福住廉

鴻池朋子 展 根源的暴力

鴻池朋子の新作展。東京では2009年に東京オペラシティアートギャラリーが催した「インタートラベラー」展以来、6年ぶりとなる大規模な個展である。しかも展示されたのは、すべて東日本大震災以後に制作された新作で、新たな出発点を刻む展観だった。

「根源的暴力」と「インタートラベラー」は好対照である。後者の中軸がエンターテイメント施設のような動的な外向性にあったとすれば、前者のそれは博物館のような静的な内

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Chim↑Pom 「また明日も観てくれるかな?」

Chim↑Pomの醍醐味は、同時代における政治的社会的な問題への先鋭な意識と、それらを体現する桁外れな想像力の強度である。時として作品の重心が前者に傾きすぎると奇妙に優等生的で退屈になりがちであり、後者に傾きすぎると社会を騒乱させる「お騒がせ集団」というレッテルを貼られがちだという難点がないわけではない。だが、その両極のあいだで絶妙な均衡感覚を保ちながら生き延びてきた粘り強い生命力こそ、彼らの類い

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牧島如鳩 展─神と仏の場所─

異形の宗教画家・牧島如鳩(まきしま・にょきゅう、1892-1975)の本格的な回顧展。

ハリトリス教会の伝教者であり、イコン画家として出発した牧島は、最終的に神と仏は同一であるという境地に達したといわれている。じっさい牧島の絵は油絵と水墨画を描き分け、しかも同じ画面に神と仏が共存する、文字どおり和洋混在の絵である。水墨画の筆遣いはそれほどでもないが、油絵の筆致は奇妙になまめかしく、それが本来見え

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牧野邦夫─写実の精髄─展

現在の「現代アート」には、圧倒的に「過剰」が足りない。画家・牧野邦夫(1925~1986)の絵画を見ると、思わずそんな嘆息を漏らしたくなる。情熱、技術、視線など、あらゆる点で行き過ぎているのだ。そのような常軌を逸した過剰性が、わたしたちの眼を釘付けにするのである。

本展で展示された、およそ120点あまりの作品の大半は、油彩による写実画。しかし、より正確に言えば、写実の技法を用いた幻想画というべき

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生の体験から知る 沖縄の戦争展

6月23日は沖縄戦の犠牲者たちを悼む「慰霊の日」。その象徴的な日に始められた本展は、戦争体験者の証言を写真とパネルによって伝えたもの。あわせて砲弾の破片や水筒、軍靴などの実物も展示された。

いま「展示」と書いたが、この言い方はもしかしたら本展にはそぐわないのかもしれない。というのも、本展の醍醐味は戦争の写真を「見る」ことや戦争体験者の証言を「読む」ことだけでなく、彼らによる語りを「聴く」ことにも

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夷酋列像─蝦夷地イメージをめぐる人・物・世界─

夷酋列像(いしゅうれつぞう)とは、松前藩の家老、蠣崎波響(かきざきはきょう)(1764-1826)が描いたアイヌの指導者たち12人の肖像画。

本展は、それらの全点と関連する資料を一挙に展示したもの。比較的小規模な企画展だが、絵画のなかに描かれたアイヌの表象と、彼らが身につけた装飾品の実物が併せて展示されているため、知られざるアイヌの世界を垣間見ることができる。

日本美術史において北海道はある種

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[記録]淺井裕介天井壁画・報道記録集

2019年にアーティストの淺井裕介が中国は重慶の武隆で制作した天井壁画《空から大地が降ってくるぞ》について報じた記事をまとめました。

日本語で読めるのは、上海の広告会社が制作したこちら。重慶の観光地や大学の紹介もあります。写真を何点か提供しました。

https://mp.weixin.qq.com/s/5mks7uMqieXVApt4Mrka6g

こちらは日本語のインタビュー動画を含む記事。

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岡本光博 マックロポップ

京都在住のアーティスト、岡本光博の、東京では21年ぶりになるという個展。決して広くはない会場に、新旧あわせた作品が凝縮して展示された。

「マイクロポップ」をもじった展覧会名に端的に示されているように、岡本の醍醐味は記号を反転させる単純明快さにある。しかも今回展示された作品の大半は、セックスに関わるものであり、平たくいえば下ネタのオンパレードであった。一つひとつの作品に笑わされるというより、それを

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洞窟の奥の暗がりで──ダークアンデパンダン darkindependants

・展示される作品の内容、展示会場などの非公開の事柄は、その方法に関わらず、一切他言しないこと

会場の入り口で署名を求められた同意書の一部です。署名しないと展覧会を見ることはできません。とうぜん、署名しました。けれども、困りました。わかっていたことだけれど、ほんとうに困った。展示された作品の内容について他言しないことを約束してしまった以上、この展覧会について「見る」ことはできても「書く」ことはきわ

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山本作兵衛の世界─記憶の坑道

筑豊の炭鉱画家、山本作兵衛(1892~1984)の回顧展。世界記憶遺産に登録されてから、改めて再評価の機運が高まっているが、本展は、質的にも量的にも、これまででもっともまとまった良質の企画展であった。それは、これを企画したのが「美術館」ではなく「博物館」であったということと、おそらく無関係ではない。

展示されたのは、画用紙に水彩や墨で描かれた炭鉱画の原画をはじめ、関連する映像、炭鉱で使われていた

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