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artsyな言葉たち

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自然、感情、美、哲学など、心奥に得たことを綴る。
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#読書

上野 菜の花

たけのこをかじる、
甘い味噌ダレの奥の方に微かなえぐみ。

茹でわらびの上には細かなかつ節がふわりと空気を纏ってのせられてる。
パキりと音を立て噛み切る、弾ける茎。

稚鰤の脂はコク、さっぱりとしたひらめの弾力、マグロの血の気

お豆腐の生感、表面にはざらりと薄い塩気

日本酒がコーティングされたいぶりがっこ

艶やかに立った新潟コシヒカリの粒、食べたらネチッと柔らかい

ナズナと賽の目どうふの味

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単純なピザトースト

土曜日なので、ゆったりと起きて朝ごはんの準備。

8枚切りの食パンは、冷凍庫に入れてたから変形してる。
いびつな形のまんまトースターへ入れ込む。

残り少ないケチャップを絞り出して薄く塗り、ナチュラルチーズはこんもりとのせる。

900ワットで3分後、薄っすらと焦げ目がつきはじめた。
チーズはジリジリジリジリまだ焼かれている。

その上にベランダで育てているフレッシュなバジルを5枚ほどのせる。

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芍薬の窓辺

昨日もらった薄紅色の芍薬はつぼみ、蜜をまとってる。蜜を取らなきゃ咲かないらしい。
持ち帰ったその日、丁寧に丁寧にティッシュで蜜を拭き取った。
柔和で、誠実な、芳しい匂いがした。
日毎に、いやむしろ秒毎に花弁が開いてく。緩んでいく。
私は湯船に浸かって火照ったまんま、タオルを頭に被せたまんま、窓辺の芍薬を斜め下から見上げた。
芍薬を見つめる目線の延長に、下弦の月。なんという贅沢な窓。初夏の夜。
内に

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密封

伊勢丹の正面で待ち合わせ、の予定が気づいたら迷い込んでしまったらしい。
新宿のど真ん中、そこは伊勢丹の裏の通りのようだ。
あらゆるものが従業員通用口から早足で出たり入ったり。スーツ、厨房服、自転車、奇抜な洋服、作業着、台車、警護服、雨合羽、軽トラ、ダンボールの混在。奇妙にもその場は無臭だった。
立ち止まると、時折どこからごま油のかおりが漂う。狭い道路は古びたビルに挟まれて実際よりせまく感じるよう。

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湿り気

「全部吐き出しちゃえば」
なんて友人は言う。
曖昧で行き場のないこの感覚。言葉にしちゃいたい気もするし、このままにしておきたい気もする。

きれいに刈られた芝生に通る小道を歩く。大木が落としきった毛虫みたいな長いフサフサが辺りを覆う。
道がなくなったみたい。
5月の合間の雨露が全てを滑らかに、しっとりと一体にさせている。いつもと違う色、1秒も同じ瞬間はない。

たぶん、きっと、このままでいいん

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