シェア
文月悠光 Yumi Fuzuki
2016年10月19日 23:15
あなたが誰かのものになっていく。触れることもせず、祈るように見つめるわたし。彼らの暮らす水槽はあまりに澄んでいたから。---------------------------- 片袖の魚 文月悠光あなたが誰かのものになっていく。その過程がわたしにはよく見えるだろう。両袖ならば触れ合えたのに、わたしは片袖にのみ火を放った。片袖に生まれた
2016年10月25日 22:44
あなたを守るたったひとりの「わたし」を見抜いて。わたしにとって「わたし」はひとりきりだから。あなたはあなたを裁くことができますか。自らのとげを愛することができますか。とげを愛してもらえなければ花は花を生きられない。---------------------------- ばらの花 文月悠光弱さは見世物ではないから、花びらを重ねて
2016年10月29日 22:00
口に含めば、甘くあふれ出すきみの名前。見つけてしまった。幾度も口ずさみ、断ち切ることなく味わっていく。それが合言葉のように、唱え終えると夏がきていた。--------------------------- 夏の観測席 文月悠光窓ぎわ 右の列の三番目 ひじかけつき観測席はそこにある。発車時刻を待つバスの中、わたしは坂道の向こうを見すえ、待
2016年10月20日 19:47
腐ることをおそれたからいきものになりはてたのかな。(夜に冷蔵庫を覗いたことある?)(あたたかいんだ)(砂漠みたいでね)---------------------------- 砂漠 文月悠光触れるのでそこにやわくからまるのでひじから先はいつも熱い。つま先までの関節ひとつひとつにきみを眠らせておく。(体温だけで話はできる)言葉を
2018年6月3日 00:35
【朗読】スローファイヤー
文月悠光
文月悠光 第3詩集『わたしたちの猫』(ナナロク社)より。https://nanarokusha.shop/items/5a0137a4c8f22c063c001bae
2018年6月3日 00:27
【朗読】夜明けのうつわ