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【時に刻まれる愛:2-20】深夜の真相
時の音ボクは見つけたヒントなどを整理し、身なりを整えた。
小屋の扉を出る前に、ボクは振り返って、もう一度だけ小屋の中を見渡した。
罪深き過去が眠っていた小さく幼い秘密基地。
だが、それを乗り越えた今、そこには穏やかな空気が流れていた。
ボクは小屋を後にする。
森の中を、ざーっと風が通る。
この城に戻って来てから、一体どれほどのものが、ボクの中を駆け巡っただろうか。
10年ぶりの城、止まっ
【時に刻まれる愛:2-19】最後の手紙
宝の在処ボクだけの秘密基地。その小屋の床に刻まれた薔薇の模様から、第五のヒントを手に入れた。
城のボクの部屋で見つけた第四の封筒には、手紙しか入っていなかった。
でも今度は手紙だけじゃない。懐中時計とカードも入っている。
封筒を開けなくても、触った感じでそれが分かる。
ボクはゆっくりと封筒を開けると、まずは手紙を取り出した。
この小屋で過去と対決したばかりのボクは、この手紙の内容を読むこ
【時に刻まれる愛:2-18】敵の恐怖
分岐「あぁ、ボクはなんてことを・・・。」
父の研究記録の写しを手に、ボクは再び激しい後悔に襲われていた。
幸いにも、幼い頃にボクが写してしまったと思われるその研究記録は、父の研究の素案の部分で、重要な内容部分ではなかった。
しかし、もしこれが、研究の重要な内容部分だったら、一体どれほどの危険があったのだろう。
de・hat社にとって、なぜ父のこの研究がそれほどまでに邪魔な存在だったのかは
【時に刻まれる愛:2-17】父への裏切り
箱その森の中にある小屋が、ボクの秘密基地だった。
小屋の中には、地球儀やら世界地図やら、幼い頃のボクが冒険心たっぷりに詰め込んだ物ばかり。
大人になった今振り返ってみると、それは偉大な実業家であった父の書斎の雰囲気を真似たものだった。
父の書斎は、秘密基地のようだった。城の3階にある。
豪華で綺麗に保たれている客室とは違い、父の書斎には本やメモ書きが自由に散らばっていた。
世界地図、地球
【時に刻まれる愛:2-16】ボクだけの秘密基地
罪城の敷地の森の中。
もう随分と深く行ったところに、小屋がある。
ボクは、その扉を開けた。
「そうだ・・・。ここだった・・・。」
今、こうして大人になって来てみると、こんなに狭い小屋だったか?という感覚だ。
もっとも、実際にこの小屋は、城の各部屋や、あるいはアトリエといった優雅な場所に比べれば、本当に小さな造りだ。
今も、あの頃も、これを一体、誰が何のために建てたのかは分からない。
【時に刻まれる愛:2-15】第四の手紙
隠し事爺やの声を後方に聞きながら、ボクは森の中へと足を進めていた。
ボクは、森の中のある場所を目指している。
何度も夢に出てきた、森の中の大きな木。そこを目指しているのだ。
歩きながら、ボクは四つ目の手紙の内容を思い出していた。
城の中のボクの部屋で見つけた四つ目の手紙。
先ほど部屋を出る時に、すでにお決まりの番号を手紙にメモしてきた。
今回の手紙の冒頭には「No.4」と書き込んだ。
【時に刻まれる愛:2-14】事件は朝に
裏目城の自分の部屋で、ボクは三つ目の手紙に目を通している。
まず、ある一節がボクの心を突き刺す。
父は、時間に正確な人だった。
覚えている限り、父が時間を守れなかったのは一度だけ。
それも、大したことはない土曜日のランチの時間。
いつも、ボクらが起きる頃には父はすでに起きていて、決まった時間に朝食を食べ、決まった時間に仕事に出かける。
自分の会社だから、いくらでも楽ができたはずなのに、ど
【時に刻まれる愛:2-13】溢れる思い
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14時20分城にあるボクの部屋の本棚。
そこには、あの頃ボクが読んでいた本が綺麗に並べられている。
10年もの時が経ったので、本はうっすらと傷んではいるが、綺麗に整理された本棚の様子は当時のままだ。
ただ、その本棚の下の方の段には、雑に何冊かの本が放り込まれている。
「これは、何の本だろう・・・」
ボクはそう言って、本を手に取った。
「これは・・・小学校の教科
その積み重ねが、何かを変えると思うから
私は小さい時から、積み重ねの習慣を大切にしています。
小学生の頃は、算数とか国語のドリルを、毎日1ページずつ、欠かさずにやっていました。
積み重ねというのは、1日とか1回に限って言えば、さほど大きく結果に影響しているようには見えません。
でも、大きな何かを成し遂げた人は、小さな1歩を確実に積み重ねた人ですよね?
あるいは、大きなことではなくても、自分なりの幸せを形にできた人もまた、自分なり
【時に刻まれる愛:2-12】父が伝えたかったこと
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頭の良い男ボクが学びを得るための本に、びっしりと赤いペンで詳しい解説を書き込んでくれていた父。
その赤い加筆を見ていると、もういない父のことを考えずにはいられなかった。
そういえば爺やが昔、言っていたな・・・。
『お父上はいつも、
正しい判断をされていました。』
これは、爺やとボクが、共に住む隠れ家でチェスをしていた時の記憶。
ボクも頭の回転には自信があるの
【時に刻まれる愛:2-11】忘れかけた子供部屋
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忘れていた忘れ物10年ぶりの自分の部屋は、あの頃よりも随分と狭いように感じた。
ベッド、本棚、それから勉強机だけがあるシンプルな部屋だ。
そのベッドの上に、リュックサックが置いてある。
中を開けると、恐竜の絵の描かれた大きな缶が入っていた。
それは、ボクが忘れてしまっていた大切な物だった。
ただ、こうして目の前にすると、それが何なのか、はっきりと思い出せる。
【時に刻まれる愛:2-10】第三の手紙
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父の願い城の隅にある母のアトリエ。
そこで見つけた、愛に刻まれた薔薇の中にあった、第三のヒント。
ボクはそれを手にすると、アトリエの裏にある薔薇の庭園へと歩いた。
父と母とボク。3人でよくランチをした、薔薇の庭園のテーブル。
ボクはそこで、第三のヒントを確認することにした。
どこまでも広がるような、優しい薔薇の香りがしていた。
さて、第三のヒントも、第一、第二と同
【時に刻まれる愛:2-9】ランチの謎
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不思議なカードボクは、一番目の手紙と二番目の手紙、それぞれの裏面に書かれたメモを見ている。
どちらも、それぞれに同封されていた、カードの内容と懐中時計の時刻をメモしたものだ。
一番目の手紙の裏にはこのメモが書かれている。
そして、二番目の手紙の裏のメモがこれ。
12時10分というのは、ボクがわがままを言って、父の叱りを受けた時刻。
1時15分とは、時間に正確な
【時に刻まれる愛:2-8】心に刻め
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サタデーランチ母のアトリエの裏には、薔薇の庭園がある。
そこに、ちょっとしたテーブルが置いてあって、ボクらはそのテーブルでよくランチをした。
決まって土曜日。
父と母とボクの3人で、そのテーブルで昼食を摂った。
まるで、母が描いていた絵のように、ボクらは毎週のその時間を楽しんだ。
いつも土曜日に、薔薇の庭園で食べるランチには、母がサンドイッチを用意してくれた。