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撃たれる覚悟を!──2022年現代美術回顧[部分]

コンセプチュアル・アートの政治利用──。「国際芸術祭あいち2022」でもっとも印象深かったのは、会場のひとつ、愛知県美術館の展示が河原温からはじめられていたことだった。言わずと知れた世界的なコンセプチュアル・アーティストである。同芸術祭の芸術監督・片岡真実は、おそらく河原温から展示をはじめることにかなり自覚的だったように思う。いや、戦略的だったといってもいい。同芸術祭のテーマ「STILL ALIVE 今、を生きるアートのちから」が、同県で生まれた河原温の代表作《I Am Still Alive》に着想を得ていたのは事実だとしても、その根底には非政治的なコンセプチュアル・アートによって政治的な作品を排除するというメタ・メッセージが埋め込まれていたように思われるからだ。より具体的に言い換えれば、津田大介が芸術監督を務めた「あいちトリエンナーレ2019」で生じた政治的騒動を絶対に継承しないという強い意思を表明するためにこそ、河原温の非政治的なコンセプチュアル・アートが動員されたのではなかったか。事実、のっけから観念的で禁欲的な作品を見せつけられて困惑する鑑賞者は少なくなかったし、片岡にしても同芸術祭の企画概要において100万年後の未来やコロナ禍に直面する現在を強調する一方、過去については江戸時代の尾張と三河に言及するだけで、近々の過去である「あいちトリエンナーレ2019」には一切触れていない。「安心安全な芸術祭」は、コンセプチュアル・アートに光を当てる一方、政治的で論争的な作品を陰に追いやることで成し遂げられたのだ。

しかし、こうしたキュレーションは三重の意味で政治的である。[以下、続く]

初出:「図書新聞」2023年3月11日、3582号、8面

#美術 #アート #レビュー #福住廉

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