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TRANS_02 Editor’s Note
先日、八戸市にお住まいの中村タケさんを訪ねました。タケさんは御年92歳、最後の全盲イタコです。死者の霊を招き、そのことばを語る「口寄せ」を、今もご自宅でなさっています。もちろん、私にとっては初体験。やや緊張しながら対面しました。
驚いたのは、口寄せがきわめて音楽的な経験だったこと。一定のリズムで滔々と語るタケさんは、死者からのメッセージを伝達しているというより、むしろ詩を詠み上げているようでした
グラフィティ・リサーチ・プロジェクト*2
複合芸術基礎演習Aとは、本学大学院複合芸術研究科がおもに学部1年生に向けて開講している少人数制のゼミです。そのねらいは、学生同士の協働作業により領域横断や複合芸術を体験的に学ぶことにあります。
グラフィティ・リサーチ・プロジェクトは、そのための第一歩。わたしたちが暮らす街にはどんなルールが働いているのか、それらをかいくぐりながらどんな表現が生きているのか。いつもとは少しちがった視線で街を観察する
グラフィティ・リサーチ・プロジェクト*1
美術であろうとなかろうと、多種多様な表現の痕跡を発見するために、街の隅々に視線を走らせること──。
わたしが「複合芸術論基礎演習A」という授業で学生たちに求めているのは、スキャニングのような眼の使い方です。
ただ漫然と街を歩くだけでは、街角にあふれている商品や広告を再確認することにしかなりません。電信柱や駐車場、ビルとビルの隙間、はたまた交通標識の裏まで。ありとありゆる街の端々を細かく点検すれ