなぜだか気分が乗らない。どうにも何かがしっくりこない。描いててもあんまり楽しくなく、ワクワクしないのだ。講評でも先生に「今週はあんまり楽しくなさそうだね〜」と言われてしまったので、よっぽど絵に滲み出ていたのだろう。とはいえどうすればいいのか。

原因はいくつか思い当たる。新鮮さの減少、悪い意味での慣れ、必要性のないことに固執している…などなど。しかし「楽しさ」に満ちていればこれらの問題は発生しなかったので、やはり「楽しさ」がキーになりそうである。
講評は続き、「まずはルンルン状態を取り戻そう!」という話になった。先生に「連休中に電車とか乗りに行ったらどうですか?」と提案され、「あ、そうですね。乗ってきます」と1.5秒ぐらいで決めた。行き先は大宮の鉄道博物館と迷ったが、「やっぱり動いてる電車に乗りたい」と思ってまだ行ったことのない鎌倉・江の島にした。

しかしゴールデンウィーク中は既に他の予定が入っているため、この単発旅は無理やり予定にねじ込まざるを得なかった。今日は夜からバイトなので遅くとも17時には帰路につかなければならない。先述の通り5時起きで滞在時間は約8時間。今日がまとまった時間を取れる唯一の日だったので雨天決行以外の選択肢はない。
そんなわけで、今日は色々電車に乗って初めての鎌倉・江の島観光をしていきたいと思う。


さて、話を戻そう。まずは駅の西側に伸びる若宮大路を北に向かって鶴岡八幡宮に行ってみる。鶴岡八幡宮は源氏の守護神を祀るために創建された神社で、約1000年にも及ぶ歴史を持つ。また参道である若宮大路は平安京の「朱雀大路」をモデルにした大通りで、鎌倉の中央を貫いて南の由比ヶ浜までを一直線に結んでいる。大路に設けられた3つの鳥居は海から近い順に一・二・三と番号が振られ、鎌倉駅西口から出るとちょうど「二の鳥居」を見ることができる。

二の鳥居
若宮大路の中央は一段高くなる「段葛(だんかずら)」という構造。桜並木の名所としても知られる


カメラで写真を撮りながら二の鳥居をくぐろうとしたところ、「写真撮ってるんですか?」と地元の人らしきおじさんに話しかけられた。今日は初めて鎌倉に来たんですよーと返すと、おじさんは「いや鎌倉なんてしょうもないですよ!」と急に地元をディスり始めた。
鎌倉が平安京を模したものであることは先ほど書いたばかりだが、おじさんは真似するにしてもその規模の小ささが気に入らないようだった。

こんな感じの顔だったと思う

「幕府作って国を治めるったってねえ、こんな狭い土地でどうするんです??って話なんですよ。見てくださいよこのほっそい道を。山に囲まれてるし川も小さいしねえ、水も食料もどこから運んでくるんですか?いくら兵力を蓄えようとしても絶対に土地と資源が足りないですよ。ましてや全国統一なんて出来るわけないんですよ!そう思いません!?

とりあえず「まあそうっすねー笑」と返す。おじさんの鎌倉に対する愚痴は止まらない。

「僕は鎌倉研究家なんですけどね、つくづく思いますよほんと。当時天皇は京都にいるでしょ?そんで源頼朝は征夷大将軍に任命されたけど、それは『ちょうどいいから東の方の警備係にしとけ〜』ってことだったんじゃないですかね。つまり最初から朝廷に舐められてたんですよ。そう思いますよね!?

なぜかいちいち同意を求められるが、残念ながら疑問や反論を提示できるほどの知識を持ち合わせていないので「なるほど〜笑」とテキトーに相槌を打っておく。
おじさんの顔はどことなく志村けん似で、江戸川コナンみたいなメガネをかけている。そしてよく見たら右手にアサヒスーパードライの缶ビールを持っていた。

「こんな狭い土地でねえ、水も食料もどこから運んでくるんですか?いくら兵力を蓄えようとしても絶対に土地と資源が足りないですよ。ましてや全国統一なんて出来るわけないんですよ!」

あれ?この話さっきも聞いたような。

「源頼朝が征夷大将軍に任命されたのも『ちょうどいいから東の方の警備係にしとけ〜』ってことだったんじゃないかなーってね、僕は思うんですよ!」

ダメだ、このおじさん酔ってる。結局4回ぐらい上記のような会話を繰り返した気がする。正直早くどっか行ってくれ…と思いつつ、一回結論まで行ったはずの話が驚くほど綺麗にループして戻ってくるので謎に「すげえ」とも思ってしまった。
その後もおじさんは「聖徳太子、実は朝鮮人説」などを力説したのち、「ごめんね時間取って!」と言って去っていった。いきなりヤバい人に絡まれたが、あんだけ鎌倉の悪口を言いながらも鎌倉に住んでいるということはただの「歴史大好き鎌倉愛こじらせおじさん」だったのだろう。


少し時間を食ったが、なんとか鶴岡八幡宮に到着。朝なので人も比較的少なく、落ち着いた空気の中で参拝することができた。ツアーガイドのお姉さんが海外旅行客たちに英語でバリバリ解説しててかっこよかった。

鶴岡八幡宮
本殿への階段
上から見下ろした景色。
階段を降りたところにある舞殿では結婚式をやっていた
少しずつ参拝客が増える


小町通り

鶴岡八幡宮から駅へは若宮大路の西側にある小町通りを歩いて戻った。小町通り沿いには観光地らしいカフェやレストランやお菓子屋やお土産屋が立ち並び、これから八幡宮へ向かう大勢の観光客で賑わっていた。少しお腹が空いていたので団子屋でこしあん団子を購入。1本200円の観光地価格ではあったがそれに見合う満足感と美味しさだ。

10時過ぎに鎌倉駅に戻ってきた。次はJRで一駅隣の北鎌倉駅へ向かう。ホームに上がるとちょうど大船方面への電車が行ってしまったところで、しかも次発まで16分も待たなければならない。横須賀線は基本的に10分に一本ペースなので、運悪くハズレ時間に当たってしまったようだ。


10:33 北鎌倉駅

葉祥明美術館

北鎌倉駅から徒歩5分ほど、おしゃれな洋風建築の葉祥明美術館にやってきた。ここは絵本作家・画家として創作活動を行なっているアーティスト葉祥明(よう しょうめい)氏の作品を展示している美術館で、緑に囲まれた静かで穏やかな環境の中にある。

葉祥明「春の風」
出典:北鎌倉 葉祥明美術館 Facebook

葉祥明氏は環境、平和、生命などをテーマに制作・活動しており、特に柔らかいタッチと色彩で描かれる「空と地平線」のある自然風景が見る人に優しい世界観を届ける。僕も彼の作品の言葉にしがたい神秘的な空気感が好きで、数年前から気になっていたこの美術館を今回ようやく訪れることができた。そして今後の進路を考える上でもちょうどいい時期に来れたと思う。


というのも僕は最近卒業後の進路について色々悩んでいるからだ。大学3年生になって就職や院進など様々な選択肢が頭の中をぐるぐる回っているが、やっぱり僕は通常ルートを外れてでも得体の知れない「何かを作って生きていく」という道に挑んでみたい。ただお金を稼ぐためにやりたくもない仕事に時間を費やすぐらいなら、本当に自分のやりたいこと・楽しいことのために人生を使いたいと思うのだ。

そして具体的に何を作るのか、という所で一つ思いついたのが絵本である。
僕の作品を誰に見てほしいか考えた時、一番は子どもたちだと思った。それを踏まえて何かを表現するなら、僕自身が幼少期に多大な影響を受けてきた「絵本」という形式が適しているのではないかと最近考えている。電車への興味から始まって旅をするようになり、旅を通して経験したことや学んだことを作品に込めて子どもたちに届けられたら、それが僕の「生き方」になるかもしれない。そんなことを考えながら美術館を見て回った。


11時半、1時間ほど滞在して美術館を後にした。北鎌倉駅から再び鎌倉駅に戻る。

なんか鳴き声するなあと思ったら屋根にリスがいた。
かわいい


12:00 鎌倉駅

江ノ電 鎌倉駅

ここからは江ノ電に乗って海沿いに移動する。どんなに鉄道に詳しくない人でもおそらく一度は「江ノ電」の名を聞いたことがあるはずだ。湘南の海風を浴びながら観光名所・江の島へと人々を運ぶ小さな電車の姿は、誰の心にも愛らしく映る。

それほど有名な江ノ電だが、僕は今回が初乗車。大勢の観光客とともに車内に詰め込まれて鎌倉駅を出発した。

江ノ電では4両編成の電車が14分に1本のペースで運転されるが、それでも必ず満員になる。停まっていく駅ごとに乗客たちがドーッと降りてはドーッと乗ってくる。車内には休日を楽しむ人々の賑やかな話し声が絶えない。このあたりの雰囲気は神戸の中華街あたりの活気あふれる感じに似ている。


12:10 長谷駅

鎌倉から3駅目の長谷(はせ)駅で下車。ここから10分弱歩いたところに高徳院・鎌倉大仏があるので見に行ってみる。みんな考えることは同じなようで、ぞろぞろと行列をなして山の方へ歩いていく。


鎌倉大仏

鎌倉大仏の第一印象は「デカくね?」であった。今まで鎌倉大仏を見たこともないのに「いや、奈良の方がデカいし」という謎の関西人マウントを持って生きてきたのだが、鎌倉大仏の佇まいを目の当たりにして反省しようと思った。奈良の大仏は屋内にあるのに対して、こちらは頭上に空が広がる屋外のためとても開放的だ。

大仏の背中側。もし日本がピンチになったとき、二つの窓から蒸気を出して「ガシューーッ…」と立ち上がったらめちゃくちゃかっこいい
50円で「胎内めぐり」ができる。残念ながら中にマシンとかは無かったけど(当たり前)、とても不思議な空間だった


13時が近づき、さすがにお腹が空いてきた。高徳院から駅までの道の途中に良さげなお店を見つけたのでそこで昼食をいただく。近くには他にも美味しそうなご飯屋さんが沢山あったが、やっぱり初めての鎌倉・江の島ならば名物の「しらす丼」を食べてみたい。

お食事処「ハルミ」

メニューには「釜揚げしらす丼」と「生しらす丼」の2つが大きく書かれており、どちらも美味しそうで迷ってしまう。お店の人にどっちがおすすめか聞いてみたところ、よくある質問なのか「うーん…笑」と迷われている様子。「ハーフ丼もできますよ」と教えてくれたので「じゃあハーフで!」とお願いした。

ハーフ丼(1300円)

釜揚げと生を食べ比べてみた結果、どちらの方が良いかは正直好みによるかなーと思った。釜揚げしらすはふっくらした食感、生しらすはツルツルした食感。個人的には生しらすの方が食べる機会が少ないので新鮮な感じがした。湘南のしらす丼はどの店でも美味しいこと間違いなしなので、現地に行かれた際はお好みの方を試してみて欲しい。


長谷駅前の踏切

長谷駅に戻り、引き続き江ノ電で江の島方面へ。稲村ヶ崎駅を出てしばらくすると進行左手の窓いっぱいに白波が立つ相模湾のオーシャンビューが広がった。これから進む方向には江の島の稜線が際立って浮かぶ。インスタ映えする風景に車内からも歓声が上がり、みんな揃って海の方を眺めていた。

うねうねと急カーブを曲がりながら進む(七里ヶ浜駅付近)


13:40 鎌倉高校前駅

鎌倉高校前駅

海岸が目の前に迫る鎌倉高校前駅の近くには大人気の撮影スポットがある。それが鎌倉高校前1号踏切だ。

ものすごい人だかり。軽く30人はいるだろうか
あまりに人が多すぎてこの向きで撮るの忘れてた。
(出典:鎌倉市観光協会ホームページ)

坂の下に江ノ電の踏切があり、その向こうには大海原と遥かな水平線。この踏切の美しさはあらゆる場所で取り上げられるため、江ノ電どころか日本で一番有名な踏切と言っても過言ではない。海外からの訪問者もかなり多く、日本語以外の言語もあちこちで聞こえる。またここはアニメ「SLAM DUNK」のオープニング映像にも登場する「聖地」であり、昨年末公開された新作映画の影響でその人気が爆発的に再燃しているようだ。

江ノ島方面から電車がやってきた
辺りに緊張感が走る

踏切が鳴り始めると、待機していた人々が一斉にそちらへカメラを向ける。ゴーッと電車が通過する瞬間は誰もが夢中でシャッターを切りまくっていた。僕は海と電車よりもそれを撮ってる人たちを撮ってた。電車1本分、14分だけ滞在して再び移動。


13:55 腰越駅

鎌倉高校前から一駅、腰越駅で下車。僕は何回見ても「こしこし」と読んでしまうが正確には「こしごえ」である。この駅は住宅街にめり込むようにして建てられ、あまりに敷地が狭すぎて鎌倉方の1両はホームからはみ出してしまう。車掌さんはホームより向こうのまだ線路上にいる最後部から頭を出してドア操作と安全確認を行なっていた。

ホームの長さは3両分しかない
腰越から江ノ島までは道路との併用区間

駅の周りを少し歩いてみる。昔何かの本で江ノ電が住宅街のど真ん中をすり抜けて走る写真を見たことがあり、しかも家々の門は線路に面していたのでかなり衝撃的な光景であった。ここまで乗ってきた区間でも何度か目の前を家の玄関が通り過ぎていったが、この腰越駅付近もそういった雰囲気の密集具合だ。

江ノ電もかなり窮屈そうに走る

細い路地を勘で辿っていくと確かに線路に繋がっており、反対側にも同じような細い道が続いている。しかしこれは「勝手踏切」と呼ばれる非公式な踏切なので法律上あまりよろしくない存在。観光で来ても線路上に出たり渡ったりすることは控えた方が良い。

危険防止のためか警察官が見回りをしていた。
興味本位で線路を歩くのはやめましょう


14:15 江ノ島駅

江ノ島駅

併用軌道を通り、電車は江ノ島駅に到着。せっかく江ノ島駅に着いたところだが、僕はこれから湘南モノレールに乗って大船に向かう。そしてまた江ノ島駅に戻ってくる。
なぜそんな無駄な移動をするのかというと、ただ「湘南モノレールに乗りたいから」という理由に尽きる。湘南モノレールもまた江ノ電に匹敵するおもしろ鉄道なのだ。

モノレール 湘南江の島駅
湘南モノレール

湘南江の島駅は5階建てで、最上階の5階にあるホームから湘南モノレールが発着している。湘南モノレールは頭上にあるレールからぶら下がる懸垂式と呼ばれる方式で、その状態で高所を走ること自体かなりスリリングなのに時速75キロで車体を傾けながら山間を疾走するのでその走行スタイルはしばしば「ジェットコースター」と比喩される。

素早い加速で湘南江の島駅を発車し、ガタガタと揺れながらいきなりトンネルに入った。トンネルを出ると駅に停まったり急坂を駆け上がったり駆け下りたり、またトンネルに突っ込んで暗闇を爆走しては地面スレスレを低空飛行したり、かと思ったらビルを見下ろすような高所を飛んだりと目まぐるしく車窓が変化していく。


大船駅

片道15分の乗車はあっという間に終わり、終点の大船に到着。今度はさっき車窓から見て気になった駅でところどころ途中下車しながら湘南江の島駅に戻る。

まずは大船から3駅目の湘南深沢駅で下車。

湘南深沢駅

湘南深沢駅は上下列車の交換可能駅であり、車庫へと伸びるレールもこの駅の近くから分岐している。また江の島側のレールは歩道の真上にあり、モノレールを真下から眺められるスポットでもある。

江の島方面から列車がやってきた

「ズオオオオオ…」という独特な音を響かせながら頭上をモノレールが通過していく。なんとも大迫力の日常風景だ。
しかも運のいいことにちょうど車庫から回送列車が出てくる瞬間も見ることができた。おそらく日中にはあまり見られない光景なのでこれはラッキーだ。

車庫線(右)から本線(左)に入る回送列車


再び乗車して一駅隣の西鎌倉駅へ。ここもホームが2つある交換可能駅だ。

西鎌倉駅

西鎌倉駅は道路と交差点に囲まれた場所にあり、カーブしながらレールが分岐し、真下は駐輪場、そして辺りは坂だらけで景色は山と住宅街のミックスという情報量が多すぎる駅。こんな感じの風景とか描いてみたい。

さらに駅近くの歩道橋からは通過するモノレールの車体を至近距離で眺めることもでき、これでもかとおもしろ要素を詰め込んだような場所だ。ここなら1時間いても飽きない。


最後は終点の一駅手前、目白山下駅で下車。

目白山下駅

なんだこの近未来と自然と寂びの融合は。僕の超好きなやつなんだが…

この下にある緑のやつ、とても良い
良い…
この自販機にも何か「物語」を感じる

大船方ではレールがかなり高い位置にあるのに対して、江の島方ではすぐそこにトンネルの入り口があるため列車が地表のすぐ上を走る。その極端な高低差やどことなくレトロな雰囲気、しかし近未来的な構造物と乗り物、周囲の街並みと生活感、そして自然に囲まれた環境が他にはない独特の空気を醸し出している。ものすごく物語の一場面として描きたくなるような趣深い風景。間違いなく湘南モノレールで一番好きな駅だ。

どこを撮っても画になる。


15:40 湘南江の島駅

1時間と少しぶりに戻ってきた。というわけで今度こそ江の島に向かいたいと思う。ここから江の島までは徒歩でおよそ15分。

小田急 片瀬江ノ島駅

道中には竜宮城みたいなデザインの小田急・片瀬江ノ島駅がある。ここから藤沢まで小田急に乗ってみたりもしたかったが今日は時間がないので諦めた。
ところで一旦整理しておきたいのだが、「江の島」と名の着く駅は3つある。

・江ノ電     「江ノ島駅」
・湘南モノレール 「湘南江の島駅」
・小田急     「片瀬江ノ島駅」

「江ノ島駅」と「湘南江の島駅」はほぼ同じ場所にあり、「片瀬江ノ島駅」が一番江の島に近い。名前も似てるし「の」だったり「ノ」だったりするのが超ややこしいが、観光の際は自分の使う駅を間違えないよう注意が必要だ。

江の島ビュータワー、いかにも昭和の香り
江の島弁天橋
山の上に立つのは展望台「江の島シーキャンドル」
浮世絵のような海と山


16:00 江の島

弁財天仲見世通り

江の島弁天橋を渡って江の島に上陸。島の入り口にある商店街は観光客でぎっしり埋め尽くされ、まるでコロナ前に戻ったかのような活気ある光景だ。人とぶつからないよう気をつけつつ、いろいろなお店を眺めながら坂を登る。

あさひ本店

その中でも群を抜いて人が並んでいるお店があった。たこせんべいが名物のあさひ本店である。タコを1トンの圧力で押し潰してせんべいにするというとんでもない発想の食べ物だが、これがとにかく大人気。たこせんべい待ちの行列はあまりに長すぎて隣の店内にまで押し込まれている。

僕もせっかくだから並んでみようかと思ったが、行列の顔ぶれを見ると大多数が「東京/横浜あたりでインスタ映えライフを送ってそうなおしゃれな若者たち」であった。いや彼らのことを悪く言うつもりはないのだが、たまたまハンガーラックの手前にあった白無地とジーンズを着ているだけの僕が一人であのキラキラボーイズ&ガールズの間に挟まれるのはあまりにも肩身が狭い。というか帰宅のタイムリミットも迫っているので待ち時間は大きなロスになってしまう。江ノ電の江ノ島駅近くにもたこせんべい屋があったことを思い出し、ここは諦めてそっちで食べることにする。

江島神社 鳥居と瑞心門
エスカー乗り場

少し登ると江島神社の入り口、朱色の鳥居と白い脚の瑞心門の下に出る。そこから左に進むと登山エスカレーター・江の島エスカーの乗り場に着く。予定ではこれに乗って山頂のシーキャンドル(展望台)に行くつもりだったのだが、やはり時間が足りないため今回はエスカーもパス。まあそのうちまた来ると思うのでその時にリベンジしよう。

この雰囲気は京都の清水になんとなく似ている

坂を下って海の近くへ。何か甘いものを食べたかったが、今の気分に合うものがイマイチ見つからない。しらすコロッケも美味しそうだったけど昼にしらす食べたから今は別にいい。そうしてしばらく彷徨った末、「冷やしキュウリ明太マヨソースがけ」を買った。

冷やしキュウリ明太マヨソースがけ(250円)

こんなんで250円も取るとかどうかしてると思うが、江の島で食べるのなら高くても満足感の方が上を行くから不思議だ。というかこのキュウリはけっこう美味しかったし明太マヨも良いアクセントになっている。潮っぽい風を浴びながらパリパリと音を立ててかじり、16時半頃に江の島を後にした。

キュウリを買ったのはこの建物の画像右下らへん
アイスを持ってる人形に抱きつく女の子。かわいい


今日は天気が悪いので波も激しく、そのせいか塩が付いて髪がパサパサになっている。雨も少しだけ降ってきたので少し急ぎ気味で歩く。

あさひ本店 江ノ島駅前店

さっき見かけた江ノ島駅近くのたこせんべい屋さんへ。前に並んでいるのは2組のカップル。彼らもたこせんべいを頼んでいるようだ。
自分の番になったのでたこせんべいを注文すると、調理台からはタコが潰される「ピギュイィィイイイ!!!!!プシューーーーゥゥゥ」というまあまあ悲劇的な音が聞こえる。そうしてついにたこせんべいをゲットした。

たこせんべい(500円)

驚くほど薄い。その薄さは出来たての熱さが風に吹かれて一瞬で冷めてしまうほど。パリパリ食感ののちに広がるタコの味。確かにこれはインパクト絶大だし人気が出るわけだ。


17:00 江ノ島駅

最後は江ノ電で藤沢駅に向かい、そこからJRで帰る。今から観光を始める風の人は昼間より少なく、だいたいの乗客は遊び疲れた様子で家に帰る途中のようだった。

乗ってからしばらくしてふと横を見ると、というか嫌でも目に入ったのだが、僕の反対側のドア付近に立っているカップルがやけにイチャイチャしている。彼らも今日一日江の島を歩き回って楽しい思い出を沢山作ってきたのだろう。

効果音(イチャイチャ…ラブラブ…)

そんな胸いっぱいの2人はお互いの背中に腕を回し、もうハグしている。あれは完全にハグだった。それを眺める独り身の僕。彼らは名残惜しそうに車窓を眺め、たまに言葉を交わしては額がくっつくほどに顔を近づけて笑顔になる。

なんと心温まる光景だろうか。体の奥が熱くなり、嫉妬の炎が燃え盛りそうになったところで我に帰った。危ない危ない、つい醜い自分が出てしまった。とはいえラブラブカップルを見かけると「ほっこり…」するのと同時に「メラッ…」と来てしまうのも事実。自分の中に2つの対立する感情が嵐のように巻き起こったときってどうすればいいのだろうか。「くっつけくっつけ」とも「爆発四散しろ」とも思うのである。嫉妬だけじゃないから処理が難しい。僕も恋人ほしい。


17:15 藤沢駅

江ノ電 藤沢駅
JR藤沢駅名物 電車の形をした売店

終点の藤沢駅に到着。夜からバイトのシフトを入れてしまったので少し早いけどもう帰らないといけない。やっぱり8時間で江の島・鎌倉を回るのは少々無理があったが、それでもけっこう充実した一日になった。次に来る時はもっとゆっくり時間をかけて観光してみたいと思う。


~後日~

今回の鎌倉・江の島日帰り旅を振り返って、結局例のドローイング課題に活かせそうなものは見つかったのかどうかを考えていた。電車に乗っている間や途中下車した場所でちょくちょく絵を描くためにスケッチブックと画材を持っていったものの、やっぱりいつも通りのハードスケジュールになって全然時間を取れなかった。何枚か描いてみた絵も「これだ!!!」という感覚をもたらすほどのものではなかった。それでも、一つだけ今後のヒントになりそうなことに気づいた。

僕は「まだ行ったことのない場所」に行くのが好きなのだ。
noteで旅行記を書いた日本縦断も、今書いているイギリス一人旅も、そして今回の鎌倉・江の島も、すべて「初めての場所に行く旅」だったと気づいた。逆に「もう行ったことのある場所」をあえて2回3回と訪れるようなことは滅多にない。目的地が以前行ったことのある場所だったとしても、その経路は意識的に変えていることが多い。つまり、僕は常に新しい刺激と出会いを求めているということだ。

それを制作にも輸入すればいいのではないだろうか。2週目の課題で調子が悪くなったのは、1週目で使った画材を「もっと上手い使い方があるかもしれない」とあんまり楽しくもないのに使い倒してしまったことが原因のような気がする。何を描くかにしても「どうやったら先週のように楽しく書けるか」に固執して、見た目ばかりを真似する方向に意識が傾いていたと思う。一つの画材の可能性を探究すること自体は良いことなのだが、そのせいで絵が悪くなっては元も子もない。芸術をやっていて思うのは、人の数だけやり方があるということだ。ある一つの画材と運命的な縁を持ちそれを磨き続ける人もいれば、一枚ごとに使う画材も作風もガンガン変えていった方が良い絵が描ける人もいる。僕はおそらく後者に近い。確証はないけど、たぶんそうだと思う。違うかもしれないけど可能性はある。
これらの発見が今回の鎌倉・江の島旅の一番の収穫だろう。

まずは近くの画材屋に行ってまだ使ったことの画材を買い、それを使ってまだ行ったことのない場所を想いながらまだ乗ったことのない電車を描いてみよう。そう考えると、少しだけ楽しくなってきたような気がする。

(完)




ということで、奇跡的に上手くまとまったのでこの辺で締めようと思います。なるべく短く書くつもりが普通に長くなってしまった。まだ作品数があまり多くないので、これからは制作の方ももっと頑張りたいと思います。

最後に宣伝になりますが、僕は他にもnoteで旅行記シリーズを発信しています。興味があればぜひそちらもご覧ください。


それでは最後まで読んでいただきありがとうございました!次回またお会いしましょう。


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