福住廉

MADSAKI「HERE TODAY, GONE TOMORROW」

東京とニューヨークを拠点に活動しているMADSAKIの個展。グラフィティのスプレーで描いたタブローなど21点が展示された。モチーフは、主に彼の妻で、昭和レトロな空間のなかで鮮やかな浴衣を羽織ったヌード像が多い。奇妙な色気を感じさせる不思議な絵画である。

「奇妙」や「不思議」と言ったのは、描かれた絵肌とそれらを描いた画材とのあいだに大きな乖離があるように感じられるからだ。スプレーによるグラフィティ

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ソウル・キッチン

料理人のサクセス・ストーリーではない。何を隠そう、これはオルタナティヴ・スペースについての映画である。しかも、飛び切り上等な傑作だ。

舞台はハンブルク。古い倉庫を自分たちで改築した大衆的なレストランが買収の危機に瀕するが、これを何とかして阻止するという物語の骨格はいたって単純明快。けれども、ここに保健所や税務署といった面倒な行政の問題や生々しい移民問題、そして弱みにつけこんでまで乗っ取りを図る貪

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浜田浄の絵画的イリュージョン

1986年、わたしは練馬区の新興住宅地に新設された小学校に編入した。当時、小学6年生。むろん、今からおよそ30年前のことの大半は忘却の海に沈んでいる。だが今でも鮮やかに憶えているのは、体育館の一角で級友らとともに巨大な象を制作したことだ。いくつものダンボールを組み合わせ、表面に絵の具を塗り、四本足で屹立させる。見上げるほど大きな巨像は、子どもたちの手による造形物にしては、なかなかの出来映えだったよ

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浜田浄の軌跡─重ねる、削る絵画─

浜田浄は1937年生まれの美術家。70年代半ばに版画作品で評価を高めたが、80年代になるとモノクロームの絵画に転じ、その後、平面に載せた絵の具や紙を削り出す作品も手がけている。本展は初期から近作まで47点の作品を展示したもの。作品の点数と大きさからすると、決して十分な空間とは言えないが、浜田の類い稀な抽象画を一覧するには絶好の機会であると言えよう。

そのもっとも大きな特徴は、抽象画でありながら、

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潘逸舟 存在を支配するもの

潘逸舟は上海生まれの日本人。中国と日本のあいだで引き裂かれ、あるいは双方を架橋する、アイデンティティの問題を一貫して表現してきた。

なかでも優れているのは、昨今の日中外交問題の争点とされている尖閣諸島のイメージを、ゆっくりと水没させる映像作品である。水平線に沈んでいく太陽のように、島のシルエットが徐々に消えていくモノクロ映像は、社会的政治的な意味を超えて、幽玄の美ともいうべき詩情を醸し出していた

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鷲見麿 正確無比であり、コンセプチュアルな絵画

大地を埋め尽くす兵士の群衆。密集した甲冑と林立する長槍の迫力がすさまじい。16世紀のドイツ人画家アルブレヒト・アルトドルファーによる《アレクサンドロス大王の戦い》を、鷲見麿は画面の中から作品のサイズまで、99%正確に模写した。CGを利用した絵画だと勘違いした鑑賞者もいたほど、その筆致は精密だ。

残りの1%は、もちろん鷲見自身のコンセプトである。それは、画面の中で戦闘する兵士たちの顔を、すべて依頼

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ジミー・ツトム・ミリキタニ回顧展

ジミー・ツトム・ミリキタニ(1920~2012)は、日系アメリカ人アーティスト。サクラメントに生まれ、広島で育ち、日本画家を目指してアメリカに帰ったが、80年代からニューヨークの街角で路上生活を送りながら絵を描いていたところ、リンダ・ハッテンドーフ監督と出会い、彼女の映画『ミリキタニの猫』で広く知られるようになった。本展は、日米の歴史に翻弄されたジミーの激動の人生を、絵画をはじめ数々の資料によって

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尊厳の芸術展─The Art of Gaman─

太平洋戦争時、アメリカで暮らしていた日系人は強制収容所に連行され、収容され、終戦後しばらくまで拘束された。強制収容所の多くは砂漠の只中に建てられたバラック小屋だったため、そこでの集団生活はきわめて過酷なものだった。しかし、彼らは厳しい生活環境を改善するために、あるいは美しく彩るために、もしくは現状を記録するために、とどのつまりは自らの尊厳を守り、貫くために、数多くの美術工芸品を制作した。

本展は

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想像力という理路──「黄金町バザール」と都市再開発をめぐって

アートによる街の再生

「黄金町バザール」は、神奈川県横浜市中区の黄金町一帯で、アートによる街の再生を目指して2008年より開催されているアートフェスティバルである。NPO法人「黄金町エリアマネジメントセンター」が、毎秋、国内外のアーティストや建築家、デザイナーを招いて展覧会やワークショップを催している。特徴的なのは、「黄金町バザール」とは別に、同センターが通年のプログラムも数多く実施している点だ

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