頂き武士

日記を投稿します。おまえのファムファタルです

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  • まいめろだょー

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    大学生の時に書いた小説をリメイクしてます

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固定された記事

さようなら、わたしの山田! すべてよし!#9

 山田と終わった。  もう無理だって、言われちゃった。部署の役員になってしまって、休みがない。身体の病気もしてしまった。だから生殖器として、古橋ちゃんの役に立つ…

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頂き武士
2か月前
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つまらないこと

 つまらない人間だと思う。自分のこと。わたしが高揚する話は、社会では通用しにくい。気づいてから、鬱になった。連休どこに行ったの? と聞かれるのがいやでいやでたま…

頂き武士
6日前
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もお これでいいのよと別なことを夢見ながら、身を投げ入れる #3

 せっくすしたくて泣いとる、という構文をよくポストする。ネタではなく、ほんとうに泣いているのである。性欲を満たしてくれるロボットがいればいいのになぁ。さびしさを…

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頂き武士
2週間前
11

私の神(山田俳句)

荒れてゐる吾が職人の牡蠣剥く手 ざくざくと土を踏みしめ墓囲ふ 終ったらどこへゆくのか食むセロリ 埋み火の朱もだれかのクリトリス 踏み込みて吾を見つ…

頂き武士
1か月前
11

ゆくすえ(小説)最終

ていねいに磨き上げられた食器を、陽の光に透かした。海の底のような深い色をしたそれは、以前から気に入っていたものだった。恩田と暮らし始めたばかりのころ、工房を…

頂き武士
1か月前
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ゆくすえ(小説)4

「殺してやりたい」  と思った。思ったけれども、この思いをどこに向ければ良いのか、わからなかった。手がかりがなかった。相手に心当たりはない、と言い切られてしまっ…

頂き武士
1か月前
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わたしが古橋を殺した #2

知っている人が首吊り未遂をして、精神病棟に送られた。羨ましくなった。同じように自殺をして亡くなった人たちの話を聞くと、不謹慎だが羨ましく、また妬ましくなる。わ…

200
頂き武士
1か月前
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ゆくすえ(小説)3

(強姦の描写があるため最終段落のみ有料にしています) 恩田の身体に触れているとき、陽を注がれた植物のように、自らの身体がしなやかに伸びていくのを、めるろは感じ…

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頂き武士
1か月前
9

古橋も山田も死んでしまったの、山田が死んでしまったのだから古橋も死んでしまったの。キャラクターとして在るのはくるしい。わたし、きょう、憧れの先輩と話せてうれしかった。

頂き武士
1か月前
13

ゆくすえ(小説)2

電気ケトルで尿を沸かす輩がいるらしいぜ。  鍛えられた身体を姿見に写しながら、男が言った。ごうごうと回る換気扇。安っぽく繰り返されるピアノの旋律。めるろは黙っ…

頂き武士
1か月前
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ゆくすえ(小説)1

 恩田はなんでもない男だと、めるろは思う。とりわけうつくしい顔だちでもなければ、逞しい肉体を持ちあわせているわけでも、ない。なんでもない男だ。細くて角ばった肩は…

頂き武士
1か月前
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女王さま(小説)

 道は定められていると、あたしは思う。神様著作地球大辞典、島国の章、日本編の2024ページに収納された、ちっぽけなあたしの人生。その文章をゆっくりと読み進めていくこ…

頂き武士
1か月前
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生きるんだ古橋ちゃん #1

1.クロミちゃんは文学である  サンリオピューロランドに行きました。幼い頃に行って、それっきりだった場所。社会人3年目。仕事にも慣れてきて、その分負担も増えてき…

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頂き武士
2か月前
15

限界ヲタク(小説)

重い前髪だな、と思った。幅も広い。どう注文すれば、こんな仕上りになるのだろう?   わたしは微笑して彼女を見つめ、「アニメが好きなんだね」と言った。すると彼女…

頂き武士
2か月前
18

初恋(小説)

 みのりがわたっちょを好きだって言ったとき、あたしはそんなに驚かなかった。だってこれまでもみのりの会話のふしぶしには、わたっちょの話題が出ていたのだもの。それに…

頂き武士
2か月前
18

水蜜桃(小説)

 文吾さんが女を抱いているのを、あたしは知っている。こうして麦茶が温くなっていく間にも、せっせと抱いているのを、あたしは知っている。文吾さんはどういう風に女を抱…

頂き武士
2か月前
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さようなら、わたしの山田! すべてよし!#9

さようなら、わたしの山田! すべてよし!#9

 山田と終わった。

 もう無理だって、言われちゃった。部署の役員になってしまって、休みがない。身体の病気もしてしまった。だから生殖器として、古橋ちゃんの役に立つのはもう無理だって。身体を壊していたなんて知らなくて、気軽に連絡してしまった自分がふがいなくなったけれど、それは「古橋ちゃんという人間と一緒にいるのはもう無理だ」という意味でも、あったんだと思う。わたし、大学1年生から社会人3年目まで、山

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つまらないこと

つまらないこと

 つまらない人間だと思う。自分のこと。わたしが高揚する話は、社会では通用しにくい。気づいてから、鬱になった。連休どこに行ったの? と聞かれるのがいやでいやでたまらない。得意のテキトーこきこき〜でその場を逃れる。大学の友達と会いました。ご飯食べました。などなどテキトーをこく。ついでに屁もこく。大学の友達とご飯食べたことなんか、今年に入って2回くらいしかないって話。

 薬を飲んでいる。夜、夕食後に一

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もお これでいいのよと別なことを夢見ながら、身を投げ入れる #3

もお これでいいのよと別なことを夢見ながら、身を投げ入れる #3

 せっくすしたくて泣いとる、という構文をよくポストする。ネタではなく、ほんとうに泣いているのである。性欲を満たしてくれるロボットがいればいいのになぁ。さびしさを埋めてくれるロボットが。けれどわたし、かれがロボットであることに憤慨して、ボコボコに壊すところまで目に見えている。あんた、喘ぎ声、ちゃんと腹の底から出してんの? ころしてやろうか。ころしてちょうだい。これじゃあまるで『ボッコちゃん』みたい。

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私の神(山田俳句)

私の神(山田俳句)


荒れてゐる吾が職人の牡蠣剥く手

ざくざくと土を踏みしめ墓囲ふ

終ったらどこへゆくのか食むセロリ

埋み火の朱もだれかのクリトリス

踏み込みて吾を見つむる樹氷かな

悴みて神の怒張をふくみけり

憤り雪の田をゆく吾の男

抱かれて迫る近火に果てを見る

ゆくすえを思い出さぬか沈丁花

春雨や抱えて眠る幹の腕

桐の花そっと頷く決めていく

濡れてゐる麦をおまえが触る

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ゆくすえ(小説)最終

ゆくすえ(小説)最終

ていねいに磨き上げられた食器を、陽の光に透かした。海の底のような深い色をしたそれは、以前から気に入っていたものだった。恩田と暮らし始めたばかりのころ、工房を何軒もまわったのちに買ったものだ。秋の光が穏やかに射して、めるろのこめかみを照らした。窓の外に視線を向ける。きらきらと輝く河川が、遠くまでいちめんに広がっているのが見える。
 新しい部屋には、何もなかった。たいていのものは以前の家で処分を

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ゆくすえ(小説)4

ゆくすえ(小説)4

「殺してやりたい」
 と思った。思ったけれども、この思いをどこに向ければ良いのか、わからなかった。手がかりがなかった。相手に心当たりはない、と言い切られてしまったので、それ以上を聞き出すことができなかったのだ。鬱屈とした黒い塊が喉元まで迫ってくるように感じた。研究をしていても、アルバイトをしていても、その塊は離れない。怒りとよく似ているが、等しくはない。言葉として当てはめるならば、失望や徒労の感覚

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わたしが古橋を殺した #2

わたしが古橋を殺した #2

知っている人が首吊り未遂をして、精神病棟に送られた。羨ましくなった。同じように自殺をして亡くなった人たちの話を聞くと、不謹慎だが羨ましく、また妬ましくなる。わたしもそうでありたい。毎日毎日、別の空間に行きたい、と考えている。けさは、大きなうんちが出た。

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ゆくすえ(小説)3

ゆくすえ(小説)3

(強姦の描写があるため最終段落のみ有料にしています)

恩田の身体に触れているとき、陽を注がれた植物のように、自らの身体がしなやかに伸びていくのを、めるろは感じる。この身体は正直で、それでいてどこまでも続いていく。とどまることを知らない。すみずみまで広がってゆく。もちろんそれは比喩だけれども、恩田との生活が長いものになってくると、めるろはつくづくそう感じないわけにはいかなかった。この男の部屋中

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古橋も山田も死んでしまったの、山田が死んでしまったのだから古橋も死んでしまったの。キャラクターとして在るのはくるしい。わたし、きょう、憧れの先輩と話せてうれしかった。

ゆくすえ(小説)2

ゆくすえ(小説)2

電気ケトルで尿を沸かす輩がいるらしいぜ。
 鍛えられた身体を姿見に写しながら、男が言った。ごうごうと回る換気扇。安っぽく繰り返されるピアノの旋律。めるろは黙って寝返りをうち、自身の性器に指をあてがう。分泌液はとうに乾いている。固まった陰毛を右手の親指と人差し指でほぐし、そっと鼻に持っていくと、蜜のような、甘やかな香りが広がった。きたない、と口に出す。男はそれがケトルの話だと思ったのか、とんでも

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ゆくすえ(小説)1

ゆくすえ(小説)1

 恩田はなんでもない男だと、めるろは思う。とりわけうつくしい顔だちでもなければ、逞しい肉体を持ちあわせているわけでも、ない。なんでもない男だ。細くて角ばった肩は、科学博物館に展示された恐竜のレプリカに似ているし、白くて尖った耳は、なんだか夜行性の動物を思わせる。めるろちゃん、おれ、いいこと思いついちゃった。いつだって恩田は、めるろの耳に口を付けてきて、そう誘うのだった。キャンプに行くのはどうかな。

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女王さま(小説)

女王さま(小説)

 道は定められていると、あたしは思う。神様著作地球大辞典、島国の章、日本編の2024ページに収納された、ちっぽけなあたしの人生。その文章をゆっくりと読み進めていくことで、人は年老いていくんだと、あたしは思う。
 だから、「あのとき、ああしていれば」という考え方を、あたしは基本的に信じない。並行世界なんて絶対にありえない。本のページは戻すことができない。もう決まりきっていることなんだ。だからナオと会

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 生きるんだ古橋ちゃん #1

生きるんだ古橋ちゃん #1



1.クロミちゃんは文学である

 サンリオピューロランドに行きました。幼い頃に行って、それっきりだった場所。社会人3年目。仕事にも慣れてきて、その分負担も増えてきて、何かに癒されたいという気持ちが大きくなってきた今日この頃。周りが韓国アイドルや乃木坂46を推していく中で、古橋ちゃんが手に入れた唯一の癒し!それがサンリオキャラクターズでした。

 古橋の職場のデスクはキャラクターものばかり。職業

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限界ヲタク(小説)

限界ヲタク(小説)

重い前髪だな、と思った。幅も広い。どう注文すれば、こんな仕上りになるのだろう? 
 わたしは微笑して彼女を見つめ、「アニメが好きなんだね」と言った。すると彼女はきょろきょろと視線を動かし、胸の前でぴんと右手を挙げ、下からこちらを覗き込むようにして、
「あの、あの、こう見えてヲタクなんですよ」
 と言った。
 わたしは目を大きく開き、ゆっくり瞬きをする。それから「そうなんだ」と笑う。夏の終わり

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初恋(小説)

初恋(小説)

 みのりがわたっちょを好きだって言ったとき、あたしはそんなに驚かなかった。だってこれまでもみのりの会話のふしぶしには、わたっちょの話題が出ていたのだもの。それに遠目で観察していても、彼女が向ける視線は特別なものに見えたから、「ああ、好きなんだなあ」って、ずっと思っていた。
 正直なところ、わたっちょのどこがいいんだか、あたしにはさっぱりわからない。たしかに背は高いかもしれないけど、でも、でも、それ

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水蜜桃(小説)

水蜜桃(小説)

 文吾さんが女を抱いているのを、あたしは知っている。こうして麦茶が温くなっていく間にも、せっせと抱いているのを、あたしは知っている。文吾さんはどういう風に女を抱くのだろう? ご飯の時も、お風呂の時も、買い物の時も一緒にいるのに、それだけは分からなかった。あたしは一度も文吾さんに抱かれたことがなかったのだ。ここに来て、もう一年も経つというのに。

 この家にいると、何だかひとつの置物になったように感

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