頂き武士

日記を投稿します。おまえのファムファタルです

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  • まいめろだょー

    どれにも当てはまらないもの。

  • 日記

    日々のつれづれ

  • 山田はいつもやさしかった

    最後の山田とのこと

  • われわれは静かに静かに

    本などの感想をかきます、かたくるしくなく、

  • 小説

    大学生の時に書いた小説をリメイクしてます

最近の記事

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さようなら、わたしの山田! すべてよし!#9

 山田と終わった。  もう無理だって、言われちゃった。部署の役員になってしまって、休みがない。身体の病気もしてしまった。だから生殖器として、古橋ちゃんの役に立つのはもう無理だって。身体を壊していたなんて知らなくて、気軽に連絡してしまった自分がふがいなくなったけれど、それは「古橋ちゃんという人間と一緒にいるのはもう無理だ」という意味でも、あったんだと思う。わたし、大学1年生から社会人3年目まで、山田のことがすきだった。とてもとてもすきだった。けれどもこの6年間、山田はとうとう

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    • つまらないこと

       つまらない人間だと思う。自分のこと。わたしが高揚する話は、社会では通用しにくい。気づいてから、鬱になった。連休どこに行ったの? と聞かれるのがいやでいやでたまらない。得意のテキトーこきこき〜でその場を逃れる。大学の友達と会いました。ご飯食べました。などなどテキトーをこく。ついでに屁もこく。大学の友達とご飯食べたことなんか、今年に入って2回くらいしかないって話。  薬を飲んでいる。夜、夕食後に一錠、朝、朝食後に一錠。それから不安になった時に飲む頓服。緊張した時に飲むこともあ

      • もお これでいいのよと別なことを夢見ながら、身を投げ入れる #3

         せっくすしたくて泣いとる、という構文をよくポストする。ネタではなく、ほんとうに泣いているのである。性欲を満たしてくれるロボットがいればいいのになぁ。さびしさを埋めてくれるロボットが。けれどわたし、かれがロボットであることに憤慨して、ボコボコに壊すところまで目に見えている。あんた、喘ぎ声、ちゃんと腹の底から出してんの? ころしてやろうか。ころしてちょうだい。これじゃあまるで『ボッコちゃん』みたい。星新一はあのころからわたしのさびしさをわかっていたのねぇ。ボッコちゃんに毒を飲ま

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        • 私の神(山田俳句)

          荒れてゐる吾が職人の牡蠣剥く手 ざくざくと土を踏みしめ墓囲ふ 終ったらどこへゆくのか食むセロリ 埋み火の朱もだれかのクリトリス 踏み込みて吾を見つむる樹氷かな 悴みて神の怒張をふくみけり 憤り雪の田をゆく吾の男 抱かれて迫る近火に果てを見る ゆくすえを思い出さぬか沈丁花 春雨や抱えて眠る幹の腕 桐の花そっと頷く決めていく 濡れてゐる麦をおまえが触るとき 水仙のかほり逃げられないと知る 夏の湖の遠ざかるもの追わぬもの 夕立

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        記事

          ゆくすえ(小説)最終

          ていねいに磨き上げられた食器を、陽の光に透かした。海の底のような深い色をしたそれは、以前から気に入っていたものだった。恩田と暮らし始めたばかりのころ、工房を何軒もまわったのちに買ったものだ。秋の光が穏やかに射して、めるろのこめかみを照らした。窓の外に視線を向ける。きらきらと輝く河川が、遠くまでいちめんに広がっているのが見える。  新しい部屋には、何もなかった。たいていのものは以前の家で処分をしてしまった。日常を彩る新しいコーヒーミルと美しい食器。必要最低限の衣服、新しい

          ゆくすえ(小説)最終

          ゆくすえ(小説)4

          「殺してやりたい」  と思った。思ったけれども、この思いをどこに向ければ良いのか、わからなかった。手がかりがなかった。相手に心当たりはない、と言い切られてしまったので、それ以上を聞き出すことができなかったのだ。鬱屈とした黒い塊が喉元まで迫ってくるように感じた。研究をしていても、アルバイトをしていても、その塊は離れない。怒りとよく似ているが、等しくはない。言葉として当てはめるならば、失望や徒労の感覚と近い。しかし一体何に失望しているのか。呆然としているのか。めるろが傷つけられた

          ゆくすえ(小説)4

          わたしが古橋を殺した #2

          知っている人が首吊り未遂をして、精神病棟に送られた。羨ましくなった。同じように自殺をして亡くなった人たちの話を聞くと、不謹慎だが羨ましく、また妬ましくなる。わたしもそうでありたい。毎日毎日、別の空間に行きたい、と考えている。けさは、大きなうんちが出た。

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          わたしが古橋を殺した #2

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          ゆくすえ(小説)3

          (強姦の描写があるため最終段落のみ有料にしています) 恩田の身体に触れているとき、陽を注がれた植物のように、自らの身体がしなやかに伸びていくのを、めるろは感じる。この身体は正直で、それでいてどこまでも続いていく。とどまることを知らない。すみずみまで広がってゆく。もちろんそれは比喩だけれども、恩田との生活が長いものになってくると、めるろはつくづくそう感じないわけにはいかなかった。この男の部屋中に、あたしの意識は広がっている! 例えば哲学書だらけの本棚の一角、乱雑に置かれた

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          ゆくすえ(小説)3

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          古橋も山田も死んでしまったの、山田が死んでしまったのだから古橋も死んでしまったの。キャラクターとして在るのはくるしい。わたし、きょう、憧れの先輩と話せてうれしかった。

          古橋も山田も死んでしまったの、山田が死んでしまったのだから古橋も死んでしまったの。キャラクターとして在るのはくるしい。わたし、きょう、憧れの先輩と話せてうれしかった。

          ゆくすえ(小説)2

          電気ケトルで尿を沸かす輩がいるらしいぜ。  鍛えられた身体を姿見に写しながら、男が言った。ごうごうと回る換気扇。安っぽく繰り返されるピアノの旋律。めるろは黙って寝返りをうち、自身の性器に指をあてがう。分泌液はとうに乾いている。固まった陰毛を右手の親指と人差し指でほぐし、そっと鼻に持っていくと、蜜のような、甘やかな香りが広がった。きたない、と口に出す。男はそれがケトルの話だと思ったのか、とんでもない変態がいるものだよな、と笑う。めるろは男の元へ歩き、彼の幹のような身体を後ろ

          ゆくすえ(小説)2

          ゆくすえ(小説)1

           恩田はなんでもない男だと、めるろは思う。とりわけうつくしい顔だちでもなければ、逞しい肉体を持ちあわせているわけでも、ない。なんでもない男だ。細くて角ばった肩は、科学博物館に展示された恐竜のレプリカに似ているし、白くて尖った耳は、なんだか夜行性の動物を思わせる。めるろちゃん、おれ、いいこと思いついちゃった。いつだって恩田は、めるろの耳に口を付けてきて、そう誘うのだった。キャンプに行くのはどうかな。おれ、たき火の炎をひたすら見たい気分なんだ。なんだよ、たき火って! お前は、思春

          ゆくすえ(小説)1

          女王さま(小説)

           道は定められていると、あたしは思う。神様著作地球大辞典、島国の章、日本編の2024ページに収納された、ちっぽけなあたしの人生。その文章をゆっくりと読み進めていくことで、人は年老いていくんだと、あたしは思う。  だから、「あのとき、ああしていれば」という考え方を、あたしは基本的に信じない。並行世界なんて絶対にありえない。本のページは戻すことができない。もう決まりきっていることなんだ。だからナオと会ったのも、定められた必然だと思うんだけど……  ナオは赤くなったあれを直立させて

          女王さま(小説)

          生きるんだ古橋ちゃん #1

          1.クロミちゃんは文学である  サンリオピューロランドに行きました。幼い頃に行って、それっきりだった場所。社会人3年目。仕事にも慣れてきて、その分負担も増えてきて、何かに癒されたいという気持ちが大きくなってきた今日この頃。周りが韓国アイドルや乃木坂46を推していく中で、古橋ちゃんが手に入れた唯一の癒し!それがサンリオキャラクターズでした。  古橋の職場のデスクはキャラクターものばかり。職業柄、文房具を使うことが多くって、メモ帳やボールペンをはじめ、ステッカーやシール、

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          生きるんだ古橋ちゃん #1

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          限界ヲタク(小説)

          重い前髪だな、と思った。幅も広い。どう注文すれば、こんな仕上りになるのだろう?   わたしは微笑して彼女を見つめ、「アニメが好きなんだね」と言った。すると彼女はきょろきょろと視線を動かし、胸の前でぴんと右手を挙げ、下からこちらを覗き込むようにして、 「あの、あの、こう見えてヲタクなんですよ」  と言った。  わたしは目を大きく開き、ゆっくり瞬きをする。それから「そうなんだ」と笑う。夏の終わり。秋の風がやさしく吹く、四限終わり。「こう見えて」って見たまんまじゃん、と思った

          限界ヲタク(小説)

          初恋(小説)

           みのりがわたっちょを好きだって言ったとき、あたしはそんなに驚かなかった。だってこれまでもみのりの会話のふしぶしには、わたっちょの話題が出ていたのだもの。それに遠目で観察していても、彼女が向ける視線は特別なものに見えたから、「ああ、好きなんだなあ」って、ずっと思っていた。  正直なところ、わたっちょのどこがいいんだか、あたしにはさっぱりわからない。たしかに背は高いかもしれないけど、でも、でも、それだけだと思う。あたしは彼とは小学校のころから一緒だったけど、彼を良いなんて言って

          初恋(小説)

          水蜜桃(小説)

           文吾さんが女を抱いているのを、あたしは知っている。こうして麦茶が温くなっていく間にも、せっせと抱いているのを、あたしは知っている。文吾さんはどういう風に女を抱くのだろう? ご飯の時も、お風呂の時も、買い物の時も一緒にいるのに、それだけは分からなかった。あたしは一度も文吾さんに抱かれたことがなかったのだ。ここに来て、もう一年も経つというのに。  この家にいると、何だかひとつの置物になったように感じる。木彫りの竜とか、囲碁の盤とか、やけにリアルなフランス人形とか。どこから持っ

          水蜜桃(小説)