私の神(山田俳句)
荒れてゐる吾が職人の牡蠣剥く手
ざくざくと土を踏みしめ墓囲ふ
終ったらどこへゆくのか食むセロリ
埋み火の朱もだれかのクリトリス
踏み込みて吾を見つむる樹氷かな
悴みて神の怒張をふくみけり
憤り雪の田をゆく吾の男
抱かれて迫る近火に果てを見る
ゆくすえを思い出さぬか沈丁花
春雨や抱えて眠る幹の腕
桐の花そっと頷く決めていく
濡れてゐる麦をおまえが触るとき
水仙のかほり逃げられないと知る
夏の湖の遠ざかるもの追わぬもの
夕立の音も聴こえず立ち尽す
雷鳴や死んだ男を考える
初めからなかったように夏の庭
大いなるわづらひをせよ秋の暮
おぞましいほど向かい来る蜻蛉かな
最近は静かな海の夢をみる
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