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2019年1月の記事一覧
デリカシーの欠片すら持たない、ぼくが僕になるまで(少年期⑥)
★協定その六:月に一度はお休み(最低一週間前までには知らせておく)。
これ以上眠れないのはわかっていた。だけどもう一回だけ目をしっかりとつむってみる。浅く呼吸を繰り返し、寝ている状態を作り出す。草の湿っぽい匂いも、葉が折れるちくちくとした感じももう消えた。目の奥に、真っ暗な暗闇が広がっているだけ。面白いことは何もない。それでも五分ほど同じ姿勢に耐え、それから芝生との友情を絶った。身体を起こし、
デリカシーの欠片すら持たない、ぼくが僕になるまで(幼少期⑥)
★ぼくはシェフ。母さんのために料理を作る。
「ベーコンある?」
「ないわ」
「たらこ」
「うーん」
「粉チーズは?」
「たぶんあったと思うけど」ぼくの代わりに母さんが冷ぞう庫をのぞきこむ。ひょっとして母さんなら見つけられるかもしれない。なにせ冷ぞう庫内の食材の配置については、この家の誰よりも詳しいはずだから。けど、もし見つかったとしてもそれって見つかったって言えるのか、それだけが心配だ。ある程度