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検閲と表現規制

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熊本市現代美術館による外山恒一検閲事件について(前)

熊本市現代美術館による外山恒一検閲事件について(前)

また、検閲事件が発生しました。ほとほとうんざりしますが、誰かが書いておかないと闇から闇に葬られかねないので、書いておきましょう。

舞台は熊本市現代美術館。2021年3月27日に企画展「段々降りてゆく 九州の地に根を張る7組の表現者」(6月13日まで。現在、臨時休館中)が開幕しましたが、出展者の中に革命家の外山恒一さんの名前はありませんでした。外山さんは同展に参加を請われていましたが、開幕前に美術

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津田大介インタビューの質問事項

津田大介インタビューの質問事項

「美術手帖」2020年4月号〈緊急特集「表現の自由」とは何か?〉において、「あいちトリエンナーレ2019」の芸術監督・津田大介氏にインタビューしました。わたしは事前に質問事項を用意して、津田さんはそれに目を通したうえでインタビューに応じました。さまざまな事情があるのでしょうが、質問に答えてくれた論点と、答えてくれなかった論点があります。また、編集の都合上、割愛せざるを得なかった論点もあります。それ

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[報告]緊急シンポジウム「表現の不自由展・その後」中止事件を考える

[報告]緊急シンポジウム「表現の不自由展・その後」中止事件を考える

民主主義を守るための闘いは、民主主義的でなければならないのだろうか? 今回の中止事件をきっかけに生まれた議論のなかで、この不穏な問いがわたしの脳裏を何度もよぎった。明確な答えはない。だが、問いは不断に投げかけなければならないのだろう──。

さる8月22日、文京区民センターで「緊急シンポジウム『表現の不自由展・その後』中止事件を考える」が開催された。主催は、月刊「創」編集部を中心に構成された「8.

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天皇×コラージュ×ごっこ大浦信行《天皇ごっこ 見沢知廉・たった一人の革命》

天皇×コラージュ×ごっこ大浦信行《天皇ごっこ 見沢知廉・たった一人の革命》



「てっめぇ、この野郎じゃっかましい!」。2011年9月11日の新宿は、異様な興奮と喧騒に包まれていた。その源は、脱原発を訴えるサウンド・デモ。1万人以上の参加者が大音響とともに繁華街やビジネス街を練り歩き、脱原発の意思をアピールした。だが、参加者の周囲には大量の制服警官がものものしく立ち並び、ついには私服警官が参加者の一部を次々と力ずくで検挙していった。双方から飛び交う怒号。携帯をもった右手

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キセキノセイイ──「MOTアニュアル2016 キセイノセイキ」展レビュー

キセキノセイイ──「MOTアニュアル2016 キセイノセイキ」展レビュー

東京都現代美術館で「MOTアニュアル2016 キセイノセイキ」が開催されている(2016年5月29日まで。現在は終了)。昨今、美術界の内外で話題を集めている「表現規制」に焦点を当てた展覧会で、アーティストによる自主的な組織「ARTISTS’ GUILD(アーティスツ・ギルド)」と同館との協働企画である。「MOTアニュアル」は1999年より継続してきた同館恒例の企画展だが、とりわけ近年はテーマが軽佻

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民間企業による新たな検閲 ルイ・ヴィトンが引き起こした作品撤去事件

民間企業による新たな検閲 ルイ・ヴィトンが引き起こした作品撤去事件

2010年5月、神戸ファッション美術館による企画展「ファッション奇譚」に出品された作品に一企業がクレームをつけ、会期途中に当該作品が展示会場から撤去させられるという事件が発生した。

クレームをつけたのは、ルイ・ヴィトン。撤去させられたのは、美術家の岡本光博による《バッタもん》。ホンモノかニセモノか明らかにしていないブランド・バッグの生地をもとに作ったバッタのオブジェである。

こうした介入が「表

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