芍薬の窓辺

昨日もらった薄紅色の芍薬はつぼみ、蜜をまとってる。蜜を取らなきゃ咲かないらしい。
持ち帰ったその日、丁寧に丁寧にティッシュで蜜を拭き取った。
柔和で、誠実な、芳しい匂いがした。
日毎に、いやむしろ秒毎に花弁が開いてく。緩んでいく。
私は湯船に浸かって火照ったまんま、タオルを頭に被せたまんま、窓辺の芍薬を斜め下から見上げた。
芍薬を見つめる目線の延長に、下弦の月。なんという贅沢な窓。初夏の夜。
内に芍薬、外に月。
月光を浴びる芍薬、芍薬を眺める月。

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